基礎セミナーA-2017

講師江頭智宏 准教授
開講部局教養教育院 2017年度 前期
対象者文系・情(自然・コン)・理・農・工(化生・物工・マテ・電情・エネ) 1年生 (2単位週1回全15回)

授業の工夫

少人数の演習形式で、扱うべき内容も束縛されていない基礎セミナーが根底においてもつ役割は、とりわけ基礎セミナーAの場合、1 年生の春学期という大学にまだ不慣れで不安な時期に特に重要な仲間づくりにあると考えています。そのために受講生同士が相互交流できるような授業づくりを進めたことが本授業の最大の工夫のポイントです。

受講生同士が相互交流できる授業となるよう、初回の冒頭では、この授業は大学で学ぶうえで必要なスキルの基礎の修得に加えて受講生同士の相互交流を目的とするものであることを明確に伝えました。また、1 クラス当たりの受け入れ上限に当たる 3 名の附属高校生が参加されていたため、本基礎セミナーは高校生と大学生の学校種を超えた交流を目的とするものであることも同時に伝えました。実際にそうした交流の出発点となるよう、初回は自己紹介の時間をやや長めに取りました。加えて、授業担当者が意図したわけではありませんが、初回に 2016 年度の私の基礎セミナーAの受講生が「ボランティア」として自主的に顔を出されて昨年度の楽しかった思い出を話してくださったことも授業の雰囲気づくりとしては効果的だったと思います。

受講生同士の相互交流の機会となるべく、本授業ではゲームを多用し、計 5 コマはゲームの時間に当てました。もちろん学問的な内容に関するディスカッションも受講生同士の相互交流の機会となるものであり、本授業でもそうした交流も意図して実施しましたが、学問的な内容のディスカッションの場合はどうしても発言力に差が出てしまいますので(特に今回のような高校生も受講している場合はなおさらです)、相互交流という点ではゲームの方が適していると判断したからです。しかも、「若い女性と水夫ゲーム」および「NASA ゲーム」ではコンセンサスを図る必要から全員が発言せざるを得ず、「第一印象ゲーム」では全員が一度は主役になることから平等な発言の機会が保障されており、そして「水平思考ゲーム」でも何気ない思い付きのものであっても考えを出し続けることが解答に繋がりますので必然的に全員が発言されるように促されます。娯楽性が高いうえにグループ全員がある程度均等に発言し易いそうしたゲームを採用したことも効果的だったと思います。なお、ゲームのグループを編成する際には、意図的に高校生が同じグループにならないようにする(高校生は女子が 2 名で男子が 1 名であったため、2 グループ編成の場合は女子が同じグループにならないようしました)と共に、なるべく男女も偏らないように(受講者 13 名中、女子が 5 名で男子が 8 名でした)心掛けました。

加えて、講義概要のところでも書きましたが、ゲームを出発点として大学での学びの意義(価値観の多様性を認めること、思い込みや偏見に左右されないこと、他者との意見交流の重要性を理解することなど)や、大学で求められる力(柔軟な思考力や発想力)へと授業を展開させたことも、大学教育への導入教育を担っている本授業の工夫として挙げられます。

授業の目的

セミナーのテーマ:今日の学校教育問題についての考察を通した言語スキルの獲得

大学教育の導入科目として、今後大学で学習するうえで必要となる、読む、書く、聞く、話す、さらには発表する、討論するといった言語スキルを培うことに特に主眼を置いています。その際に、今日の学校教育問題を共通するテーマとして設定します。また、大学生活を過ごすうえで重要であると言える対人関係スキルの習得も合わせて狙いとしています。

講義概要

本授業は、大学で学ぶうえで必要なスキルの基礎の修得に加えて、受講生同士の相互交流を目的として実施しました。また、本授業には、附属学校から、基礎セミナーの 1 クラス当たりの受け入れの上限に当たる 3 名の附属高校生が参加しており、前年度の附属学校長から 3 名を受け入れている基礎セミナーは 2017 年度は本授業だけである旨を予め伺っていましたため、高校生と大学生の交流も授業の重要な柱としました。

授業内容は、オリエンテーションならびに自己紹介を行なった初回と、授業の感想の発表ならびに親睦会を行なった最終回のほか、4 つの領域に分かれます。

第 1 は、基礎セミナーの場で初めて出会う受講者同士の人間関係づくりを意図したゲームです。具体的には、コンセンサスゲームの代表格である「若い女性と水夫ゲーム」ならびに「NASA ゲーム」や、二択~四択の中から相手の好きなものを予想する「第一印象ゲーム」で、2 つないし 3 つのグループに分けて実施しました。基礎セミナーは大学教育における導入科目の役割を果たすことから、「若い女性と水夫ゲーム」の回には価値観の多様性を認めること、「第一印象ゲーム」の回には思い込みや偏見に左右されないこと、そして「NASA ゲーム」の回には他者との意見交流の重要性を理解することといったように、ゲームの内容を基にして大学での学びの役割についても簡単に話をしました。

第 2 は、大学での学びに求められる柔軟な思考力や発想力を涵養することを意図とした、ポール・スローンによって考案された「水平思考ゲーム」です。受講者を 3 つのグループに分けてグループ対抗形式で行いました。2 講目には、受講生の 1 人にいくつかの問題を持ってきて頂き授業担当者が解答者側に回るという機会も設けました。

第 3 は、ディスカッションです。ディスカッションが大学での学習方法の根幹の一つをなすことからその修得を意図して行ないました。ディスカッションのテーマは、授業担当者の専門が教育学であることに加えて、学部を越えて議論しやすい(加えて高校生にとっても議論しやすい)ことから学校教育とし、具体的には、いじめと道徳の教科化を取り上げました。なお、ディスカッションのための素材として、1 回目は一般的な文献を、2 回目は主張がそれぞれ異なる 4 つの新聞の社説を用いました。

第 4 は、各自が設定したテーマに従って調査・研究を進めていった成果についてのパワーポイントを用いたプレゼンテーション(大学生 17 分程度、高校生 12 分程度)です。自分自身で調査・研究を行なうことが大学での学びの基本であることから、その練習を意図して実施しました。授業担当者の専門の関係から、教育問題をテーマとして取り上げることを基本路線として提示しましたが、特に調査・研究したいことがある場合はその限りではなく自由に設定して頂きました。なお、各自の調査・研究に資することを目的として、4 講目には図書館における文献検索実習を図書館の職員の方に実施して頂きました。

教科書

特に指定しません。

参考書

特に指定しません。

講義ノート

成績評価

プレゼンテーション(40%),授業への取組状況およびディスカッションへの参加貢献度(60%)で評価します。

履修取り下げ制度を採用します。


投稿日

June 11, 2020