複素関数論

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講師杉本充 教授
開講部局教養教育院 2020年度前期火曜1限 木曜3限
対象者理学部・工学部 2年生

授業の目的

複素関数は,自然科学の様々な箇所に現れ,基本的役割を果たすと共に幅広い応用を持っている。特に,その微分積分学は,実数のそれと全く異なった美しく統一的な世界を形作っている。本科目はこうした複素関数の微分積分学の基礎,特に複素解析関数(正則関数ともよばれる)の基本的性質を学び,応用上重要な,その様々な取り扱いに習熟することを目的とする。 特に,ベキ級数および複素積分の取り扱いを重視する。

授業の工夫

この講義はコロナ渦の中,対面での実施を断念し,毎回講義ノートをアップロードしていくかたちで進めていったものです.そのため,詳しくは教科書の該当箇所を読んで補ってもらうことを期待して,ノートでは最も重要な点のみを抽出してまとめてあります.また,手書きや赤字での補足の多用など,黒板での板書をそのままノートにしたような形式をとることにより,なるべく対面での講義の雰囲気がそのまま出るように工夫してあります.学生にはさらに講義に関連した課題に毎回取り組んでもらい,TA によるチェックと模範解答をアップロードすることにより,各自で理解を確認できるようにしました.

授業の内容

以下の授業内容は標準的に教えられるものであり,講義の順序を示すものではない。また,クラスによっては,さらに進んだ内容が教えられる場合もある。実際の講義予定は別に提示する。

1。複素数平面
複素数の幾何学的表示を理解し,基本的な演算に習熟する。
(キーワード)絶対値,偏角と主値,オイラーの公式,1のn乗根

2。複素関数の正則性
正則性の定義とコーシー・リーマンの定理を学ぶ。
(キーワード)コーシー・リーマンの定理

3。初等関数と逆関数
指数関数などの初等関数の正則性や基本性質を学び,逆関数の正則性,多価性について理解する。
(キーワード)初等関数,逆関数の正則性,多価性と分枝

4。複素線積分とコーシーの積分定理
複素線積分を学び,コーシーの定理を理解する。 さらに,定理の応用を学ぶ。
(キーワード)複素線積分,コーシーの定理,コーシーの積分公式

5。ベキ級数展開
ベキ級数の正則性と,正則関数のベキ級数展開と解析接続を学ぶ。
(キーワード)ベキ級数の収束半径,正則関数のベキ級数展開
(発展的内容)零点の位数

6。留数定理とその応用
孤立特異点における留数と,複素線積分の計算や実積分への応用を学ぶ。また,孤立特異点のまわりにおけるローラン展開と特異点の分類にも触れる。
(キーワード)孤立特異点,ローラン展開,留数定理,実積分への応用

履修要件

微分積分学I,微分積分学IIの内容を既知とする。

成績評価

期末試験の成績を主として,レポートの成績を加味して判定する。履修取り下げにあたり,履修取り下げ届を必要としない。期末試験を欠席した場合は「欠席(W)」評価とする。

教科書

川平友規著「入門複素関数」裳華房

参考書

必要に応じて授業で示す。

注意事項

自宅での予習・復習・演習が不可欠である。実際に自分で手を動かしてみなければ,数学がわかるようにはならない。

担当者からの言葉

The goal of this course is to understand the basics of analysis of functions in one complex variable. In particular, students learn how to treat power series and complex integrals.

複素関数論は学問的に奥深く,その応用も多岐にわたる。微分積分学I, II の内容を前提とするので,きちんと復習しておくこと。

講義資料

投稿日

July 05, 2021