先端分野総合研究(外国人と法)-2011

course
講師小畑郁 教授
開講部局法学部/法学研究科 2011年度 前期
対象者法学研究科実務法曹養成専攻(法科大学院) (2単位週1回全15回)

講義概要

  1. 現代日本における外国人に対する法政策は、第 2 次世界大戦後の東アジアの国際状況を背景に形成されてきたものであるが、近年グローバル化と日本社会の少子高齢化の影響を受けて変容を遂げつつある。この状況を把握し、対応を考えることは、これからの法律家にとって極めて重要な課題である。
  2. 主として公法・国際法の法的基礎知識を前提に、それが外国人の分野にどのように適用されてきたかを考察する。
  3. とくに入管難民法の分野において、具体的問題を取り上げながら、その法的構造について考える。

授業の工夫

外国人をめぐる法と政策は、法科大学院の1、2年次の授業では、 十分な知識が提供されているとは言い難い。しかし、一方で、この問 題は、現代日本社会の今後のあり方にとって、一つの焦点となってい るものであり、その変動の状況と要因を学ぶことは、法律家にとって ますます重要となりつつある。他方、この分野は、法律基本科目で提 供されている知識を、ごく先端的な分野で発展・応用することができ るかどうかを試すための、格好の素材を提供している。

授業では、このようなことを踏まえ、国際法担当の研究者教員がコ ーディネータ兼大部分の講義の担当者となって基幹的知識を提供する とともに、他の法律分野および外国人政策の研究者教員、ならびに実 務家の参加を得て、多方面から光を当てることとしている。

現実にどのような問題が生じているか、問題の具体的側面を意識し ながら、法理論の立場からはどう考えればよいのか、を常に考えられ るよう工夫をしたつもりである。

また、時間の制約もあるが、可能な限り発問をして双方向の講義と なるよう努めた。

到達目標

  1. 日本における外国人の状況は、法の眼でみるとどのように見ることができるのか、その全体的動向を把握し、背景を理解する。
  2. 入管法をめぐる主要問題について、実務的側面を含む基礎的知識を修得し、 入管法の構造について問題意識をもつ。
  3. 入管法を変動させる重要な要因となっている国際法的規制について、それら の内容と性格、日本法における適用状況についての基礎知識を修得する。
  4. 外国人法政策をめぐる最近の議論とその背景について基礎知識をもち、今後 の変動に対応できる問題意識をもつ。
  5. 入管難民法についての調査について基礎を修得する。

教科書

松井芳郎ほか編『ベーシック条約集』2011 年版または 2010 年版(東信堂)

※講義に携帯してくること。

参考書・参考資料

  • 山田鐐一・黒木忠正『よく分かる入管法〔第 2 版〕』(有斐閣、2010 年)
  • 薬師寺公夫ほか『法科大学院ケースブック国際人権法』(日本評論社、2006 年)
  • 「日本の国際法判例」研究会(第 2 期)「解説・日本の国際法判例(1)~(5)」国際法外交雑誌 106 巻 1 号、4 号、107 巻 4 号、108 巻 4 号、109 巻 4 号
  • 松井芳郎ほか編『国際人権条約・宣言集〔第 3 版〕』(東信堂、2005 年)

その他、適宜指示する。

履修条件

法科大学院「国際法 II」ないしそれに相当する法学部科目を履修済みであることが望ましい。

授業時間外の学習活動

第 1 回

リンクにある外国人登録法、入管法のテキスト(後者は条約集にもあり)を参照し、関連条文および入管法別表の在留資格に対応する活動・身分を調べておく。 資料にある外国人統計を見て、予備的検討を加えておく。

第 3 回

2009 年改正後(未施行)の特別永住制度について、レジュメとリンクにある法文を参照し、その内容を確認しておく。 年表を参照し、歴史的経緯について疑問点を整理しておく。

