物理学基礎II(電磁気学)

講師谷村 省吾 教授
開講部局教養教育院 2021年度 秋学期
対象者情報学部1年生

授業の概要

電磁気学すなわち電気と磁気に関する物理理論を学ぶ。場の概念を把握し、電磁場の基本法則を理解し、比較的簡単な状況において電場や磁場を計算・描画し、その物理的意味を吟味・検討できるようになることを目指す。電磁場を記述する数学的道具としてベクトル代数とベクトル解析を習得する。
(以下は2021年度秋学期に情報学部1年生向けに実施した授業の記録および資料である。)

第1回 電場
物質のなりたち、摩擦電気、クーロンの法則、ベクトルの基本、電場の概念

第2回 電場
点電荷・線電荷・面電荷、電荷の加法性、電荷の保存則、電場の重ね合わせの原理、ベクトルのノルム・内積・外積

第3回 座標系
直交座標・極座標、線要素・面要素・体積要素、線積分・面積分・体積積分

第4回 クーロンの法則と重ね合わせの原理の応用(前半)
点・線の電荷が作る電場

第5回 クーロンの法則と重ね合わせの原理の応用(後半)
円周・球殻・球体の電荷が作る電場、ベクトル場の線積分

第6回 中心力場と保存力場
数学のことばづかい(公理・定義・定理・補題・命題・系)、仕事と線積分、電位

第7回 電位
点電荷と球殻電荷が作る電位

第8回 電位と等電位面
等電位面の描き方、等電位面の性質

第9回 電場のガウスの法則
電気力線と電束、向きづけられた曲面、法線ベクトル場、ベクトル場の面積分

第10回 ガウスの法則の応用
幾何学的対称性、対称性とガウスの法則を使った電場の計算方法、電場に対する物質の応答、絶縁体と良導体

第11回 電流と電気抵抗とコンデンサ
誘電分極と電流、電流の定義、電流密度、電荷保存則、オームの法則、電気伝導率、電気抵抗率、コンデンサ、電気容量、電場のエネルギー

第12回 磁場
ローレンツ力の法則、ビオ・サバールの法則、アンペールの法則、ベクトルの外積、電流素片、無限直線電流が作る磁場

第13回 磁場のガウスの法則とファラデイの法則
磁力線と磁束と磁場のガウスの法則、時間変化する磁場とファラデイの電磁誘導の法則、ソレノイドコイルが作る磁場

第14回 時間変化する電磁場
変位電流とアンペール・マクスウェルの法則、マクスウェルの法則、ベクトル解析、gradient、divergence、rotation、微分形のマクスウェル方程式

授業の目的

電磁気学すなわち電気と磁気に関する物理理論を学びます。場の概念を把握し、電磁場の基本法則を理解し、比較的簡単な状況において電場や磁場を計算・描画し、その物理的意味を吟味・検討できるようになることを目指します。電磁場を記述する数学的道具としてベクトル代数とベクトル解析を習得します。

授業の達成目標

電磁気学の基礎概念(電荷・電流・電場・磁場・電位など)を理解する。電磁場の基本法則(クーロンの法則・ガウスの法則・保存力場の法則・ローレンツ力の法則・ビオ・サバールの法則・アンペールの法則・ファラディの法則・マクスウェル方程式など)を理解し、電場・磁場を求めたり点粒子の運動を求めたりするなどの簡単な例題を解けるようになる。導体・絶縁体・誘導体など物質の電気的性質(オームの法則や静電分極など)を知る。

授業の工夫

電気や磁気は現代文明を支えるテクノロジーに織り込まれていて、電磁場の概念を避けていては現代の文明の利器を理解することも作ることもできない。ゆえに、学生には電磁場の概念や法則性を理解してもらいたいのだが、電場や磁場は目に見えない抽象的な概念なので、学生にとっても理解しづらいようである。抽象的な数学と、具体的でビジュアルなイメージとの両方を使いこなせるように、講師は抽象的だが厳密な数学的定義を提示することと、抽象的概念を「絵」に描いて見せることと、学生には「絵」を描く練習をさせることを心がけた。

計算問題や作図問題を2週間に1回ずつ出題し、学生にはレポートとして提出させ、毎回添削して学生に返却した。毎週課題を出すと学生にとっても負担が重すぎるようなので、2週に1回の課題出題にしたところ、学生には、このくらいがちょうどいいという評判だった。

毎回、講義の前に、手書きの板書ノートのスキャンファイルと、タイプ清書した自習用テキストノートをオンラインで学生に配布した。自習用テキストは講義のペースとは別に各学生において勉強するための参考書とした。

教科書

  • ファインマン、レイトン、サンズ(宮島龍興訳)「ファインマン物理学3:電磁気学」(岩波書店)ISBN-13:978-4000077132

担当講師からのメッセージ

電磁気学は、電磁場や電子という目に見えない抽象的な概念を扱いますが、我々の目に見える光の正体は電磁場の振動です。携帯電話もテレビもGPSも電子レンジも電磁波を利用しています。コンピュータやモーターを作動させているのも電気です。また、歴史的には、電磁気的現象の研究から相対性理論と量子論が生まれました。電磁気学は、基礎物理にとっても、テクノロジーにとっても、今後とも不可欠なものであり続けるでしょう。週1回、4ヵ月ほどの講義で電磁気学をマスターすることは易しくはありませんが、電磁気学の基本事項は習得できるような講義を提供したいと思っています。履修者諸君は、講義を聴いただけでわかったつもりにならないで、本を読み、練習問題を解き、身の回りの現象や機器をよく観察し、じっくり考えることによって自分の理解を確かめて下さい。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
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投稿日

February 17, 2022