国際開発研究科

国際開発研究科について

名古屋大学大学院国際開発研究科(GSID)は 1991 年に発足し、今年で創立 26 周年を迎えます。創立以来 26 年の間に、国際開発を取り巻く世界の環境は大きく変化しました。特に昨年は、国際的にも重要な節目の年であり、研究科 25 周年を記念するにふさわしい年でした。2015 年 7 月、国連は 2000-2015 年における国際社会の目標である「ミレニアム開発目標 Millennium Development Goals, MDGs」の最終評価として、「ミレニアム開発目標報告書 2015」を発表しました。この報告書によれば、2000 年から 2015 年までの間に、極度の貧困に苦しむ人々の数を半減するという MDGs の最も重要な目標は達成されたことがわかります。同年 9 月、ニューヨークで開催された「持続可能な開発に関するサミット」で、MDGs に続く新たな開発目標である「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals, SDGs)」が各国政府の代表により採択されました。この目標は今年 2016 年から 2030 年までの国際社会における行動規範であり、17 の目標と 169 のターゲットからなります。SDGs がミレニアム開発目標と区別される大きな特徴は、これらの目標が開発途上国だけでなく、先進国にも適用される目標であり、世界各国の政治的コミットメントが強く求められている点です。また、内容的には持続可能な経済、社会、環境の実現が大きな柱となっています。

こうした国際的な行動規範の変化と時を同じくして、名古屋大学では国際開発研究科の機能強化が求められています。この要請を受け、研究科では上述した国際的な行動規範と足並みを揃え、開発途上国が直面する課題に加え、先進国も含めたグローバル社会が直面する課題に対応する研究や教育の実施体制づくりに取り組んでいます。特に重要な領域となるのは、「持続可能な開発」を支える経済成長、貧困や格差の解消、教育と人材開発、包摂的で公正な社会の実現、平和とガバナンス、環境保全等に関わる分野です。研究と教育でこうした分野をカバーできる体制づくりに向けて、研究科のさらなる機能強化を進めてまいります。

部局長インタビュー

国際開発研究科長 岡田亜弥 教授

国際開発研究科長の岡田亜弥教授に 5 つの質問に答えて頂きました。

  1. 国際開発研究科の強み(醍醐味)を教えてください。

国際開発研究科の強みはたくさんあります。

第 1 に、大学院国際開発研究科は、1991 年に設立された、日本で最初の国際開発分野の専門大学院です。教授陣には、国内外のトップ大学での研究経験や国際機関・援助機関での実務経験を有するものが多く、国際開発分野において、トップレベルの研究・教育を提供しています。

第 2 に、設立当時より、すべての授業が英語で行われ、異文化を尊重し、多様性を重視する教育が行われています。そのため、在学生の約 7 割は、アジアを中心に世界中から集まっている留学生であり、日本にいながら、海外に留学しているのと変わらない国際的な学修環境を提供しています。現在も、49 か国からの留学生が学んでおり、授業はさながらミニ国連のようです。

第 3 に、のべ 94 か国から約 2200 名が国際開発研究科で修士号、博士号を取得しており、世界中に広がる修了生のネットワークも強みの一つです。彼らの多くは、学位取得後、母国に戻り、政府機関、大学や研究機関、そして国際機関で活躍しています。多くは、副大臣など国家中枢人材、大学学長、国際機関のリーダーなど、国内外のリーダーとして活躍しています。

  1. 国際開発研究科の学生に大学生活を通じてどんな風に育って欲しいですか。

大学生活では、授業以外にも、国際的なセミナーやイベントへの参加、海外研修、インターンシップなど、さまざまな機会が提供されています。こうした機会を積極的に活用し、将来、国際的に活躍する人材に育ってほしいと願っています。

  1. 国際開発研究科のビジョンを教えてください

国際開発研究科のミッションは、グローバル化する世界が直面する諸問題の実態と解決策を研究するとともに、国際機関・各国政府・市民社会等による政策立案・実施過程に貢献することを通じて、持続可能なより良い社会を実現することです。

国際社会は、2015 年に「持続可能な開発目標(SDG s)を採択し、2030 年までに達成すべき17の目標を定めました。こうした地球規模課題の解決には、社会科学の理論に立脚しつつ、政策的枠組みを理解し、変革する視点が必要です。

そこで国際開発研究科は、世界の研究機関や政策立案・実施機関と連携し、社会科学分野における学際的な研究・教育を通じて、グローバル社会が抱える課題解決の方策を図ることに貢献します。

  1. 岡田先生ご自身が学生であったとき、印象的な授業はありましたか?

私は、イギリスのサセックス大学に留学して、修士課程を修了し、そして、その後2つの国連機関に勤務してから、アメリカの MIT に留学し、博士課程を修了しました。どちらも留学生が多い国際的な環境でしたので、国際開発研究科ととても似ています。どちらも、印象的な授業はたくさんありました。

たとえば、修士課程では、世界中 25 か国から集まった約 30 人の同期の学生がいつも同じ授業を受講するプログラムでしたが、いずれの授業も円卓で行われ、初回から順番に、アダム・スミス、David Ricardo, カール・マルクス、マックス・ウェバーなど現代の社会科学の巨匠の代表的な大著の原著を週替わりで読まされましたので、相当ハードでした。

そのうえ、講義以上に討論に多くの時間が割かれ、先生の講義は何とか理解できるものの、インド、スリランカ、パキスタンといった南アジアの学生の英語が全然聞き取れず、苦労したことを覚えています。しかし、その後、私は、ユニセフの職員となり、ニューヨーク本部での勤務を経て、インドに長く駐在しましたので、今では、私の英語は、インド訛りがあると言われています。

MIT での博士課程での経験も同様ですが、当時の先生やクラスメートの中には、今でも交流している友人がたくさんおり、どちらも私の人生においてかけがえのない経験です。

  1. 国際開発研究科への入学希望者に向けてメッセージをお願いします。

長く続くパンデミックで、世界中の多くの人々が大変な状況にありますが、経済的にも社会システム面でも脆弱な開発途上国は、感染症だけでなく、多くの課題を抱えています。こうした地球規模課題の解決と持続可能な開発の達成へ向けて皆さんができることがたくさんあります。専門的な知識やスキルを身につけて、世界を舞台に活躍する人材になりませんか? 国際開発研究科は、将来、世界で活躍するグローバル人材を育成する研究科です。多くの皆さんが入学されることを願っています。

(令和 3 年 5 月 31 日)


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