ロマン主義文学の諸相-2011

講師大石和欣 准教授
開講部局文学部/人文学研究科 2011年度 前期
対象者文学部2〜4年生、文学研究科大学院生 (2単位週1回全15回)

授業の内容

この授業では、多様性に富んだロマン主義文学の面白さと深さを、とくにイギリス文学に焦点を当てながら講義のかたちで学んでいきます。

一口に「ロマン主義」と言っても、実はその定義は研究者の間でも長い間論争が続けられているきわめて不分明なものです。イギリスの自然詩人ワーズワスと風刺好きなバイロンとでは大きな違いがあります。ドイツのゲーテやシラー、フランスのユーゴーなどを比べてみても、作品テーマや作風はまったく違います。

講義では、そうした多様な作品の中から、一般的に「ロマン主義的」と考えられている要素を抽出しながら、その時代背景を言葉の裏側に探っていきます。ロマン主義文学という人間の言語活動が、どのような社会や文化、あるいは風土の中で生み出されてきたのでしょうか。また、そこにはどのような人々の生き様と哲学が埋め込まれているのでしょうか。

大きな政治的・社会的変動や価値観の変化の中から興隆するロマン主義文学を読むことは、変化と多様性に満ちた現代に生きる私たちにとっても意味のある知的行為です。ロマン主義文学の読解を通して、文学解釈の基本についても、身につけていきます。

授業の工夫

  • 多様性に富むロマン主義文学を15回という授業で俯瞰するのは容易なことではありませんが、聴講学生がその一般的傾向を知性と感性でつかみとれるように、例示する作品や説明を簡潔かつ適切なものに工夫しています。
  • 英米文学専攻の授業ですから、イギリス文学については原文で資料を提示し、それぞれの作品が持っている微妙なニュアンスを原文で味わいながら、英語力の向上を目指すと同時に、文学作品解釈のイロハについても学べるようにしています。
  • その一方で、イギリスという地域性を超えて、フランスやドイツなどヨーロッパ全体の文芸思潮・芸術運動も視野に入れることで、ロマン主義について巨視的な視点から考えることができるように工夫しています。
  • アメリカ独立戦争にはじまる様々な歴史的背景やターナーの絵画、ベートーベンやシューベルトなどの音楽まで、視聴覚の面からも理解できるように教材・資料を提供しています。

授業の目的

本講義では、ロマン主義文学の多様な側面を、代表的な文学作品の解釈を通して考えていきます。

授業の内容

「ロマン主義」(Romanticism)は一元的な定義を拒絶するきわめて多面的な文学範疇であり、 また文化現象でもあります。この授業では、多様性に富んだロマン主義文学の面白さと深さを、 とくにイギリス文学に焦点を当てながら講義のかたちで学んでいきます。 18世紀半ばから19世紀前半にかけてヨーロッパで興隆したロマン主義文学は、 大きな政治的・社会的変動や価値観の変化を背景にして生まれてきました。 講義では、作品にちりばめられた言葉の裏にそうした社会的・文化的背景を読み込んでいくことで、 変化と多様性に満ちた現代に生きる私たちにとっても意味のある文学解釈の基本を身につけていきます。

履修条件・注意事項

英文学のテクスト解釈を基本にするので、それに相当する英語力および文学への関心を有することが 履修の必須条件です。

受講生の自宅学習

教科書を参照しながら、毎回の講義で課題となっている作品および参考書を必ず事前に予習してくること。

教科書

Ferber, Michael. Romanticism: A Very Short Introduction. Oxford: OUP, 2010.

参考書

授業中に関連するテーマごとに適宜紹介していく。

参考資料

教科書

  • Ferber, Michael. Romanticism: A Very Short Introduction. Oxford: OUP, 2010.
  • Wu, Duncan, ed. Romanticism: An Anthology. 3rd ed. Oxford: Blackwell, 2006.
  • ———, ed. A Companion to Romanticism. Oxford: Blackwell, 1999.
  • Roe, Nicholas, ed. Romanticism: An Oxford Guide. Oxford: OUP, 2005.
  • McCalman, Iain, Jon Mee, Gillian Russell, Clara Tuite, eds. An Oxford Companion to the Romantic Age: British Culture, 1776–1832. Oxford: OUP, 1999.

