心理行動科学実験演習9(観察法)-2011

course
講師中谷素之 教授
開講部局教育学部/教育発達科学研究科 2011年度 前期
対象者教育学部2年生以上 3年時編入生、研究生、大学院前期課程院生も履修可能 (2単位隔週8回全15コマ)

授業の内容

心理学・行動科学の主要な研究方法のひとつである、行動観察法について、学校での実際の授業場面の観察を実施し、発話・行動データを収集し、データのコード化、整理、検討を行いながら、体験的に学習する。単に、日常的に見たり聴いたりする、いうこと以上に、人間の行動を客観的、科学的にアプローチする方法である、心理学研究法としての観察法を学ぶことを目的とする。

授業の工夫

現在進行形の教育事象を観察する

  • 実際の教育現場で、どのような社会的相互作用やコミュニケーション、学習指導がなされているかを観察することで、現実の教育場面に即した研究方法に触れ、教育心理学研究への関心を喚起している。単にテキストや専門書等からの知識だけではない、生きた教育心理学的研究を学ぶ。
  • 小学校・中学校・高校など異なる学校段階の、異なる授業科目を観察することで、さまざまな発達段階や学習過程にある子どもへの教育について考える機会をもつ。そしてこれらの現在進行形の授業場面の自然観察を行うことで、心理学研究として教育事象をとらえることの難しさと面白さについても考察する機会を提供する。

少人数による学習の工夫

  • 授業は 25 名以内の少人数の演習形式で行う。受講生の関心も踏まえ、1グループを4〜5名で構成する。受講生相互のコミュニケーションを尊重し、テーマ設定や分析方法についても、受講生の意見や考えを重視する。
  • 少人数による授業のため、受講生どうしのディスカッションや教員や TA からの助言、コメント等、丁寧な教育・指導に配慮している。

TA によるサポート

  • 授業には TA が3名つき、授業の進行、授業観察の準備および実施、データ整理や分析、結果と考察のまとめ方等、全般に渡って受講生の学習をサポートする体制を取っている。E メールなども使い、きめ細かい指導、支援に努めている。

教育心理学研究への関心を引き出す

  • 授業場面の観察を行うことで、自身の受けた教育経験への振り返りや再構成を促し、今後の学校教育への問題意識を喚起する。各グループの研究テーマの論理性や独自性、意義を検討することで、教育場面を心理学的に研究することの意味や重要性について考える機会をもつ。

教育現場への寄与を重視する

  • 授業観察に協力頂いた学校および教員に対して、どのような目的で観察研究を行い、どのような結果が得られ、それは教育実践にどう意味づけられるのかについて、グループごとに詳細なフィードバックを行い、教育現場への心理学研究の寄与を考える。

講義概要

われわれは日頃相手の表情を見たり、行動を解釈することによって、その人の心理状態を推測しており、ある意味では、人はみな日々の生活のなかで素朴な観察を行っているといえる。しかし心理学の研究方法である観察法は、単に目で見て判断するということ以上の、科学的研究としての方法論に基づいている。

本授業では、観察法という研究方法の基本と、観察によるデータの収集および分析の方法について、受講者が実際に経験しながら学んでゆく。

到達目標

人間の行動・心理を観察によって測定するとはどういうことかという基本的な考え方を理解する。行動観察データの収集と分析、およびレポート作成を通して、観察法による研究の一端を体験的に学ぶ。

授業形態

  • 授業は基本的にグループ単位で行う。
  • 授業には、TA として大学院生(後期課程)2 名が支援する。
  • 基礎編では、担当するグループを決め、その発表を受けて全体で議論する。
  • 実習編では、グループごとにテーマを設定し、授業観察を行い、データを起こし、整理・カテゴリ化し、レポートにまとめるという一連のプロセスを行う。
  • 授業評価は、授業への取り組みとレジメおよび発表内容等を総合的に評価する。

授業内容

  1. 観察法の基礎
  2. グループでのテーマ討論・設定
  3. 授業観察(ノートのみ)(ビデオ・IC レコーダ)
  4. データ起こし・整理・検討
  5. レポート作成
  6. 最終グループ発表

教科書

指定しない。

その他の注意

開講週は基本的に隔週とするが、授業の構成および進行により変更する場合がある。また、学校現場への参与観察実習を行うため、開講時間以外にも時間が必要である。心理学的な観点から、教育現場の理解や改善の関心の高い学生を歓迎する。

参考書・参考資料

  • 中澤潤・南博文・大野木裕明 編著 1997 心理学マニュアル 観察法 北大路書房
  • 秋田喜代美・藤江康彦・能智正博編 2007 はじめての質的研究法 教育・学習編 東京図書

そのほか必要な資料については、適宜授業時に配布する。参考書・参考文献についても授業内で紹介する。

課題

各授業ごとの課題および準備 (PDF 文書, 42KB)

スケジュール

講義内容
1 授業ガイダンス
- 授業概要の説明
- 受講に当たっての注意等
2 観察法の基礎
- 心理学研究法としての観察法の特徴
- グループ分け、グループミーティング
3 観察テーマの討論
- 観察法入門
- 観察テーマの設定に関するグループミーティング
4 観察法実習Ⅰ
- 小学校算数での少人数授業観察実習(1) (ノート・ビデオ・レコーダ)
5 観察法実習Ⅱ
- 小学校算数での少人数授業観察実習(2) (ノート・ビデオ・レコーダ)
6 観察法実習Ⅲ
- 中学校理科・高校国語での授業観察実習(1) (ノート・ビデオ・レコーダ)
7 観察法実習Ⅳ
- 中学数学・高校数学での授業観察実習(1) (ノート・ビデオ・レコーダ)
8 観察データの分析Ⅰ
- 授業観察データの文字起こしと整理
- 発話・行動データのチェック・確認
9 観察データの分析Ⅱ
- 授業観察データの文字起こしと整理
- 発話・行動データのチェック・確認
10 観察データの分析Ⅲ
- 授業観察データのグループごとの統合と検討
11 レポート作成と発表Ⅰ
- 観察データに基づく研究課題の発表・検討(1) 基礎的分析編
12 レポート作成と発表Ⅱ
- 観察データに基づく研究課題の発表・検討(2) 実践的分析編
13 レポート作成と発表Ⅱ
- 観察データに基づく研究課題の発表・検討(3) 応用的分析編
14 最終発表
- 各グループの研究課題の発表と討論
- 研究テーマのオリジナリティや意義、課題の検討
15 協力校へのフィードバック
- 授業観察に協力頂いた学校および教員に向けた、研究結果の報告

講義ノート

第 2 回

最終回

成績評価方法

授業への関与度(小レポート、ディスカッション、発表等:50%)および最終レポート(50%)


投稿日

March 25, 2020