数理科学展望-I-2009

講師落合啓之 教授
開講部局多元数理科学研究科 2009年度 前期
関連部局理学部/理学研究科
対象者多元数理科学研究科1年理学部数理学科4年 (2単位週1回全15回)

講義の目的

この講義は, 多元数理科学研究科が大学院生および学部生に対して開講する英語講義の1つであり, 外国人学生だけでなく, 留学や英語による外国人科学者とのコミュニケーションに関心をもつ日本人学生も対象としている. 講義, 宿題, 質疑応答などすべての行為が英語で行われる. この講義の目的は, 数理科学におけるさまざまな方法を解説することである. 今年度のこの講義は3人の教員が担当する. それぞれの教員が数理科学のさまざまな局面からの異なる話題を取り扱う.

授業の工夫

この講義は、英語で行なわれます。 数理学科が提供する外国語講義のひとつです。 内容は数学です。 担当教員(落合)は英語が得意ではありませんが、 数学の研究では英語が不可欠なため、 やむを得ず、英語の論文を読み書きしたり、 英語で講演をしたり質問したりという経験をしています。 早い段階から英語に徐々に親しむことで 外国語アレルギーをなくし、専門の数学の学習研究へ スムースに入って行くための一つの入り口に、 この講義がなればいいなと思っています。 あまり人数が多くなければ、演習を交えた 双方向の講義にしていきたいと考えています。

講義の目的

実数を成分とする二次の正則行列の全体を S L(2, R) という. S L(2, R) は群でありしかも多 様体の構造が入る, すなわちリー群の典型的なものの一つである. このリー群の既約ユニタリ 表現の分類は半世紀以上前に完了している. その様子を解説する.

講義予定

一次分数変換(リーマン球面の共形変換群)の復習から入る. 関数空間へ誘導される群の作用を微分することで, 3次元単純リー環 sl(2) の関係式とその表現を導入する. 合わせて, リー 群とリー環の対応をこの例で説明する. また, キリング形式, カシミール作用素を計算する.

ここで構成した表現をウエイトや昇降演算子を使って解析する. ユニタリ性, 既約性の判定 が鍵である. これらの総合的結論として, S L(2, R) の既約ユニタリ表現が, 球主系列表現, 非 球主系列表現, 補系列表現, 正則離散系列表現とその極限, 反正則離散系列表現とその極限, お よび自明表現に分類されることを解説する.

時間に余裕があれば, S L(2, R) の被覆群の既約ユニタリ表現や, 得られた表現の指標, 跡公 式にも触れたい.

キーワード

リー群, リー環, ウエイト, 昇降演算子, 既約表現, ユニタリ表現

履修に必要な知識

予備知識として数理学科の指定する「レベル1」までを仮定する.

他学科学生の聴講

履修に必要な知識がある限り, 学部学科を問わず歓迎します.

履修の際のアドバイス

この講義並びに演習では, レベル1の知識までしか仮定しないので, 多様体, リー群, リー環, 普遍包絡環, ルート系, 被覆空間, 岩沢分解などはあらかじめ知らなく てもかまわない.

教科書

R. Howe and E.C. Tan, Non-abelian Harmonic Analysis, Springer Verlag.
ただし教科書の一部しか使わないので購入しなくても講義は聴ける.

参考書

A. Knapp, Representation Theory of Semisimple Groups, Princeton University Press.
必要となる事項はこの本に盛り込まれている.

スケジュール

講義内容
4/16 リー群のリー環の対応
4/23 群の作用と微分表現
4/30 sl(2)の表現とウェイト
5/7 ユニタリ、既約性の判定と分類

*残りの講義は他の先生が担当します。

講義ノート

第 1 回

第 2 回

第 3 回

第 4 回

成績評価

授業参加(出席)と課題提出(レポート)を総合的に評価して行なう.


投稿日

January 14, 2020