文学部/人文学研究科

文学部/人文学研究科の教育

文学部には 21 の分野・専門があり、入学生には、自らの関心と将来の志望に合わせて、主として学ぶ領域を決めてもらいます。2 年生になると、選択した領域に分かれ、院生と一緒になって学びます。人数は領域によって様々ですが、基本的に授業は少人数で、また、教員と院生と学部生の居場所が近いので、先生や先輩と身近に交流しながら勉学できるのが、文学部の教育の特徴だと思います。

人文学研究科には 25 の分野・専門があり、文学部で学べる人文学の基幹的な学問領域に加えて、より学際的な分野も学べます。研究科で学ぶ学問は、学部より専門性が高いことは言うまでもありませんが、複数の学問領域を跨ぐ形で学位プログラムが設定されていて、専門性と同時に、広い視野も身につけられるカリキュラムが、人文学研究科の教育の特徴になっています。

高校までは、先生から一方的に教わる形の授業が多かったかもしれません。大学でも、学問の方法や研究の基礎などはきちんと学ぶ必要があるので、先生に教えてもらうという面がないわけではありませんが、教育の「育」には「育む」という意味があるように、大学や大学院では、自ら育む、つまり自ら学ぶことの方が大切です。

自ら学ぶためにはいろいろなことに関心を持つことが大事です。また、文学部・人文学研究科で学ぶ人文学には、先人が残してくれた知恵や知識を文献や資料から読み取って、人類の叡智を将来に受け継いでいくという大切な使命があります。その使命の一端を担うためには、できる限り広い視野を持ち、様々な領域から知識を吸収することが必要です。そして、こうした学びこそが自己を育み、人間としての成長や自己の確立をもたらすのです。

文学部・人文学研究科で学ぶ学問は、確かに、社会に出てすぐに役立つというものではないかもしれません。しかし、人文学は、人間のさまざまな営みを学ぶことを通して、人間とは何かを考え、人間の本質に迫ることを目指す学問です。人文学を学ぶことによって、これから先の長い人生をいかに生きていくべきか、その指針を得ることができれば、それは何物にも代えがたい財産となるはずです。

人間とは何か、という問いかけに興味のある人は、ぜひ名古屋大学の文学部・人文学研究科で学んでください。

部局長インタビュー

文学部/人文学研究科長 周藤芳幸 教授

文学部/人文学研究科長の周藤芳幸教授に5つの質問に答えていただきました。

  1. 文学部・人文学研究科の強み(醍醐味)を教えてください。

名古屋大学は、中部圏で唯一の総合研究大学です。総合研究大学とは、さまざまな学問分野で世界最高水準の研究を推進し、その成果をまずは学生の皆さんに、さらには広く社会に伝えることで、人類の発展に貢献する大学のことです。このように、単にできあがった知識の伝授ではなく、最先端の研究活動を通じた教育を重視する考え方は、一般に「フンボルト理念」と呼ばれています。文学部・人文学研究科は、まさにこの「フンボルト理念」にもとづく教育・研究を、人間性について、つまり人間の思いとその表現を研究対象とする人文学において実践する場に他なりません。そのために、文学部・人文学研究科では、言語学、文学、哲学、歴史学、人類学など、人文学の各分野で活躍している研究者が、その研究成果を踏まえた講義や少人数の演習を通して、日々の教育を行っています。また、東海 3 県を超えて全国から人間の多様な文化に対する好奇心にあふれる優れた学生が集って、切磋琢磨しながら大学生活を送っていることが、学部・研究科の強みとなっています。

  1. 文学部・人文学研究科の学生に大学生活を通じてどんな風に育ってほしいですか。

一昔前には、文学部というと、何か実生活の役には立たないことを学ぶ場であるかのように、誤解されていたこともあったのではないかと思います。しかし、現代社会においてグローバル化と流動化が進むにつれ、異なる国のあいだでの歴史や文化の相互理解、あるいは人々の価値観の多様性を認め合うことの重要性は、私たちが未来社会を見据えながら生きていく上でますます高まっています。IT 技術などの急激な進化によっても、それを使う私たちの根底にある人間性、つまり人間が人間であるとはどのようなことなのかを深く追求する人文学の意義は確実に再評価されつつあります。文学部・人文学研究科に学ぶ学生の皆さんには、何よりも人文学という素晴らしい学問と取り組むことに誇りをもって大学生活を送り、その過程で自分をとりまく世界をより広く、より深く考えることのできる力を身につけていってほしいと願っています。

  1. 文学部・人文学研究科のビジョンを教えてください。

1948 年に産声をあげた文学部は、まもなく創設 75 周年という記念の年を迎えることになります。この間、文学部は数多くの優れた人材を輩出してきましたが、この伝統を受け継いで、人文学に関心のある志の高い高校生たちの期待に応えることのできる文学部として、さらに専門分野を充実させていく必要があります。これに対して、人文学研究科は、2017 年に学内の 2 部局 1 専攻、すなわち文学研究科、国際言語文化研究科、及び国際開発研究科の国際コミュニケーション専攻を統合する形で発足したばかりの、まだ新しい組織です。スケールメリットを活かした改革を進めていくことで、研究力をさらに強化し、総合研究大学にふさわしい大学院のあり方を模索していきたいと考えています。

  1. 周藤先生ご自身が学生だった時、印象的な授業はありましたか。

たくさんの授業が印象に残っていますが、やはりよく思い出すのは、学部の 3 年生のときに体験した北海道での野外考古学の実習です。これは、夏休みに同期の学生たちと宿舎に泊まりこんで、一ヶ月くらい遺跡の発掘をするというものですが、それも終わりに近づいたある日のこと、数時間かけて、先生と二人だけでトランシットを使ったトラバースという測量をしたことがありました。どうして、先生が参加していた学生の中から私をアシスタントに指名したのかは分かりませんが、北海道の爽やかに晴れ渡った日差しのもと、瑞々しい緑にあふれる美しい自然のなかで、スタッフを立てたりトランシットを読んだりしながら先生と過ごしたときの充実感は、今でも忘れることができません。

  1. 高校生(文学部へ入学を希望している学生)へのメッセージをお願いします。

文学部における学問の研究対象は、社会学の場合のような例外はありますが、その多くが遠く時空を隔てた世界で生み出された人間の思想や作品なのではないかと思います。言い換えれば、文学部における研究の根底にあるのは、過去に生きた人々との対話です。すべての生き物のなかで、世代を越えて思いやかたちの総体である文化を継承し、未来に伝えていくことができるのは人間だけですが、その人間の本質について考える文学部の学問は、無限の魅力と感動に満ちていると言っても過言ではありません。ぜひ、名古屋大学文学部・人文学研究科で、人間の本質について一緒に考えていきましょう。

(令和4年6月2日)


関連リンク

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授業一覧

以下のトピックについて学びます。扱うトピックは、 1. 個々人がどのように異なる言語やスタイルを使い分け、コミュニケーションにおける課題を解決しているか、また 2. 個々人の言語活動が、言語変化などより大きなスケールでの現象とどのように結びつき、また社会はそれにどう対応していくのかという2つの問題に大きく分けることができます。授業中は、英語による議論への積極的参加が求められます。 ....

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