理学部/理学研究科

理学部の教育

名古屋大学理学部は、数理学科、物理学科、化学科、生命理学科、地球惑星科学科の5つの学科から構成されています。1 年次には各学科への分属はせず、主に基礎科目、教養科目を受講し、自然科学、人文科学、語学などについて幅広い教養を身につけます。この教育プログラムは、理学部教育の大きな特徴です。2 年次からは各学科に分属して専門教育が始まり、4 年次では自らの発想を駆使して課題に挑み、研究を展開することになります。

理学とは、「宇宙はどのように成り立っているのか」、「物質の根源は何か」、「生命とは何か」など、自然界を貫く真理を追求する学問です。 私たちは、さまざまな自然の謎・疑問と出会い、それらを解明し、真理を自然から学んできました。解明された一つの「知」は、次なる「未知」 を生み出し、この自然の「 理(ことわり)の解明は永遠に続きます。皆さんもぜひ、私たちと自然の謎や疑問の解明に、一緒にチャレンジしてみませんか。

理学研究科の教育

~自然界を貫く心理を解き明かす~

理学とは、研究者の知的好奇心と自由な発想によって、自然界を貫く真理を追求する学問です。名古屋大学大学院理学研究科では、自然の諸原理を追求する基礎自然科学の推進に向けて、「知の創造: 研究」と「知の継承: 教育」を重要な使命としています。

自然界には数多くの謎が隠されています。自然界の謎や疑問を解明して行く過程で、試行錯誤を繰り返し、未知の世界を解明して行きます。 この自然界の謎を解き明かしたときの興奮と感動が、私たちを理学研究に駆り立てる大きな原動力です。ここ名古屋大学理学部には、研究 テーマに自らの発想を駆使して挑み、のびのびと研究が進められる自 由な雰囲気が伝統的にあります。研究対象のキーワードは、数学、素粒子、宇宙、地球、物質、生命などで、これらの研究分野で世界をリード する研究が行われています。自然の謎や疑問を知り、知的好奇心を刺激するテーマに向かって研究ができる場所、それが名古屋大学理学部です。

部局長インタビュー

理学部/理学研究科長の田中健太郎教授に4つの質問に答えていただきました。

  1. 理学部/理学研究科のビジョンを教えてください。

研究は、種を蒔き、何も無かった地面に芽を出させ、出てきた芽を大きく育てていくことにたとえることができます。芽が出た途端にするすると大きく成長するものもあれば、長い長い年月をかけてゆっくり育つもの、場合よってはなかなか大きくならなかったものが周りの環境の変化で急に育ちはじめて巨木になるもの、様々な研究があります。いろいろな育ち方をする研究、いろいろなタイムスケールの研究が同時期に共存していることが理学部・理学研究科の特徴であり、また強みであると言えます。

研究の学術的な価値と社会的な価値は必ずしも一致しません。一時の社会情勢とは無関係に、見たことも聞いたこともないような新しい研究が発芽し、今までに無かった概念が出来上がる。それが社会の要請と合致したときに、社会課題の解決のための礎になる、私達はそれを「アカデミックイノベーション」と名付けました。現在においても、皆さんの身の回りで新しい科学技術が次々と生み出されて社会に大きなインパクトを与えています。例えば、AIが人間より遙かに膨大なデータを素早く処理し解を見いだしたり、環境負荷の低減を目指して新しい駆動システムの自動車が生み出されたり、数年間のうちにも世の中の景色がどんどん変わっていきます。しかし、これらは一朝一夕に為されたことではありません。数十年前に問題意識として浮かび上がり、ようやく技術力が追いつくことで人々の目前に現れました。この間、1を100にする技術革新に多大な力が注がれてきたわけですが、一番最初に立ち戻ると0から1が生み出された、すなわち新しい概念が生まれたことがあるはずです。理学研究において多くの場合、まだ誰も考えていないことに問題意識を持ち、その問題を具体的なものにすることが目的とされます。すなわち、0から1を生み出す研究が理学研究です。

よって、理学部・理学研究のビジョンは、0から1となる新しい学術を創造し、人類の叡智を深め、豊かにすること。また「アカデミックイノベーション」に備え、ひとたび世の中とマッチしたときには「アカデミックイノベーション」をもとに世界をより良く変えることです。

