幾何学要論I-曲線と曲面の幾何-2012

講師納谷信 教授
開講部局多元数理科学研究科 2012年度 前期
対象者理学部多元数理学科3年生 (6単位週1回全15回)

授業の目標

幾何学とは, 図形や空間の性質を調べる数学である. この講義では, 幾何学への入門として, おもに線形代数や微積分法を用いてR3内の曲線・曲面の性質を調べる方法を学ぶ.

講義の目標の第一段階は, 曲率の概念を理解し, 具体例について計算が実行できることである. 曲面の場合, 曲率といっても一通りではない. それぞれ曲面の異なる視点からの曲がり具合を表現していることを把握し, とくにガウスの驚きの定理の意味を理解することが次の段階となる.

講義の最終目標は, 曲面の曲率とオイラー数を結びつけるガウス・ボンネの定理とその証明である. この定理を明快に証明するために, 微分形式とストークスの定理にふれることになる.

幾何学の純粋科学としての面白さを伝えるとともに, 時間のゆるす限り, 自然界や日常に現れる曲線・曲面を取り上げるようにし, 幾何学の有用性も伝えるようにしたい. また, 4 年前期に学ぶ多様体論への接続に配慮して, 多様体の概念にも言及したいと考えている.

授業の工夫

曲線や曲面の曲がり具合を曲率という量として表現し,その意味を理解することが講義の中心テーマです.したがって,まず曲線や曲面の具体例についてそれらの曲率を計算することが基本であり,なるべく講義中に演習の時間をとって,受講者に手を動かして実際に曲率の計算や公式の導出をしてもらいました.一方,単なる計算に留まらず,曲率の概念的理解も重視し,とくに曲率という量の定式化にいたるまでの理論展開を,飛躍無く丁寧に説明するようにしました.

キーワード

曲線, 長さ, 曲率, 捩率, フルネ・セレの公式, 曲面, 第 1, 2 基本形式, ガウス曲率, 平均曲率, ガウス・コダッチの方程式, ガウスの驚きの定理, ベクトル場, 微分形式, ストークスの定理, ガウス・ボンネの定理.

教科書

なし

参考書

  • 梅原雅顕・山田光太郎, 曲線と曲面 − 微分幾何的アプローチ − (裳華房)
  • 中内伸光, じっくり学ぶ曲線と曲面 − 微分幾何学初歩 (共立出版)
  • 小林昭七, 曲線と曲面の微分幾何 (裳華房)
  • Barrett O’Neill, Elementry Differential Geometry (Academic Press)

履修に必要な知識

微分積分, 線形代数の基本事項(1 年次に学習した程度)を習得していることを前提に講義を進める. さらに, 現代数学基礎 AI, II を履修していることが望ましい.

他学科学生の聴講

歓迎します.

履修の際のアドバイス

毎回出席すること.それから、講義中の演習においては、しっかり手を動かすこと.

スケジュール

講義内容
1 R3内の曲線(1)定義、長さ、弧長パラメータ
2 R3内の曲線(2)曲率、捩率、フルネ・セレの公式
3 R3内の曲線(3)曲率、捩率の計算
4 R3内の曲線(4)曲率、捩率の意味、曲線論の基本定理
5 R3内の曲面(1)定義、接平面と単位法ベクトル、面積 小テスト
6 R3内の曲面(2)第1、2基本形式、ガウス曲率、平面曲率
7 R3内の曲面(3)ガウス曲率、平均曲率の意味
8 R3内の曲面(4)ガウスの驚きの定理
9 中間テスト
10 R3内の曲面(5)大域的曲面
11 曲線の測地曲率、ガウス・ボンネの定理
12 微分形式、1形式の外微分、積分とストークスの定理
13 接続形式と構造方程式
14 ガウス・ボンネの定理の証明
15 まとめ・期末試験

講義の内容や順序は若干変更することがある.

講義ノート

成績評価

小テスト、中間テスト、期末試験の結果に基づいて行う.

小テスト 10 点満点
中間試験 30 点満点
期末試験 60 点満点
の合計 100 点満点で採点する。


投稿日

December 08, 2015