ジェンダーとセクシュアリティ-2011

講師松下千雅子 准教授
開講部局文学部/国際言語文化研究科 2011年度 通年
対象者国際言語文化研究科 国際多元文化専攻 (4単位週1回全30回)

授業の内容

父、母、子という三角関係によって成り立つファミリー・ロマンスは、どのようにして生まれたのか?なぜ、父、母、子でなければならないのか?そこに存在する法則とは何か?これらの問題を考えるために、授業では、まずレヴィ=ストロースによる家族構造の考察と、精神分析理論における父、母、子の関係を紹介する。その後で、ファミリー・ロマンスの解体に向けて、脱構築と言説理論およびクィア理論の可能性をそれぞれ模索する。そうすることにより、脱ファミリー・ロマンス後の家族像を、新たに「クィア・ファミリー」として提示し、その可能性を考えてみたい。

授業の工夫

学生には自分の意見を持って欲しいので、発表者には文献の正確な読みとともに、必ず自分なりの反論や問題点を挙げてもらうようにしている。授業では、ディスカッションの時間を多くとり、受講者が自分の意見を言いやすい環境を作ることを心がけている。理論の説明および参考文献の紹介と、ディスカッションの方向付けや軌道修正が、授業での私の主な役割である。

学習成果

後期末に課題2として提出された論文が、加筆修正を経て、研究雑誌に掲載された。

  • 高橋すみれ「やおい化する視線、その戦略にむけて—『DEATH NOTE』同人漫画を例に」 『女性学年報』26 号

本講座の目的およびねらい

ジェンダー論、精神分析理論、脱構築理論の基本的な文献を批評的に読む能力を養いながら、規範的な家族像の解体に向けて私たちにできることを模索する。

授業の位置づけ

この授業は、ジェンダー論を学ぶ大学院生を主な対象として開講している。

教科書

授業で読む文献はすべてコースパックに入っている。院生室に一部置いておくので、受講者はそれをコピーする。

参考書

スケジュールのページを参照。

課題

受講者は、夏休みに自由研究リサーチを行い、授業で学んだ理論を分析ツールとして各自が選んだ題材を分析する。この自由研究は後期末までに論文の形で完成させて提出する。日本語で 8000 字以上。

課題 1:夏休みに行う自由研究について、以下のことを A4 一枚に書いて第 15 回目の授業で発表すること

  1. 研究課題(何を研究するか)
  2. 研究する理由(なぜそれを研究しようと思うか)
  3. 研究内容(何をどこまで明らかにしたいか)
  4. 研究方法(夏休みの間にどのようなリサーチを行うか)

課題 2:夏休みに行ったリサーチに基づいて、日本語で 8000 字以上の論文を書き、後期末に提出すること

スケジュール

各文献についてあらかじめ担当者を決めておき、授業時にレポートしてもらう。発表後は発表者の配るハンドアウトに基づいてディスカッションを行う。発表者はディスカッションのトピックも用意する。

講義内容(前期分)
1 イントロダクション
2 エンゲルス『家族・私有財産・国家の起源』(抜粋)
3 フロイト『トーテムとタブー』
4 レヴィ=ストロース『親族の基本構造』(抜粋)
5 フロイト『性欲論三篇』
6 ルービン「女たちによる交通」
7 セジウィック『男同士の絆』(抜粋)
8 リッチ「強制的異性愛とレズビアン存在」
9 バトラー『アンティゴネーの主張』(抜粋)
10 ベンジャミン『愛の拘束』(抜粋)
ギャロップ『ラカンを読む』(抜粋)
11 バトラー『ジェンダー・トラブル』(抜粋)
12 フーコー『性の歴史』
13 バトラー『触発する言葉』(抜粋)
14 セジウィック『クローゼットの認識論』(抜粋)
15 夏休みに行う自由研究のテーマを発表

講義ノート

講義は学生のハンドアウトに基づいて行う。

第 1 回 講義ノート

第 15 回 講義ノート:課題1

成績評価の方法

授業時の発表内容と、年度末に提出する論文とで評価する。


投稿日

April 19, 2020