スピン偏極電子源の開発と応用分野の開拓

2008年度 退職記念講義

講師中西彊 教授
中西彊 教授
開講部局理学部/理学研究科
日時2009/3/2 13:40-14:40
場所理学部B館B5講義室
中西彊 教授
講師中西彊 教授
開講部局理学部/理学研究科
日時2009/3/2 13:40-14:40
場所理学部B館B5講義室

“スピン偏極電子ビーム源”に魅せられて

思い返せば、スピン物理実験を志しまた坂田昌一先生にもあこがれて 1968 年に京大から本学の理学研究科へ入学して以来、大学院生あるいはスタッフとして 41 年間も研究に明け暮れる生活を送らせていただいた。最初はスピン偏極核子ターゲットの開発とハドロン実験、1980 年代からはスピン偏極電子ビーム源の開発に取り組み今日に至った。このテーマは誰の指示でもなく唯々自分の意志で“種から芽を出す”仕事から始めた。それにもかかわらず、学内外の多くの研究者から半導体フォトカソード試作など“芽を育てる水”をいただいた。そのお陰で 1991 年にはスピン偏極度を従来の 40%から 86%へと大幅に更新する成果に行き着いた。それ以降も、いま話題の小林-益川理論の先にあるはずと予言される超対称性理論を検証するためのリニアコライダー、次世代・高輝度放射光加速器(ERL)、さらに最近は、電子顕微鏡に使うためと3種類の偏極電子源の開発に取り組んでいる。それぞれの実用化には“従来技術では達成できないビーム性能”が要求される。“現状を打破できる新手法を考案し手作りの装置でそれを実証してみせる”ことは苦労でもあり楽しみでもあった。これらの“苦楽”をともにしてくれたスタッフ、大学院生、共同研究者、ご支援して下さった皆様方にこの場を借りて厚く感謝申し上げます。

講師紹介


中西彊(なかにし・つとむ)理学研究科教授

学歴

  • 1968 年 京都大学物理学 卒業
  • 1973 年 名古屋大学理学研究科物理学博士課程 修了

取得学位

  • 理学修士
  • 理学博士

専門分野

  • 素粒子
  • 原子核
  • 宇宙線
  • 宇宙物理
  • マイクロ・ナノデバイス
  • 薄膜・表面界面物性

研究課題

  • 1984- スピン偏極電子ビームを生成する半導体フォトカソードの高性能化
  • 2000- 次世代放射光源加速器のための超低エミッタンス電子源の開発
  • 2005/03- 表面電子顕微鏡(LEEM など)に用いる高輝度・スピン偏極電子ビーム源の開発
  • 高エネルギー電子加速器や e+e-リニアー・コライダーのためのスピン偏極電子銃の開発
  • ボン,マインツ両大学における偏極電子ビームの実用化とハドロン物理学実験

所属学会

  • レーザー学会
  • 日本物理学会

受賞学術賞

  • 高エネルギー加速器科学奨励賞(西川賞と併賞) (1992)
  • 日本金属学会技術開発賞 (2000/10)
  • 日本表面科学会・技術賞(2009)
  • 日本応用物理学会・論文賞(2009)

講義資料

スピン偏極電子源の開発と応用分野の開拓


投稿日

March 26, 2022