第 4 回

新たに導入された中長期外国人の在留管理制度(在留カードと住民票)について外国人登録制度と比較しておく。 退去強制手続の流れを条文により確認しておく。

第 5 回

難民条約が難民に何を保障し、何を保障していないか、条約のテキストを確認する。 難民条約上の難民の定義について条文テキストを確認し ておく。

第 6 回

レジュメに即して、難民にかかわる入管法の規定を確認しておく。 難民認定の意義に関する名古屋地判 2004・4・15 に目を通しておく。

第 7 回

レジュメに即して、条約の各条文を確認しておく。 ゼーリング事件、キンドラー事件について資料を読んでおく。 入管法 53 条 3 項を検討しておく。

第 8 回

崔善愛事件・福岡高判 1994・5・13 の概要を確認しておく。 レジュメに挙げられた条約の条文を確認しておく。

第 9 回

東京地判 2008・1・17(カルデロン事件)、福岡高判 2005・3・7 および東京地判 2007・8・28 を検討しておく。 関連条約規定を確認しておく。在留特別許可に関する資料に目を通しておく。

スケジュール

(第2、10—14回は担当外の為、掲載しておりません)

講義内容
1

オリエンテーションおよび日本の外国人

  • 講義全般についてオリエンテーションを行う。
  • 外国人登録制度および在留資格について、ごく基礎的な知識を修得する。
  • 在留資格別外国人統計を見て、日本の外国人の動向についてその概要を把握し、その背景を考える。
3

在日コリアンの歴史と法

  • 在日コリアン・コミュニティーの生成と展開について基礎的知識を得る。
  • 日本在留の根拠がどのように変遷してきたかについて基礎的知識を得る。
  • 特別永住制度の概要を理解する。
  • 在日コリアンの法的地位について、どのような問題があるかを理解し、議論できるようになる。
4

在留管理の仕組みと退去強制制度

  • 在留資格制度について基本的知識を確認する。
  • 中長期外国人の在留管理制度(2012年施行)について基本的知識を修得する。
  • 退去強制制度について基本的知識を修得し、その問題点を議論できるようになる。
5

難民の国際法と日本法(その1)

  • 難民の国際法について基本的知識を修得する。
  • 難民現象とはどのようなものであり、どうして国際的対応が必要とされたのか、ということについて知識を修得し、そこから現代の難民法についてその問題点を議論できるようになる。
6

難民の国際法と日本法(その2)

  • 難民に関する日本法について、基本的知識を修得する。
  • 判例による難民の概念の問題点を理解する。
  • 難民認定手続および申請中・申請後の難民の地位について基本的知識を修得する。
  • 日本の難民法の問題点について、議論できるようになる。
7

ノン・ルフールマン原則とその実施

  • ノン・ルフールマン原則(意訳すれば人権侵害の防止のための追放・送還禁止の原則)の規範の多様な存在形態について理解する。
  • 同原則をめぐる主な問題点について基礎的知識を修得する。
  • 同原則の日本法における実施状況について、問題状況を把握する。
8

国際人権法による在留保証(1)

  • マクリーン判決の法理を再確認する。
  • 「自国」に戻る権利という概念によって、一定の範囲の外国人の在留が保障されることを理解する。
  • 「自国」の範囲をめぐる国際判例・実行と国内判例の立場を理解する。
  • 私生活・家族生活の尊重を受ける権利と外国人の在留保障についての国際判例の動向を理解する。
9

国際人権法による在留保証(2)

  • (家族)生活の尊重の要請から導かれる在留保障についての国内判例の動向、および関連する在留特別許可の実行について、基礎知識を修得する。
  • 退去強制手続を統制する国際人権法基準を理解し、日本の手続について問題意識をもつ。
15

まとめ

  • 必要に応じ、最終レポート作成についての相談に応じる。成績評価後、評価などについての個別面談に応じる。

講義ノート

第 1 回

第 3 回

第 4 回

第 5 回

第 6 回

第 7 回

第 8 回

第 9 回

成績評価方法

  • 課題への回答、講義での受け応え等の平常点 50%
  • 最終レポート 50%

投稿日

May 10, 2020