生産関数をめぐる研究の40年
経済学部/経済学研究科
根本二郎 教授
2022年度退職記念講義
大学の教育は、大学が先端的な研究を担うという重要な役割も担っているために、教授陣の先端的な研究を紹介するというのが、従来の形でした。学生たちは、高度で専門的な知識を吸収して、社会にそれを還元していく役割を担っていたわけです。経済学部・経済学研究科においても、経済学や経営学の最新の研究成果を講義に反映して授業を行っています。その一方で、大学進学率が高くなり、先端の専門分野の教育だけでなく、教養人として最低限知っておかなければならないことを多人数にシステマティックに、効率よく教育する形に変わってきています。また、学生のキャリア形成を支援するような講義も行っています。このように大学教育が変わりつつある状況で、現実の経済にかかわる「基礎的分析力」と「自主的探究力」を養成することを目的とし、人間の営みである経済活動について深い洞察を与える講義と演習を提供しています。
経済学部/経済学研究科長 清水 克俊 教授
経済学部・経済学研究科長の清水克俊教授に5つの質問に答えて頂きました。
1. 経済学部・経済学研究科の強み(醍醐味)を教えてください。
経済学部・経済学研究科の教員の先生方は経済・経営の幅広い分野を研究していらっしゃいます。最近では,経済学の分野では,企業の戦略的行動や市場のメカニズムをテーマとする産業組織の分野,日本や世界などのGDPや物価,利子率,金融政策などをテーマとするマクロ経済や金融の分野,所得格差や経済危機などの発生要因を制度経済学から分析する分野などで,特にクオリティの高い研究成果がえられております。また,経営学・会計学の分野では,自動車産業における部品メーカーと完成車メーカーの関係の分析であるとか,会計基準と会計実務についての研究分野などで,非常によい研究成果がえられているかと思います。
このように優れた研究を行う教員が,経済学・経営学の基礎科目・専門科目を基礎から分かりやすく丁寧に教えておりますので,経済や経営に関心のある方々にとっては,非常に興味深い授業を受講できると思います。
また,企業等から外部講師を招いた授業も多数あり,実体験に基づく現実的な企業の話や経済活動についての興味深い授業も行われています。
2. 経済学部・経済学研究科の学生に大学生活を通じてどんな風に育ってほしいですか。
4年間をかけて経済学・経営学をしっかりと学び,その成果をあげていただければと思っております。そのためには,経済学・経営学分野の大学生としてしかできないこと,やるべきことをしっかりと行っていただければと思っております。
たとえば,経済学・経営学は社会科学の一分野ですので,社会科学の古典,たとえばアダム・スミスの国富論や道徳感情論などの有名な古典を読んだことがあると言える学生になっていただければと思います。
また,経済や経営の専門知識や考え方を幅広く,また深く自分のものにして,現実の経済現象や企業行動の表面的な部分にとらわれず,「見きわめる目」を養っていただければと思います。
さらには,経済新聞や一般新聞・雑誌の経済記事などを読んだり,テレビのニュースを見たりしたときに,その内容が分かる,さらに,その記事の内容を他の人にわかりやすく説明できる学生になっていただければと思います。ご存じのように,新聞記事やニュースには,毎日,非常に多くの経済的な出来事が取り上げられていると思います。そうしたニュースの中には,非常に重要なことや,一般的にはそれほど重要ではないこともあります。どの記事の内容が重要なことなのかや,誰にとって重要なことなのかがわかるようになっていただければと思います。
3. 経済学部・経済学研究科のビジョンを教えてください。
経済学部では,教育・研究・社会貢献の各項目について,中長期的なビジョンを策定しております。
研究面では「デジタルデータ駆動型研究」の研究拠点として,成果をあげていくことを目標としております。「デジタルデータ駆動型研究」というのは,具体的には,経済や経営に関係する数量データ,経営・会計・財務に関する定性的な判断,歴史的な文書・史料をデジタル化したデータ等を含め,人文・社会科学的な大型データを対象とした研究のことを言います。ビッグ・データを用いて,分析することにより,企業や政府などの各分野においてデータに裏打ちされた意思決定を行うことを可能にするなど,新しいデジタル社会において多大な貢献ができると考えています。
4. 清水先生ご自身が学生だった時、印象的な授業はありましたか。
私が学部生であったのは今からおよそ30年前ですので今の授業とはだいぶ様子が異なっていたと思います。パソコンからスライドを表示する授業はなかったですし,ホワイトボードよりも黒板のある教室のほうが多かったと思います。
印象的という意味では,数学の授業で受講生が3名ぐらいしかいない授業を大きな教室でやっていたのが印象的でした。当時は暖房もあまり効いていなくて,寒い中,少人数で先生の講義をただ聴くだけの授業でした。