その他(翻訳を含む)

  • 上島建吉『虚空の開拓—イギリス・ロマン主義の軌跡』東京 : 研究社, 1974.
  • 加納秀夫『英国ロマン派の詩と想像力』東京 : 大修館書店, 1978.
  • 水之江有一『キーツとロマン派の伝統 : 美の象形文字とその幻想性』東京 : 北星堂書店, 1979.
  • 吉田健一ほか『ターナーとロマン派風景画』東京 : 中央公論社, 1974.
  • 坂崎乙郎『ロマン派芸術の世界』東京 : 講談社, 1976.
  • フランク・カーモード『ロマン派のイメージ』菅沼慶一, 真田時蔵訳 東京 : 金星堂, 1982.
  • グレアム・ハフ『ロマン派の詩人たち』出口泰生訳 東京 : 弥生書房, 1971.
  • ジョナサン・ベイト『ロマン派のエコロジー — ワーズワスと環境保護の伝統』小田友弥, 石幡直樹訳 東京 : 松柏社, 2000.
  • A. S. コリンズ『文筆業の文化史 — イギリス・ロマン派と出版』青木健, 榎本洋訳 東京 : 彩流社, 1999.
  • ジャン・クレイ『ロマン派』東京 : 中央公論社, 1990.
  • ヘンリー・クラブ・ロビンソン『イギリス・ロマン派詩人たちの素顔』エディス・J・モーリー編, 杉野徹訳 京都 : 京都修学社, 1998.
  • ヴァルター・ベンヤミン『ドイツ・ロマン主義』大峯顕, 高木久雄編 東京 : 晶文社, 1970.
  • フィリップ・ヴァン・チーゲム『フランス・ロマン主義』東京 : 白水社, 1990.
  • L. R. ファースト『ロマン主義』上島建吉訳 東京 : 研究社, 1971.
  • イザヤ・バーリン『ロマン主義と政治』福田歓一, 河合秀和編 東京 : 岩波書店, 1984.
  • デーヴィッド・ブレイニー・ブラウン『ロマン主義』高橋明也訳 東京 : 岩波書店, 2004.
  • M. H. エイブラムズ『鏡とランプ : ロマン主義理論と批評の伝統』水之江有一訳 東京 : 研究社出版, 1976.
  • ポール・ド・マン『ロマン主義のレトリック』山形和美, 岩坪友子訳 東京 : 法政大学出版局, 1998.
  • W. J. ベイト『古典主義からロマン主義へ : 18 世紀英国の文学的風土』東京 : みすず書房, 1993.
  • 放送大学「Web ロマン主義入門講座」 http://www.campus.ouj.ac.jp/~gaikokugo/romanticism/

スケジュール

講義内容
1 Chapter 1: The Meaning of the Word, pp.1–13
2 Chapter 2: Sensibility - Sympathy, Melancholy, and Horror, pp.16–23
3 Chapter 2: Sensibility - The Cult of Ossian, pp.24–31
4 Chapter 3: The Poet - [Introduction] pp.32–34 - Eagles, pp.39–43 - Dying Poets, pp.43–47
5 Chapter 3: The Poet - Suffering Poets, pp.47–52 - Widening Meanings, pp.52–55 - Women Poets, pp.55–62
6 Chapter 4: Religion, Philosophy, and Science - [Introduction] pp.63–66 - The Religion of Nature, pp.66–70 - Greek Paganism, pp.70–72
7 [Reading Week]
8 Chapter 4: Religion, Philosophy, and Science - The Sublime, pp.72–76 - The Religion of Art, pp.76–81
9 Chapter 4: Religion, Philosophy, and Science - Idealism, pp.81–87 - Pantheism, pp.87–89
10 Chapter 4: Religion, Philosophy, and Science - Science, pp.89–92
11 Chapter 5: The Social Vision of Romanticism - [Introduction] pp.93–94 - The French Revolution, pp.94–98 - The Industrial Revolution and the Bonds of Community, pp.98–101
12 Chapter 5: The Social Vision of Romanticism - Nationalism and Internationalism, pp.101–107 - War, pp.107–109
13 Chapter 5: The Social Vision of Romanticism - The Condition of Women, pp.109–111 - The Exotic, pp.111–120
14 Chapter 6: The Arts - [Introduction] pp.121–122 - Content, pp.122–124 - Form, pp.124–127 - The Prestige of Music, pp.128–131
15 まとめ・試験

講義ノート

第 1 週 ロマン主義の定義

第 2 週 感受性 ①

第 3 週 感受性 ②

第 4 週 ロマン主義時代の詩人像 ①

第 5 週 ロマン主義時代の詩人像 ②

第 6 週 宗教、哲学、科学 ①

第 7 週 Reading Week

第 8 週 宗教、哲学、科学 ②

第 9 週 宗教、哲学、科学 ③

第 10 週 社会を見つめるまなざし ①

第 11 週 社会を見つめるまなざし ②

第 12 週 異国趣味

第 13 週 女性とロマン主義

第 14 週 芸術

第 15 週 試験

成績評価の方法と基準

成績は、授業への出席態度(40%)、筆記試験(60%)を総合して評価する。 授業への自主的かつ積極的な参加、独創的で論旨明快な試験答案を期待したい。


投稿日

May 08, 2020