金融特論

講師齊藤誠 教授
開講部局経済学部/経済学研究科 2021年度前期
対象者経済学部3. 4年生・経済学研究科博士前期課程 (2単位週1回全15回)

授業の目的

本講義では、古今東西の通貨と信用の歴史を振り返る作業を踏まえて、現代の金融の諸課題(例えば、非常に攻撃的な量的金融緩和、暗号通貨の普及、金融危機の予防と対応など)を解明する視座を得ることを目的としています。

授業の到達目標

受講生が、金融史、経済史にかかわる理論的、実証的な研究を深いレベルで理解するとともに、そこから得た知見を現在の金融制度や金融行政、あるいは、金融政策へ応用できる能力を養います。

授業の工夫

この講義は、金融の人類史を先史や古代にまで遡って、あるいは、金融の未来の可能性を見通しながら、金融の本質をあぶり出すことを目的としています。なぜ、人類学・歴史学と金融論を組み合わせて講義をしようと思ったかというと、現代の複雑な金融だけを素材として金融論を講じていくと、金融の本質がかえって見えにくいというところがあるからです。むしろ、先史や古代の金融の仕組みを通じて金融のエッセンスが抽出していくことで、現在の暗号通貨の原理をかえって見通すことができます。受講生の学生や院生には、そうしたダイナミックな視点の移動を楽しんでもらいたいと思っています。

履修条件・注意事項

受講者が毎週、論文や参考書を精読しておくことを前提とする講義です。

参考書

デヴィッド・グレーバー「負債論:貨幣と暴力の5000年」(以文社)

スケジュール

1部 公共空間の信用 先史と古代の金融
  • 1回 物々交換の世界とは?
  • 2回 イネスの論文を読んでみよう
  • 3回 古代ギリシャと古代ローマの金融の世界をのぞいてみよう
  • 4回 古代ローマの金融の世界をのぞいてみよう
2部 公共空間から私的空間への引っ越し 中世の金融
  • 5回 宗教と金融
  • 6回 ヨーロッパ中世の銀行と預金
3部 日本の古代と中世における金融
  • 7回 古代日本、中世日本の金融
4部 通貨と信用の結婚と離婚
  • 8回 信用創造の拡大と崩壊
5部 金貨と銀貨の間の闘争
  • 9回 16世紀の「銀の世界」と19世紀の「金の世界」の結節点としての英国の金融政策
  • 10回 19世紀末から20世紀初頭の米国の金融政策論争
第6部 太平洋戦争における戦争ファイナンス
  • 11回 日本は、第2次世界大戦の戦費をどのように調達し、どのように返済したのか?
第7部 中央銀行と暗号通貨:通貨の過去、現在、そして未来
  • 12回 中央銀行が仲人の通貨と信用のお見合い
  • 13回 暗号通貨による通貨と信用の離別?

講義ノート

講義ビデオ

「第12回講義ビデオ」

成績評価

小テスト(40%)期末レポート(60%)

投稿日

August 20, 2021