別の授業で,いつもにこにこしながら,元気のいい先生も印象的でした。その先生には授業で当てられましたが,ちょうど何か別のことを考えていて,質問が分からなかったのを思い出しました。
また大学院の授業では,数学的な最大化問題の解法を教わっているときに,「ここは適当にマイナスになるように式を書けばよい」と言われ,本当にそれでいいのかと疑問に思った授業も印象的でした。
あまり印象的な授業はなかったかもしれませんが,どの授業も今となっては懐かしい思い出で,こうしたちょっとしたことでも大学の授業というのは覚えていられるものだなと感心しています。そういう意味では印象的だったのだと思います。
5. 高校生(経済学部へ入学を希望している学生)へのメッセージをお願いします。
名古屋大学・経済学部は,1920年に名古屋高等商業学校として創立されまして,2020年に創立100周年を迎えました。
今の時代は,経済や企業のことが分かるということが誰にとっても重要な時代になっています。公認会計士などの資格をとることや,公務員試験を受けるなどの特別の目的がない方にとっても,経済や経営の基礎知識を知っておくことが大事な時代になっております。
皆さんには,ぜひ経済学部に入学していただき,私たちと一緒に新しい名古屋大学経済学部を築いていってほしいと思います。日本の経済や企業の未来は皆さんの手の中にあると思います。
(令和5年6月7日)
1980年に名大経済学部に赴任して33年間、教員として過ごしました。三重県(津市)の出身ですが、名古屋は初めてでした。専門は組織論です。当時、経営学の中で、組織論を専門とするのは、私1人だけでした。そのため、研究も教育も、自由にやらせてもらいました。私は、Organizationは、OrganizingとOrganizedからなると考え、組織学は、 Organizing(組織生成)の理論と ....
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名古屋市立大学での16年間の勤務の後、1999年名古屋大学に赴任し、14年間の歳月が立ちました。40代までは自分の人生の長さは無限のように思って生活していましたが、名古屋大学に来てからは、残り10年余の限られた貴重な時間の充実した研究・教育の場にしたいと思ってやってきました。このような思いもあって、大学院の重点化や大学の独立行政法人化とめまぐるしく大学改革が進む中で、落ち着いて研究・教育に専念 ....
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経済社会の成り立ちや動きを理解するためには、個々の構成員がどのような動機に基づいて各自の行動を選択しているか、またその意思決定がどのように相互連関しているのかを調べることが重要である。 ミクロ経済学は、行動の選択とその連関を分析し、経済社会の働きについて理解するための学問である。 本講義では、競争市場における需給均衡分析の理解を前提として、その他のミクロ経済学の基本事項を学ぶ。 ....
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本講義は、一国の経済活動全体を捉えるマクロ経済学について、その1つの考え方であるケインズ経済学からのマクロ理論の基礎的な部分を扱います。「現実の経済を理論的に捉える」とはどういうことであるかを学生のみなさんがより直感的に理解できるように、日本のマクロデータを適宜提示します。 ....
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本講義では、経営学の基本である環境適応について正しく理解することで、組織の中で自ら課題を発見し、解決ができる力 (自主的探求力) を育成する。前半では、外部環境と組織目標の関わりを中心に講義する。後半では、そうした組織目標の実現に必要とされる内部環境適応のための諸理論について詳説する。 ....
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私の大学生活を振り返ってみますと、最初は学問の基礎を学ぶ教養部の人文・社会と自然科学の勉強に始まりました。勉強をあまりしなかったということで、教養不足の自覚があったのを明確に覚えております。そのような経緯で、名古屋大学で教えるようになってからも、「教養部」という響きの故に敷居が高く感じられ、将来有る若者に悪い影響を与えては申し訳ないと思い、「基礎セミナー」のような各自の勉学の方向性に影響を与え ....
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本講義では、興味のある変数(例えば労働者の時給)を他の変数(例えば教育を受けた年数,仕事の経験,年齢,性別)で説明する「回帰モデル」に焦点をあて、その最も基本的な推定法である「最小二乗法」について学ぶ。また,この方法にもとづく統計的推測(例えば教育を長く受けるほど労働者の時給は上がるのか,男女間で労働者の時給に差はあるのか)の方法についても学ぶ。 ....
