社会的相互行為と言語-2016

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講師安井永子 講師
開講部局文学部/人文学研究科 2016年度 前期
対象者G30対象、文学部2年生以上、他学部3年生以上可、NUPACE学生修復可 (2単位週1回全15回)

授業の内容・方法

私たちの日常における多くの活動は、言語や身体を用いた他者とのコミュニケーションを通して達成されています。私たちがそれらのあらゆる活動を「適切に」、「普通に」達成しているように見えるとき、私たちの言語や身体は、社会における共有の「見えない規則」に従って生み出されています。言い換えると、普段の生活の中で私たちがコミュニケーションの中で産み出す言語や身体を使った振る舞いは、人間社会における「適切性」や「普通」とは何かを映し出していると言えます。

本授業では、「会話」という人間の基本的なコミュニケーション活動を取り扱い、言語・身体と社会の関係についての理解と関心を深めることを大きな目的とします。コミュニケーションをミクロに紐解く「会話分析」という研究手法の視点から、日常会話における話し手と聞き手の言語・非言語行動を微視的に観察することを通して、私たちの会話を成り立たせる「隠された規則性」、つまり会話の組織や秩序について学びます。

それにより、以下のような効果や能力の育成が期待されます。

  • 私たちが会話をどのように達成しているかを理解する
  • 普段の社会生活の中で「当たり前」や「普通」だととらえられているものに焦点を当て、それらを微視的かつ理論的に分析し表現することが可能となる
  • 日常の人間の行為への鋭い観察力と洞察力を身につける
  • 社会における実践的なコミュニケーション能力を身につける

授業では、実際の会話場面のビデオを観察し、議論するため、受講生の授業への積極的な参加が求められます。

授業の工夫

授業では、学生が主体となって取り組むアクティビティやディスカッションを通して、新しい理論やトピックについて学生がその場で考え、それらを応用できる機会をできるだけ多く設けるようにしています。特に「会話分析」を扱う本講義では、自然会話を収録したビデオデータを、その書き起こしとともに詳細に観察し、会話の参加者が言語や身体を用いてどのように行為の連鎖を構築するかを分析する練習を重ねることで、日常の人々の振る舞いへの詳細な視点を養うことを目指しました。

到達目標

  • 相互行為の仕組みについて理解し、説明できる
  • 会話分析の研究手法と知見を理解し、応用できる
  • 会話分析で得られた知見を、実際のコミュニケーションの状況に適応させることができる
  • 文献を正確に読み解き、説明できる能力を身につける

授業の目的

私たちの日常生活は、コミュニケーション無しでは成り立つことはできません。社会におけるあらゆる活動や行為を、私たちは他者とのコミュニケーションの中で達成しています。コミュニケーションとは、話し手と聞き手が相互に理解し合い働きかける「相互行為」の淀みない「過程」です。私たちが社会生活の中で、適切に他者とのコミュニケーションを達成できるのは、社会の秩序に縛られた「見えない規則」に沿って互いに互いの言葉や行動を理解し合っているからにほかなりません。

本講義は、コミュニケーションにおける人間の言語・非言語(身体)行動についての探求を通し、言語及び身体への関心だけでなく、人間社会そのものへの関心、理解へとつなげることを大きな目的としています。本授業では、「会話分析」や「相互行為のミクロ分析」と呼ばれる、コミュニケーションを微細に紐解く研究手法の視点から、日常会話における話し手と聞き手 の言語・非言語行動を微視的に観察することを通して、会話における「隠された規則性」を解明していきます。それにより、私たちが普段の社会生活の中で「当たり前」ととらえているものが、なぜ当たり前と見なされるのかについて微視的かつ理論的に分析し表現することが可能になるだけでなく、日常的な人間の行為 への鋭い洞察力の育成にもつながると考えられます。また、コミュニケーションの構造と秩序を理解することを通し、社会における実践的なコミュニケーション 能力の習得も期待されます。

自宅学習

授業で配布する教材・ハンドアウトを、事前に読んで予習しておくこと。

テキスト

  • Nofsinger, R.E. (1999). Everyday Conversation, Illinois: Waveland Press.
  • Schegloff, Emanuel A. (2007). Sequence Organization in Interaction: A Primer in Conversation Analysis, Volume 1, Cambridge: Cambridge University Press.
  • Sidnell, Jack. (2010). Conversation Analysis: An Introduction, London: Wiley-Blackwell.

参考文献

  • Sacks, Harvey. (1995). Lectures on Conversation. Blackwell Publishing.
  • Sacks, Harvey, Schegloff, Emanuel A., & Jefferson, Gail (1974). A simplest systematics for the organization of turn-taking for conversation. Language, 50, 696-735.
  • Schegloff, Emanuel A., Jefferson, Gail, & Sacks, Harvey. (1977). The Preference for Self-Correction in the Organisation of Repair in Conversation. Language, 53, 361-382.
  • Sidnell, Jack & Tanya Stivers (2012) (Eds.). Handbook of Conversation Analysis. Boston: Wiley-Blackwell.
  • Ten Have, Paul (1999). Doing Conversation Analysis. A Practical Guide, Thousand Oaks: Sage.

スケジュール

回 [Session] 講義内容 [Contents]
1Introduction
2I. Communication as interaction

- Verbal and non-verbal behaviors as social actions

3− Conversational actions

Nofsinger: Ch2. “Conversational action,”

Schegloff: Ch.1 “Introduction to sequence organization,Capsule review 2: actions”

4II. Organization of conversation

− Basic ideas and concepts in conversation analysis

Sidnell: Ch.1 “Talk”
5− Turn-taking organization 1 Sidnell: Ch.3 “Turn-taking”
6− Turn-taking organization 2
7− Sequence organization:adjacency pairs

Sidnell: Ch.4 “Action and understanding”

Schegloff: Ch.2 “The adjacency pair as the unit for sequence construction,” Ch.3 “Minimal, two-turn adjacency pair sequences”

8− Sequence organization: Turn expansionsSidnell: Ch.6 “Sequence”
9− Preference organizationSidnell: Ch. 5 “Preference”
10Repair organization 1Sidnell: Ch.7 “Repair”
11− Repair organization 2
12− Turn-construction Sidnell: Ch.8 “Turn-construction”
13− Data transcription workshop
14III. Summary

− Exam review, data analysis session, etc.

15− Final exam

成績評価の方法と基準:

  1. 出席・授業への積極的参加 、リアクションペーパーの提出(20%) 毎回の授業に出席するだけでなく、授業内でのディスカッションやアクティビティに積極的に参加することが期待されます。
  2. 課題(×2)(40%)
  3. 期末試験(40%) :講義ノートや配布物は全て持ち込み可

投稿日

March 25, 2020