基礎セミナー図書館情報リテラシー:図書館と情報を使いこなす-2005

講師逸村裕 准教授
開講部局教養教育院 2005年度 前期
対象者文系学部情報文化学部 (自然)理学部工学部 (I、IV、V、III系)農学部 (2単位週1回全15回)

授業の内容

大学生となって、身につけるべき情報リテラシーには多くのものがあります。名古屋大学では「情報リテラシー」という科目を文系・理系それぞれに開講しています。この基礎セミナー A では数ある情報リテラシーの中でも、図書館情報学のアプローチから文献と情報の探索、図書館の利用方法、情報のまとめ方とプレゼンテーションに重点をおきます。また少人数かつ文理融合という特性を存分に生かした内容とします。

授業の工夫

大学の授業が高校までの授業と異なること、それは問題解決に至る多くのプロセスの理解と明快な美しい回答を目指す泥くさい手法の多様さです。回答は一つだけとは限りません。時に回答が存在しない場合もあります。それも回答の一種です。先人が積み上げてきた膨大が学術資産を紐解き、そこにわずかでも自らの上乗せを試みる。それが知的営為です。

情報源の理解

インターネットとサーチエンジンの普及により、情報源は急速にデジタル化しています。その利用法もまた変化し、また変わり続けています。

ピーターライマンによると 2002 年一年間に新たに生産された情報量は 5 exabytes (エクサバイト) になります。この量は世界最大の図書館である米国議会図書館 37,000 館分に相当します。そしてその大半はデジタル化された情報です。

http://www.sims.berkeley.edu/research/projects/how-much-info-2003

一方、図書を中心とする「紙」資料も 2004 年には新刊発行点数が日本だけで 7 万点を数えました。そしてそれ以上の金額の雑誌や新聞が世に流通しています。

名古屋大学附属図書館その機能

名古屋大学には 30 ほどの図書館があり、図書だけで 300 万冊の蔵書があります。これに雑誌や新聞、さらに電子ジャーナルといった情報源があります。

図書館は本来、膨大な知的資産を収集し、保存して後代に継承する役割があります。その一方で「情報源の組織化」により、情報を探し出せる仕組みを作成してきました。これにより、大学図書館は教育と研究の一助を担ってきたわけです。

インターネットが普及し、ネットワーク上に多くの情報が登場した今日でも図書館の役割は変わりません。むしろ玉石混交のネットワーク情報源に対し、真正な情報を提供するフィルター機能を図書館は強く担うことになります。

学生にとっての図書館

こういった図書館の機能を理解し、フルに活用するためには学生がある程度の知識技能を身につける必要があります。もちろん図書館は情報を探すだけではなく、「場」としての機能もあります。図書館内には無線 LAN により、PC を利用できる場所もあります。多様な情報源を使いこなし、快適な学生生活を送るための一助となるようこの基礎セミナーでは実習を含めた内容を用意しています。

図書館の利用方法を覚えるとちょっと得をする

図書館は世界中にあまねく存在します。そこには一般向けの公共図書館から専門情報提供の図書館までさまざまなものがあります。この授業では名古屋アメリカンセンターの協力を得て、その一端に触れる機会を設けます。

ディスカッション

図書館と情報の利用法をある程度こなした次の段階では問題解決とそのプレゼンテーションに力をいれます。自分で調べ、まとめ考えた内容を他の学生に理解してもらう。ここまで到達してこその情報リテラシーの世界です。

より高みに

情報の利活用はどの大学だけでなく、社会に出てもあるいは人生を送る上でも豊かな実りをもたらします。その一助となることを目指しています。

学習成果

授業の目標

少人数のセミナーという授業形態のなかで,大学生として自立した学習を行なうために必要な,「読む」「書く」「話す」という能力を身に付け,特定のテーマについて学問的に考えることの面白さと,そのために必要な方法を学びます。具体的には図書館の利用、情報探索と情報源の評価、発想法、プレゼンテーションを修得目標にします。

