韓国・朝鮮語表現論演習b-日本語と韓国・朝鮮語の分節音の音声学・音韻論-2016

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講師宇都木昭 准教授
開講部局文学部/国際言語文化研究科 2016年度 後期
対象者博士前期課程、博士後期課程

授業の概要

この授業では、日本語と韓国・朝鮮語の分節音を対象とし、理論、方法論、具体的事例を行き来しながら、このトピックに対する理解を深めていきます。
なお、この授業では音響分析の実習も行う予定です。Praat という音響分析ソフトウェアを用い、音響分析の手法も学んでいきます。

授業の工夫

この授業の履修者として想定しているのは,韓国語音声学・音韻論に関心を持っている学生と,韓国語をほとんど知らないが一般言語学的な音声学・音韻論に関心を持っている学生の両方である。

このような背景知識や関心の異なる二つのタイプの学生のどちらにとっても有意義な授業になるよう,この授業では工夫をしている。具体的には,一般言語学的な基礎知識,日本語の現象,類似する韓国語の現象という流れで授業を展開するようにし,この流れを繰り返しながら様々なタイプの音声的・音韻的現象を扱うようにしている。

それにより,韓国語学に関心を持つ学生が,韓国語学の枠組みを超えたより広い視点から韓国語の現象を捉えることを可能にするとともに,韓国語の知識を十分に持たない学生でも未知の言語の現象を理解できるようにしている。

目的・ねらい:

「音声研究」として総称される分野には、音声学と音韻論という二つの学問領域が含まれます。この授業では、音声学と音韻論の両方を射程に入れ、分節音をめぐる様々なトピックを学んでいきます。一般言語学的な理論と分析の枠組みをふまえつつ、具体的には日本語と韓国・朝鮮語の現象を扱います。韓国・朝鮮語を専門としない受講生にとっても有益な授業となることを目指します。

この授業のねらいは以下のとおりです

  • 音声学、音韻論、および両者のインターフェースについての理論についての基礎知識を身に着ける。
  • 韓国・朝鮮語にどのような音声学・音韻論上の研究課題があるかを理解する。
  • 日本語にどのような音声学・音韻論上の研究課題があるかを理解する。
  • 音声習得や音声教育に関する理論についての知識を身に着ける。
  • 韓国・朝鮮語母語話者に対する日本語教育、日本語母語話者に対する韓国・朝鮮語教育において、音声面でどのような課題があるかを理解する。

授業方法および計画

授業は教員による講義、受講生による発表(文献レビュー)、およびコンピュータを用いた分析実習から構成されます。
この授業で予定しているトピックは以下のとおりです。

  • 音響音声学の基礎
  • 日本語の撥音とその異音
  • 日本語の破裂音の VOT
  • 韓国・朝鮮語の平音の有声化
  • 日本語の連濁
  • 韓国・朝鮮語の사이 ㅅ(間の s)
  • 音声学と音韻論のインターフェースにおける理論的問題
  • 日本語母語話者に対する韓国・朝鮮語音声教育の課題

教科書

プリント配布

履修条件等

調音音声学と音韻論の基礎知識を有していること。基礎が不十分な場合は履修前に参考文献 1(斎藤 2006)および参考文献 2(窪薗 1999)を読んでおくこと。韓国・朝鮮語の学習経験は問いません。

参考文献

  1. 斎藤純男(2006)『日本語音声学入門』(改訂版)三省堂
  2. 窪薗晴夫(1999)『日本語の音声』岩波書店
  3. P. ラディフォギッド(1999)『音声学概説』大修館書店
  4. K. Johnson (2011) Acoustic and Auditory Phonetics (3rd edition). Chichester: Wiley-Blackwell
  5. R. ローレンス・G.J. ボーデン・K.S. ハリス 著,廣瀬肇 訳(2008)『新ことばの科学入門 第 2 版』医学書院
  6. E. フィシャ=ヨーアンセン 著、林栄一 監訳(1978)『音韻論総覧』大修館書店
  7. 신지영 (2014) 한국어의 말소리. 서울: 박이정
  8. 신지영, 차재은 (2003) 우리말 소리의 체계. 서울: 한국문화사
  9. J. Shin, J. Kiaer, & J. Cha (2012) The sounds of Korean. Cambridge: Cambridge University Press
  10. 野間秀樹 編(2007)『韓国語教育論講座 第 1 巻』くろしお出版

講義資料

第 2 回

音響・音学の基礎(1)・デジタル信号処理

第 3 回

音響・音学の基礎(2)・デジタル信号処理

第 4 回

音素と音韻論

第 13 回

母音の無声化

第 14 回

音声学と音韻論

成績評価の方法:

発表(40%)および学期末レポート(60%)により評価します。


投稿日

March 25, 2020