見える検閲、見えない検閲

2025年度退職記念講義

講師上原 早苗 教授
上原 早苗 教授
開講部局文学部/人文学研究科
日時2026/3/20 15:00~16:15
場所全学教育棟406
上原 早苗 教授
講師上原 早苗 教授
開講部局文学部/人文学研究科
日時2026/3/20 15:00~16:15
場所全学教育棟406

イギリスの古典的作品を読むということ

 およそ30年にわたり、本学の授業でイギリスの文学・思想・文化に関わる文献を読んできました。近年は学期ごとにイギリスの古典的長編小説を1冊ずつ取り上げてきましたが、そのたびに、原文の難しさはもちろん、経験主義の伝統に根ざしたイギリス小説特有の「わかりにくさ」に向き合うこととなりました。そのため授業では、作品そのものだけでなく、その背景にある歴史や思想にも可能な限り触れるよう心がけてきたつもりです。

 日本に生まれ育った私たちにとって、イギリスの知の伝統の肌触りを実感することは容易ではありません。彼の国の古典的作品はともすれば歴史的・地理的に遠い世界のもの、あるいは単に珍しいものとして受け取られてしまう危うさを孕んでいます。しかし、時空の隔たりがあるにもかかわらず、時の審判を経てなお現代へと読み継がれてきた作品は、いまを生きる私たちに対しても、「現代的な」問いを投げかけてくる力を持っています。その力に触れるとき、作品はもはや外側から眺める対象ではなく、私たち自身の思考や感受性に揺さぶりをかけてくる手強い存在となるでしょう。

 本学での日々を振り返ると、学部であれ大学院であれ、受講生には、自身の心が「ざわつく」ような作品と出会ってほしいとの思いから授業を行なってきたのだと改めて感じます。そして退職にあたり、これからも本学の授業が、そのような遭遇の場であり続けることを願っています。

講師紹介

上原 早苗(うえはら・さなえ) 人文学研究科 教授

学歴

  • University of Durham, School of English, MA in English Literature, 1990年10月-1991年9月
  • 津田塾大学大学院文学研究科博士後期課程 1989年4月-1993年3月

職歴

  • 名古屋大学 大学院人文学研究科教授 2017年4月-2026年3月
  • 名古屋大学 大学院国際言語文化研究科教授 2007年4月-2017年3月
  • 名古屋大学 総長補佐(教育組織改革担当) 2015年4月-2016年3月
  • 名古屋大学 総長補佐(教育組織担当) 2014年4月-2015年3月
  • University of Cambridge, School of English 客員研究員 2011年10月-2012年9月
  • 名古屋大学 大学院国際言語文化研究科助教授 2003年4月-2007年3月
  • 名古屋大学 言語文化部助教授 1996年7月-2003年3月
  • University of Kent, Faculty of Humanities 客員研究員1997年10月-1998年9月
  • 名古屋大学 言語文化部講師 1995年4月-1996年6月
  • 津田塾大学 学芸学部 研究助手1993年4月-1995年3月

取得学位

博士号(文学) 、名古屋大学2008年10月

研究キーワード

草稿研究、出版文化史、(自己)検閲、ヴィクトリア朝イギリス小説、トマス・ハーディ

所属学協会

  • Thomas Hardy Society 1988年-現在
  • Thomas Hardy Association 2011年-現在
  • 日本ハーディ協会 1989年-現在
  • 日本英文学会   2008年-現在
  • ヴィクトリア朝文化研究学会 2024年-現在

講義資料

見える検閲、見えない検閲


クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
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投稿日

April 09, 2026