新聞は消えない

2010年度 退職記念講義

講師田島暁 客員教授
開講部局文学部/国際言語文化研究科
日時2011/2/10 15:00-17:00
場所文系総合館7階カンファレンスホール
講師田島暁 客員教授
開講部局文学部/国際言語文化研究科
日時2011/2/10 15:00-17:00
場所文系総合館7階カンファレンスホール

退職にあたって

「企業の講師陣でマスコミの即戦力を育ててもらいたいんです」と、大学院側から伺ったとき、痛感したのは「時の流れ」でした。 その提案は画期的な産学連携なのですが、自分が名大に在学したころ「産学協力」などと聞いたら、学生らが「なにィ」と目をムいたはずです。 大学の自治を売り渡すのか、なんて。文系では特に…。学生運動が毅然と、あった時代でした。

とはいえ、当時の法学部には中部日本(中日)新聞論説主幹を講師にした「新聞学」が開講されていて、文学部生の私も受講したのでした。 それから40年です。2003年から、自分が同じ立場で母校の教壇に立ち、学生諸君と交流できたとは。奇しき縁に驚き、感謝です。 明るく伸びやか、おしゃれな若者群像に、老新聞人も若返る思いでした。 一人でも多く後に続いてくれたらと期待しながら、記者活動の魅力や、新聞の重い役割を語ったものです。

学外の客員教員にまで最終講義の機会を与えてくださった研究科のご配慮に痛み入りつつ、お話しした主題は新聞の明日についてでした。 様々な危機状況にある新聞界は、さながら革命期を迎えているとも言えます。 電子メディアに圧倒され、活字離れもさらに進んで新聞紙は消滅の運命、と見る向きさえありますが、いやいや消えはしませんよ。 新聞の役割と強みを代替しきれるメディアがないからです。 でも、新聞が今のままで安閑としていたら、墓穴を掘るのは必定。現に、新聞がなにかと力量を落としているようで心配でならない昨今ですからね。 その辺を、最後に語っておかなくちゃ、と思った次第です。世界観、歴史観が狭まり縮んで判断力を欠く、思考しない現代日本人への言及は…まあ時間切れでした。

講義レジュメの裏面に、二つの文章を添えました。私が新聞に書いた最後の社説記事と、『新聞研究』誌に寄せたエッセイです。 社説は有終の記念か、ちょっとした遺言みたいなもので。 エッセイの方は、名大の前史、八高や名古屋帝大の誕生事情など、できれば学生諸君に知っておいてほしかったことです。 私たちの学生時代に、名大祭が始まり、たこ足学部の東山集結が本格化した話も、私はよく口にしました。 いわば歴史の体験証言。学内の教授陣は若くて分からないだろうから、自分が語り部に、と気負ったのでした。

そんな客員老人も、お別れの時です。懐かしのキャンパスに白髪が訪れて、速いもの8年も流れたんですね。 楽しい晩年を過ごさせていただき、お礼申し上げます。 学生、教員の皆さんのご健勝、社会連携メディア講座ますますの充実と、母校の隆盛をお祈りしつつ。(2011年3月)

講師紹介

田島 暁(たじま さとる)国際言語文化研究科 客員教授

出身

  • 1940年 名古屋市生まれ

学歴

  • 1964年 名古屋大学文学部史学科(国史学)卒業

職歴

  • 1964年 中日新聞入社
  • 1965年 多治見支局記者
  • 1969年 三重(津)支局記者
  • 1971年 名古屋本社経済部記者
  • 1973年 横浜支局記者
  • 1974年 東京本社(東京新聞)特別報道部記者のちデスク
  • 1981年 名古屋本社社会部デスク
  • 1990年 同「中日春秋」担当論説委員
  • 1996年 同 編集局次長
  • 1998年 同 編集局長
  • 1999年 同 役員待遇論説主幹
  • 2007年 同 編集局顧問(現在に至る)

※兼職

  • 2003年 - 2011年 名大国際言語文化研究科客員教授(新聞現場論)
  • 2007年 - 名大法学部非常勤講師(新聞論)

専門分野・業務

  • テーマの広い地方取材と、東京・特報部で国内外のあらゆるジャンルに挑んだ経験が長いせいで、特定の深い専門はない、「何でも屋」の記者になった。 その歩みの先に、約7年間の1面コラム「中日春秋」執筆の時代がある。海部・宮沢・細川・羽田・村山・橋本政権下の世の万象をとらえ、湾岸戦争、ソ連崩壊、阪神大震災など内外の激動を見つめて、自在に書く毎日を過ごした。
  • 社会部デスク、編集局デスクとして取材、紙面作りを指揮したほか、編集、論説の全体を統括する立場にも立った。

講義ビデオ

新聞は消えない

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講義資料

講義レジュメ (PDF 文書, 258KB)

メッセージビデオ


投稿日

May 12, 2020