  1. 理学部/理学研究科で学ぶことで得られる強みを教えてください。

名古屋大学理学部の教育における大きな特長は、様々な分野の基礎を学び、自分の適性を見極めてから専門を決める、ゆとりをもった専門選択(Late Specialization)の制度です。私たちは学科分属制度と呼んでいます。学部生は入学時には専門を決めず、教養教育院が提供する様々な学問を学んだあと、1年次の終わりに数理学科、物理学科、化学科、生命理学科、地球惑星科学科のいずれに進学するかを決定します。私たちが学科分属制度を取る理由は、理学は多くの分野とつながり、学際的な視点を必要とするからです。専門の枠にとらわれず、さまざまな学問、多様な価値観に触れることは自分の専門分野だけにとどまらず、異なる領域にも積極的に関心を持ち、新しい知識や視点を吸収する力となります。分属後は、各分野の基礎知識や学理を身につけます。そして4年次には、その集大成として最先端研究に参加し卒業研究を行います。卒業研究では、誰も見たことがない、知らない、作ったことがないものに手を伸ばした研究を行います。

理学部を卒業すると多くの学生は大学院に進学します。理学研究科は数々のノーベル賞につながる研究が行われた場所であり、またユニークかつ最先端の研究に挑む多数の研究者で構成されています。理学研究科では物理学、物質・生命化学、生命理学の領域を融合した単一の理学専攻で学びます。それぞれの専門の基礎を学んだ後に、再び融合環境下で研究を行う事で、自身の研究を深めることと広げること、両方に挑戦することができるため、新しい学術の芽を生み出す土壌があります。

最先端の研究環境下において、知的好奇心に従い、広い視野で自由闊達に学び、研究できることが理学部・理学研究科で得られる最大の強みです。

  1. 田中先生ご自身が学生であったとき、印象的な授業はありましたか?

教室で受ける授業についてですが、一つの授業を取り上げてということではなく、まずどの授業にも言えることとしてお話しします。基本的な学問的な体系を学ぼうと思えば、教科書を読むだけでも良いかもしれません。しかし授業では、その学問の背景や、それに加えて先生の経験に基づく様々なエピソードを聞くことができます。さらには、そこから一流の研究者が、感じて、築いてきた世界観が見えてきます。ますます興味が広がりました。

私にとっての学部生時代の最も濃い時間は、4年生で研究室に配属されて行った卒業研究です。指導教員の人柄や実験の面白さから、一気に研究に引き込まれました。私は比較的スクエアな学生だったのですが、研究を前にしたときには解き放たれて自由に発想ができることを教わったことが、私のその後の人生を作っていると思います。その楽しみに取り憑かれて、今に至るまで研究生活を謳歌しています。

  1. 理学部/理学研究科の学生に大学生活を通じてどんな風に育ってほしいですか。

理学とは、自然の本質を探究し、自然の理(ことわり)、宇宙や地球、生命、物質、数学的法則といった、世界を構成する根本的な仕組みを解き明かす学問です。「なぜ」や「どうして」に始まる知的好奇心を力として、頭を働かせ、手を動かすと、理解に繫がります。理解は興味に繫がり、またその先にある新たな好奇心を引き出してくれます。理学部・理学研究科では、この真理の探究の連鎖を楽しめる学生を育てたいと考えています。

まず、それぞれの学問分野を理解するための基礎を体系的に学び、確固たる基礎学力を身につけてもらいます。そして大学院では、自身の研究をより深く掘り下げて学術的価値を高める「専門性の深化」とともに、より広い分野に好奇心を向け、自由な発想のもとに他の分野との融合も取り入れて新たな研究領域を作る「専門性の拡張」も意識してほしいと考えます。この「深化」と「拡張」の両軸がこれからの人類の叡智を生み出す糧になります。

理学研究科は、物理学、物質・生命化学、生命理学の領域を融合した単一の理学専攻で学ぶことができます。この特長を活かして十分に広げたアンテナを使い、広い視野に立って30年から40年先に思いを馳せ、新しい学術からより良い世界を創ること、すなわち「アカデミック・イノベーション」を起こすための根幹を自身の中に作ってもらいたいと思います。

(令和 7 年 6 月 19 日)


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