講師 | 中西知樹 教授 |
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開講部局 | 教養教育院 2008年度 前期 |
対象者 | 文系学部 (2単位) |
数学とは自然界における「数」に関わる現象をその背後にある数学的論理とともに人間が認識し抽象化し定式化したものである。そのようなことが可能であることも大きな驚きであるが、数学がわれわれの住む「自然」の中に組み込まれていることから、このような数理的現象が一見数学とは無関係な「文系」の研究対象においても、いろいろな形で結び付いていることはまた「自然」なことである。この講義では、現代数学の基本的な手法である「集合と写像」および「構造と準同型写像」の考え方を学ぶことにより、みなさんの研究対象に現れる、あるいは隠れている数理的現象を見抜く力を養うことを目的とする。
名大 OCW「現代数学への流れ」受講生のみなさん、この講義は、文系などふだん大学で数学を学ぶ機会が少ない受講者を念頭に、現代数学の基礎を身につけることを目的としています。
20世紀の前半に、数学は「集合と写像」および「構造と準同型写像」の概念を基礎として再構成されました。したがって、もしみなさんがなんらかの理由や動機で数学を学ぼうとするとき、「集合と写像」についての確固とした基礎が必須であり、また「構造と準同型写像」の概念の理解が理論の見通しを与えてくれます。
「構造と準同型写像」に関する教科書のほとんどは数学専攻の学生のためのものであり、それを学ぶには通常は相当の予備知識と専門的学習が必要です。この講義は「集合と写像」について一から始め、おもに線形構造の例を通して「構造と準同型写像」の概念の意義を理解することを最終目標としています。このように、「構造と準同型写像」の概念にできるだけ最短経路で到達 できる点で、この講義の内容は大変特色あるものとなっています。
この講義で、現代数学の基礎と基本的な考え方を身につけることにより、みなさんは、自分の 専門や目的に応じて、その先にあるさらに進んだ数学の学習を自分でできるようになるでしょう。 受講のコツは、講義ノートをただ眺めるのではなく、私の講義を聴講しているつもりで、自分のノートに書き写してみることです。
参考書、教科書は使わない。必要なことはすべて講義で述べる。この講義の内容は主に以下の本の内容の「ファーストステップ」に相当する部分である。
どちらも数学専攻の学部1、2年生向けの本格的な教科書である。また、読み物として M. マシャル, ブルバキ 数学者達の秘密結社(シュプリンガー・フェアラーク)の一読を勧める。1935 年ごろから Andre Weil を中心とした数学者グループ Bourbaki が「数学原論」という大著(未完)の分冊を続々と出版し、「集合と写像」を基盤として数学の再構成をはかった。この本はこのような 20 世紀の数学の流れの展望が得られる好著である。
回 | 講義内容 |
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1 | 数理論理 |
2 | 集合の構成法 |
3 | 集合と写像 |
4 | 同値関係と商集合 |
5 | 可算集合 |
回 | 講義内容 |
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6 | ベクトル空間 |
7 | 部分空間 / 1次独立 |
8 | 基底と次元 |
9 | 線形写像 |
10 | 同型写像 |
11 | 次元定理 |
12 | 連立一次方程式 |
13 | 実数とは何か? |
この講義ノートは、2008年度前期の講義「現代数学への流れ」のために作成した講義ノート原稿を一部加筆修正したものです。
講義ノート原稿の作成にあたって念頭においた基本方針は以下の2点です。
第1は、受講者が講義受講後に改めて講義ノートを精査しながら講義内容の再学習をひとりでできるようにすること。それは、数学の講義内容や意義をその場で完全に理解することは大変難しいのがふつうであるからです。したがって、講義ノートは単なる内容の要点のメモではなく、必要な部分はきちんと文章化して、できるだけ完結した情報を与えるように配慮をしています。
第2は、数学のいろいろな概念や記号の習熟のための演習を兼ねること。数学には、多くの独自の概念と記号が用いられます。これらは身につけるには、外国語の単語のスペルや文法の学習と同様に、実際に繰り返して「使う」ことが必須です。この講義ノートを書き写しながら、新しく出てきた概念と記号の正しい使い方に習熟するように配慮をしています。
したがって、実際の講義でも、要点の説明を加えながらこの講義ノートの内容をほぼ忠実に板書し、受講生もすべての内容を自分のノートに書き写しながら学習をしています。
なお、OCW サポートスタッフの名古屋大学多元数理科学研究科大学院生の中島康貴さんには講義ノートの清書、誤記の修正、など多大なるご尽力をいただいたきました。ここに感謝をいたします。
第 1 回
第 2 回
第 3 回
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第 13 回
May 08, 2020