講師 | 渡辺美樹 准教授 |
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開講部局 | 文学部/国際言語文化研究科 2011年度 前期 |
対象者 | 国際言語文化研究科 日本言語文化専攻 (2単位・週1回全15回) |
文学作品は文学的伝統の中で作られていくが、そうした文学作品の伝統的な素材の一つに「食の文化」がある。今回はその中から「拒食」をモチーフとした文学作品を幾つか取り上げて比較考察していきたい。
教材と資料の提示について
教材は、短いものはコピーで長いものは本を貸し出す方式で用意した。必ず文学作品と批評理論もしくは論文をセットにして用いた。音声資料も用いたが、その他の資料については授業中に回覧するという形を取った。宮沢賢治の作品については、非常に沢山ある絵本を作品解釈の多様性を示す材料として使用した。
講義方法について
講義形式で授業を行ったので、開始時には必ず今日の課題について意見等を聞くようにし、一つの作品が終わった後でディスカッションできるように時間を取る等した。
拒食症という精神的な病の本質について最初に考えたうえで、下記のような文学作品に目を通していきたい。英米文学も取り扱う予定であるが、英語が読めなくてもわかるように、日本語の翻訳をこちらで用意する。
イントロダクションおよびターム・ペーパーの書き方
拒食症の歴史とその定義
民話における食と不食
ハンガーストライキとしての拒食:『オルノーコ』と『ディアドーレ』
宗教的な動機による拒食:『源氏物語』『クラリッサ』『わが屍は野に捨てよ』
失恋からの拒食:『分別と多感』
家父長制に対する反乱としての拒食:『ジェイン・エア』と『シャーリー』
魂の転生としての拒食:『嵐が丘』と『トァン・マッカラル』
食物連鎖拒否の拒食:『よだかの星』
アイデンティティの喪失と拒食:『食べられる女』
異食症としての拒食:『ドラキュラ』と『屍鬼』
なし
なし
授業中に指示する。
ワルター・ヴァンダーエイケン,ロン・ヴァン・デート共著,野上芳美訳『拒食の文化史』,青土社,1997 年.
アンソニー・ギデンズ,松尾精文他訳『社会学 改訂第 3 版』,而立書房,1992 年.
スーザン・ボルド「痩身読解」,『ボディー・ポリティクス:女と科学言説』所収,世界思想社,2003 年.
柳田国男『遠野物語;山の人生』,岩波書店,1976 年.
『宮沢賢治 第 9 号』(「よだかの星」特集),洋々社,1989 年.
橋本治『窯変源氏物語』,中央公論社,1991-93 年.
五来重「『食わず女房』と女の家」,『天狗と山姥』所収,河出書房新社,2000 年.
小田晋『日本の狂気誌』,思索社,1980 年.
クリスタ・グレンジャー著,元木幸一,青野純子訳『女を描く:ヨーロッパ中世末期からルネサンスの美術に見る女のイメージ』,三元社,2003 年.
中岡洋,内田能嗣共編著『ブロンデ姉妹の時空:三大作品の再評価』,北星堂書店,1997 年.
廣野由美子『「嵐が丘」の謎を解く』,創元社,2001 年.
川口喬一『「嵐が丘」を読む:ポストコロニアル批判から「鬼丸物語」まで』,みすず書房,2007 年年.
「昼の少年と夜の少女」,『ジョージ・マクドナルド全集 8』,太平出版社,1978 年.
齋藤環『母は娘の人生を左右する:母殺しはなぜ難しいのか』,NHK ブックス,2008 年.
野村美月『“文学少女”と神に臨む作家(ロマンシエ)上』,ファミ通文庫,2008 年.
宮沢賢治「よだかの星」,『宮沢賢治全集 5』,ちくま文庫.
『源氏物語』「宇治十帖」総角,『新編日本古典文学全集 24』.
柳田国男「飯喰わぬ女房」,『日本の昔話』,新潮文庫.
『徒然草』40 段,『新編日本古典文学全集 44』.
小林秀雄「無常ということ」,『小林秀雄全集 6』,新潮社.
クリスティナ・ロセッティ「ゴブリン・マーケット」,『世界幻想文学大系 35』,国書刊行会.
Goblin Market : the prince's progress and other poems, Oxford U.V.P.
エミリ・ブロンテ『嵐が丘』,『ブロンテ全集 7』,みすず書房.
Wuthering Heights, Norton Critical Editions.
野村美月『"文学少女"と飢え渇く幽霊(ゴースト)』,ファミ通文庫.
Sharon Smulders, Christina Rossetti revisited , Twayne Publishers, 1996.
Eijun Senaha, Sex, drugs, and madness in poetry from William Blake to Christina Rossetti: woman's pain, woman pleasure , Mellen University Press, 1996.
Katherine Frank, A chainless Soul: A Life of Emily Bronte , Houghton Mifflin, 1990.
Richard Gordon, Eating Disorder: anatony of a Social Epidemic , Blackwell, 1990.
毎回出される課題は、授業中に読むことになっている文学作品や論文を精読してくること。その中には要旨をいうことができるということが含まれる。
拒食症という精神的な病の本質について最初に考えたうえで、下記のような文学作品に目を通していきたい。
英米文学も取り扱う予定であるが、英語が読めなくてもわかるように、日本語の翻訳をこちらで用意する。
授業説明を行った時に、日本文化の研究を必要とする留学生が混じっていたので、シラバス上で扱う予定であった文学作品をなるべく日本のものに切り替え、内容を見直した。
回 | 講義内容 |
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1 | イントロダクションおよびタームペーパーの書き方 |
2 | 拒食症の歴史とその定義について |
3 | |
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5 | 宮沢賢治 「よだかの星」 |
6 | 『源氏物語』「宇治十帖」総角 |
7 | 「飯喰わぬ女房」 |
8 | |
9 | 『徒然草』40段 小林秀雄「無常ということ」 |
10 | クリスティナ・ロセッティ「ゴブリン・マーケット」 |
11 | エミリ・ブロンテ『嵐が丘』 |
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13 | 野村美月『"文学少女"と飢え渇く幽霊(ゴースト)』 |
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15 | まとめ |
課題(20%)とターム・ペーパー(80%)で評価する。
May 08, 2020