タンパク質の研究に行き着くまで

2009年度 退職記念講義

講師山根隆 教授
山根隆 教授
開講部局工学部/工学研究科
日時2010/3/12 13:30-
場所工学部2号館南館4階241講義室
山根隆 教授
講師山根隆 教授
開講部局工学部/工学研究科
日時2010/3/12 13:30-
場所工学部2号館南館4階241講義室

退職にあたって

1974年8月に名古屋大学工学部に赴任して来て以来、早いもので35年半が経過した。最初の15年は古めかしい工学部1号館でゆったりと過ごしたが、1991年に新設の生物機能工学科に移ってからは、工学部も東山キャンパスも時代の流れの中でかなり慌しくなった。1995年からは鏡が池横の新1号館に移ったが、名古屋の都心の高層化と競うように、東山キャンパスも古い建物の立替や改修が進み見違えるようになった。21世紀になってからも東山キャンパスは急速に整備されているが、緑地帯は保全されバランスの取れたキャンパスに生まれ変わろうとしているのは嬉しいことである。教育・研究で大学へ貢献したとは言いがたいが、多くの学生に取り囲まれ、世相の慌しさを横目によい時を過ごさせていただいたものだと感謝している。

4年一貫教育にカリキュラムが編成されて以降、全学教育科目の化学基礎を担当してきた。高等学校の物理に近い内容で、受講生も戸惑うことが多かったと思う。学生には化学という先入観にとらわれず、2,3年で必要となる基礎学力を養うという気概を持ってほしい。全体的に授業中静かなのはよいが、質問しても答える気力すら感じられないことが多く、最初は悩んだがその内諦めてしまった。そうなると、学生は正直なもので授業アンケートに反映される。色々と改善の試行錯誤を試みたが、満足のいく事態になる前に退職の時になってしまった。

最後に前・後期制の不満を一つ。現状では、1つの講義は1週間に1回行われる。従って、学生は1日に4科目、1週間に20科目程度も講義を受けることになり、前の週に習ったことは大方忘れてしまっている。1つの講義が1週間に2回行われ、学生は1週間に10科目程度を集中して受けるほうが、はるかに身につくと思われる。大学教育が注目され、多方面にわたる見直しが求められているが、三期制あるいは四期制を是非とも検討してもらいたい。教員にとっても、教育に集中する時は大変かもしれないが、研究に割ける期間は増えるはずである。

講師紹介

山根 隆(やまね・たかし)工学研究科教授

学歴

  • 1969年 大阪大学工学部 卒業
  • 1971年 大阪大学理学研究科修士課程 修了

職歴

  • 1972/09 大阪大学助手
  • 1974/08 名古屋大学助手
  • 1979/11 名古屋大学講師
  • 1986/07 名古屋大学助教授
  • 1996/04 名古屋大学教授
  • 2006/04 名古屋大学総長補佐、環境安全衛生管理室長

取得学位

  • 理学博士(大阪大学)
  • 理学修士(大阪大学)

専門分野

  • 構造生物化学

研究課題

  • アミノ酸の代謝に関係する酵素群の構造・機能の解析
  • タンパク質分解を制御するユビキチンリガーゼの構造と機能の解析
  • 糖質分解酵素の構造と機能の相関の研究

所属学会

  • 日本化学会
  • 日本結晶学会
  • 日本生化学会
  • 日本生物工学会
  • 日本放射光学会

講義ビデオ

タンパク質の研究に行き着くまで

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ビデオ中で以下の文献から引用を行っています。

  1. 山根隆・丹波祐輔・宮部優美子・塩生くらら・近藤和良・鈴木淳巨・小川智久・村本光二・中村裕彦・佐藤勝・吉崎泉・安宅光雄 (2004).

    微小重力のための動物レクチン(コンジェリン)の結晶化条件の精密化および結晶の評価

    日本マイクログラビティ応用学会誌, 21, (1), 52−62.

  2. M.Akira, A.Suzuki, T.Kobayashi, S.Ito and T.Yamane (2001).

    The first structure of pectate lyase belonging to polysaccharide lyase family 3.
    Acta Crystallogr., D57, 1786-1792.

  3. H. Ishida, T.Shirai, Y.Matsuda, Y.Kato, M.Ohno, T.Isaji and T.Yamane (2000).

    EmPLiCS: An empirical approach for structure-based design of natural peptide drugs.
    J.Biochem., 128, (4), 561-574.

  4. Taichi Kumanomidou, Tsunehiro Mizushima, Masaaki Komatsu, Atsuo Suzuki, Isei Tanida, Yu-shin Sou, Takashi Ueno, Eiki Kominami, Keiji Tanaka, Takashi Yamane (2006).

    The Crystal Structure of Human Atg4b, a Processing and Deconjugating Enzyme for Autophagosome-forming Modifiers.
    J.Mol.Biol., 355, (4), 612-618.

  5. Seiji Okazaki, Atuo Suzuki, Hidenobu Komeda, Shigenori Yamaguchi, Yasuhisa Asano and Takashi Yamane (2007).

    Crystal Structure and functional characterization of a D-stereospecific amino acid amidase from Ochrobactrum anthropi SV3, a new member of the penicillin-recognizing proteins.
    J.mol.biol., 368, (1), 79-91.

  6. Seiji Okazaki, Atuo Suzuki, Tsunehiro Mizushima, Hidenobu Komeda, Yasuhisa Asano and Takashi Yamane (2008).

    Cristal structures of D-amino acid amidase complexed with L-phenylalanine and L-phenylalanine amide: Insight into D-stereospecificity of D-amino acid amidase from Ochrobactrum anthropi SV3.
    Acta Crystallogr., D64, (3), 331-334.

  7. Seiji Okazaki, Atsuo Suzuki, Tsunehiro Mizushima, Takeshi Kwano, Hidenobu Komeda, Yasuhisa Asano and Takashi Yamane (2009)

    The novel structure of a pyridoxal-5'-phosphate-dependent fold-type�racemase, α-amino-ε-caprolactam racemase from Achromobacter obae.
    Biochemistry, 48, (5), 941-950.

講義資料

タンパク質の研究に行き着くまで

後輩へのメッセージ


投稿日

May 12, 2020