1兆分の1秒から30億年:光合成の分子システムとその進化

2009年度 退職記念講義

講師伊藤繁 教授
伊藤繁 教授
開講部局理学部/理学研究科
日時2010/3/2 14:40-15:40
場所理学部B5講義室(B館501号室)
伊藤繁 教授
講師伊藤繁 教授
開講部局理学部/理学研究科
日時2010/3/2 14:40-15:40
場所理学部B5講義室(B館501号室)

退職にあたって

「もう決めなければいけない年なのですよ、とりあえず私がひきうけましょう」。志望先未定だった私は、こんなふうに東大生物化学・植物生理の研究室にいれていただきました。「光合成」の研究は面白かった。手作りの装置から日進月歩で進むレーザー、光技術やコンピューター、生物科学の発展にあわせ、研究も場所も変わりました。2000年からは名大物理教室(生命理学併任)に加えていただき、「1兆分の1秒刻みで光エネルギーをとらえる物理過程」を知ることも、「北極圏での化石や植物の探索」、「新型光合成の発見」もできました。物理学の中で生命を考えるのは新鮮でした。

素粒子や原子、星とともに「生命」もこの宇宙の主役の一つ。「真空3Kの宇宙空間」に浮かぶ「惑星地球」に、「太陽光」が流れ込み「熱」として周波数を変えてまた出て行く。この繰り返しの中で、光合成は光エネルギーを捕え、しばし生命の中にとどめ、分子やタンパク質や細胞を変え、多様な生命を生み出し、大気や環境を変え続けてきました。光合成の分子装置は物理の法則を満たしながら、30億年の進化の名残をとどめつつ、海底や火山にいる細菌から海藻、地上植物のもつものまで、環境にあわせて多様な形で完成されているようです。「1兆分の1秒から30億年」、宇宙や生命にとっては当たり前のことですが、これを学ぶのは思った以上に楽しい事でした。

講師紹介

伊藤 繁(いとう・しげる)理学研究科教授

学歴

  • 1969年 東京大学理学部生物化学専攻 卒業
  • 1974年 東京大学大学院理学研究科生物化学専攻博士課程 修了

取得学位

  • 理学博士

職歴

  • 1974年 日本学術振興会 奨励研究員
  • 1974年 英国ブリストル大学博士研究員/日本学術振興会英国派遣研究員
  • 1975年 九州大学理学部 助手
  • 1982年 文部科学省岡崎国立共同研究機構 基礎生物学研究所助教授 総合研究大学院助教授併任
  • 2000年 名古屋大学 大学院理学研究科 教授

所属学会

  • 国際光合成学会 編集委員 (1999)
  • 日本光合成研究会 会長 (2005-2006, 2007-2008)
  • 日本植物学会 会員 (2000)
  • 日本植物生理学会 編集委員 (1996)
  • 日本生物物理学会 学会委員 (2000, 2007)

専門分野

  • 生物物理学
  • 植物生理学
  • 機能生物化学

研究課題

  • シリカナノポア内での人工光合成系の作成
  • 光合成の進化
  • タンパク質機能と立体構造
  • 光合成の高速光反応と電子移動反応

受賞学術賞

  • 日本植物学会論文賞 (1998)

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講義資料

1兆分の1秒から30億年:光合成の分子システムとその進化

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投稿日

February 15, 2017