授業の位置づけ

この授業は全学教育科目の中の「基礎セミナー」の一つになります。特に図書館と情報源に関心のある学生向けです。

クラス内の方針

清く正しくしなやかに。

教科書

特定の教科書は使用しません。

参考書

適宜授業時に指示します。

教員紹介

名古屋大学附属図書館研究開発室助教授の逸村裕が担当します。研究室は中央図書館三階にあります。私の専門領域は図書館情報学です。図書館、情報利用行動、学術情報の流通と、組織化といったところに関心があります。附属図書館研究開発室では「ハイブリッドライブラリーの開発と高度化」を主に活動しています。

参照 : http://libst.nul.nagoya-u.ac.jp/

スケジュール

講義内容
1 オリエンテーション
− 教員/TA 紹介
− 自己紹介
− 授業のやり方
2 プレゼンテーションとは
− 課題 1 をもとにディスカッション
− ゼミ生名簿作成
3 情報とは
− 図書館で情報を探す
4 情報基地への招待
− 著作権
5 情報検索とは
− 情報源
− 人による情報提供
6 情報基地への招待 (まとめ)
− 情報リテラシー
− 情報源と探し方
− レファレンスサービス
7 日本の学術情報流通
− 文献探索の基礎
− 情報検索の基礎
8 最終課題の説明
− プレゼンテーション 1 準備
9 プレゼンテーション 1
− 自己紹介をパワーポイントを用いて行う
10 学外実習
− アメリカンセンター訪問
11 学内実習
− 中央図書館参考調査掛
12 情報検索実験
13 情報検索実験評価
− 最終課題準備
14 最終課題プレゼンテーションとディスカッション 1
15 最終プレゼンテーションとディスカッション 1

講義ノート

課題

課題 1 0411 提示 0418 回収
中央図書館四階の展示「地域環境史を考える」を見る。以下の二点について各自メモを作る。

  1. この展示を見て感じたこと・考えたこと
  2. 情報源としての電子図書館の機能とは

課題 2 0418 提示 0425 メールにより提出
大学に入って

  1. 驚いたこと
  2. 面白いと感じること
  3. 新しく始めたこと

課題 3 0425 提示 0502 メールで提出

  1. 『三四郎』第一章から「現在とは異なる風習」を列挙する
  2. 何故、その風習がなくなったのか

課題 4 0502 提示 0529 メールで提出

  1. 情報検索に関連する重要な概念・用語をリストアップし,その意味を調べる。
  2. その典拠を記す

課題 5 0516 提示 0523 メールで提出

  1. 配布資料に掲載してある資料の所蔵状況を調べる。請求記号もしくは所蔵を記す。
    中央館 > 部局 > 他大学図書館
    名大図書館にない場合他を調べる (愛知県>東海>全国)
  2. 中には「統合された資料」がある。
    それはどの資料でいつからか?

課題 6 中央図書館参考調査掛にて時間内に実施。チーム単位で行う

テーマを 1 つ選び、そのテーマに関する図書や雑誌論文、新聞記事を探す。

調査対象は下記の指定する資料 A〜C。選んだ 1 つのテーマについて、3 つの資料を調査し、テーマに関する文献情報 (図書・論文・記事などに関する情報) を 1 点見つけて掲載場所 (巻・ページなど) ・論題などを記入。

※記事が見つからない可能性もある。

<テーマ>

  1. EXPO 【万博、万国博覧会、1970 年】
  2. カレーライス 【インド料理、家庭、生活】
  3. 名古屋大学 【教育、設立年、学長の名前】
  4. 夏休み 【夏期休暇、福利厚生、夏、7 月、8 月】

<調査対象資料>

  1. 大宅壮一文庫雑誌記事索引 (029.9||O or CD-ROM) 【どんな言葉で調べるか】
    新聞記事の検索 (抄録 or 縮刷コーナー or CD-ROM 等) 【年月・カテゴリ】
    ※ 余裕があれば、縮刷版で実際の記事を確認。
  2. その他、テーマから文献情報を検索可能な参考書架の資料
    (書誌の書誌・主題書誌・人物書誌・百科事典・専門辞典など)

【上記はテーマであり、検索語そのものではない。実際は、もっと詳しいテーマ、動機があって調査開始になる。】

課題 7 0804 提示 0812 メールで提出

  1. チームプレゼンテーションの反省
  2. 他チームへのコメント

成績評価

授業への参加・貢献度・課題レポートによります。

関連サイト


投稿日

May 15, 2020