講師 | 安井浩樹 准教授, 阿部恵子 助教, 青松棟吉 助教 |
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開講部局 | 教育学部附属中・高等学校 2011年度 特別講義 |
対象者 | 附属高校1、2年生 |
私たち医療者は、様々な問題を抱える人々がそれを解決するための手伝いを日々行っています。そして、私たちが扱う問題は、人々の体や心に関係するものがほとんどです。しかし、体と心の問題がなければ、人々は健康であるといえるでしょうか?実は、医療というのは人々の問題の一部を扱うだけで目前の問題を解決するだけでは本当の解決にむすびつかない事が頻繁にあるのです。
今回は、まず私たちが日常に行っている診療の一連の流れを皆さんにも体験していただきたいと思います。その上で、患者と医療者の間に生じる問題に、どのように対応して行けばよいかを、一緒に考えていきましょう。
中津川プロジェクトでの授業を考える際に常に意識していたことは、「内容を高校生にあわせることはしない」ということでした。そのため、今回の「Clinicians at the crossroads」でも日常私たちが経験する診療場面を想定し、医学生に取り組んでもらってもおかしくない内容にするよう心がけました。また、2010 年度に初めて中津川プロジェクトで授業をした際に、高校生の皆さんが、医学書を読み込んで適切に情報を収集する能力を持っていることがわかりました。このため、教科書等の教材も、日本語版のみという制限はしたものの、世界的にも定評のある医学書を使用しました。
その反面、医学生とは基本的な医学的知識の量が異なるため、知識の多寡のみが決め手にならない課題を設定するように注意しました。授業内容を構成する際には、この課題のレベルと必要とされる知識量のバランスを取ることに、最も注意しました。
こうした観点に加え、医療が単に患者さんの病気だけでなく、その心理社会的背景にも配慮していることを伝えたいと考えたため、今回は医療倫理的な問題を検討する課題としました。さらに、実際に自分の手を動かして技術を習得する過程も体験してもらいたいと思い、腹部超音波検査のシミュレーション・トレーニングも行いました。
授業を振り返ってみると、生徒の皆さんは熱心に課題に取り組んでくれたと感じています。ただ、医療倫理を検討するセッションと、シミュレーション・トレーニングを行うセッションのつながりがあまりよくなかったため、2つのセッション間の移行が唐突な感じになってしまったかと、反省しています。今後も機会があれば、こうした点を改善し、参加者の皆さんに医療の実際を知ってもらい、かつ日常にも応用しうる問題解決の方法をお伝えできればと考えます。
May 16, 2020