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確率変数と確率分布の考え方に基づいて母集団と標本の関係を理解し、一変量の統計的推測の方法を習得する。特に、母平均に関する推定と検定の問題を軸に講義を進める。 ....
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1968年に名古屋大学法学部に入学しました。大学紛争最盛期で、時代の雰囲気に影響され、思想への関心が急速に膨らみ、政治思想史のゼミナールに所属させていただきました。ついで、大学院経済学研究科に進学し、社会思想史を専攻しました。指導教官の水田洋先生は、日本を代表する思想史研究者であり、社会思想史学の確立のために尽力されていました。最先端の研究現場にいる喜びの中で、気づくと研究者の道を歩み始めてお ....
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前任校の佐賀大学を含めて計34年間に及んだ国立大学教員生活に終止符をうつことになりました。振り返れば頭の中を無数の場面が駆け巡りますが、ともかく研究、教育、大学運営など様々な任務を何とか大過なく果たせた (と言えるのか否かは皆様にお任せせねばなりませんが) のは、常にご支援を頂けたおかげであると感謝しています。会議の場で真剣に助言をくれた同僚教員、苦笑いしつつミスのしりぬぐいをしてくれた事務の ....
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最終講義の資料と映像は「講義資料」のタブでご覧いただけます。 ....
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金融論として扱うべき問題は、金融政策論と金融システム論に大別されるが、この講義は後者をカバーしている。経済学部2年生向けに講義している「金融システム」の成績優秀者を標準的な受講者と想定して、上級レベル(アメリカの有力大学のMBAレベル)の講義を行っている。この講義の目的は、金融市場の構造や金融機関経営について受講者の理解を深めることにある。とくに、金融システムや金融規制の特徴を、情報の経済学の基本 ....
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会計が企業経営にどのように貢献するかについて理解を深めることを講義の目的とする。はじめに財務諸表作成のための原価計算について説明する。そして、そうした原価計算が経営上の意思決定のどのように利用されるか説明し、マネジメント・コントロールなどにおける会計の役割とその有用性について説明していく。 ....
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計量経済学ではデータに基づいて経済を分析するための統計的方法を学ぶ.本講義では,「計量経済I」で習った単回帰モデル,重回帰モデルの基礎的知識をもつ者を対象に,その先の話題を解説する.具体的には,やや統計理論的な観点からの説明(ガウス・マルコフの定理など),標準的な仮定が成り立たない場合の回帰分析(不均一分散,系列相関), 回帰モデル以外のモデル(同時方程式モデル,時系列モデル)などを扱う.それによ ....
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名古屋大学に講師として赴任してほぼ35年になります。当時は高度成長真っ盛りであり、私の大学時代の友人の多くは銀行、商社など大企業に夢を託して就職していきました。大学院に進学することはめずらしい時代でした。やがてバブル期を迎え、これまで一部の経済学者の間で理想の体制と考えられていたソ連も崩壊しました。日本はその後、バブルの後遺症に苦しみ、世界的不況のあおりを受けて未だに苦境を脱せない状態にありま ....
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名古屋大学には、教員として36年、学生時代も含めると45年の長い期間通ったことになる。いろいろな先生の退職を見てきたが、いよいよ自分の順番になるといろいろな思いが浮かんできて、何となく感傷的な気分である。 この間で、思い出に残り関心が高かったのは、やはり研究分野の関連で、1971年のニクソンショック、1973年の第1次オイルショック、1979年の第2次オイルショック、1990年前後のバブル ....
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定年を1カ月後に控えて、はたと考え込んでしまった。何を書いたらいいのかと。2000年秋に名古屋大学の経済学研究科附属国際経済政策研究センター(当時、国際経済動態研究センター)に赴任して、それ以後は矢のように時間が過ぎた。 気づけば定年を迎えている。大学の法人化、所属センターの存続問題もあった。大学は地域社会への貢献は勿論、国際社会での競争に直接晒されるようになった。学年暦もそれほど遠くない将来 ....
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一橋大学に助手として2年、岡山大学に20年、そして2000年(平成12年)に名古屋大学に着任して12年を経て定年を迎えることになりました。 何か一言ということで思いついた言葉が「牛にひかれてイスタンブール」でした。「春風や牛にひかれて善光寺」という俳句のパロディーですが、思いがけないことが縁で偶然よい方向に導かれる、という意味のようです。 アジア会計学会(AAAA)の設立にかかわって、 ....
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