講師 | 飯髙哲也 教授、新井史人 教授、村瀬洋 教授、GARRIGUE Jacques 准教授、森郁恵 教授、梶原義実 准教授、笹原和俊 講師、中村靖子 教授、坂本將暢 准教授、戸田山和久 教授 |
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開講部局 | 教養教育院 2018年9月18日〜10月30日 |
対象者 | 満18歳以上の方 |
人類は生物界にあって変わった存在です。「万物の長」という言い方がありますが、人類はすべての領域で他の動物よりすぐれているわけではありません。人類より速く走る動物、飛べる動物、泳ぎが早い動物など枚挙にいとまがありません。このように非力な人類が約 4700 年前に巨大なピラミッドを重機なしで建造したことは驚きです。どのようにして人々を組織し、どのような技術は使用されたのか、詳細は未だに研究対象ですが、その時に開発されたノウハウ、道具類はいろいろな国とのやりとりの中で培われたことには間違いはありません。てこ、コロ、車輪などの天才的な発明がのちに工学、自然科学の進歩の原動力になりました。
このような技術、学問の進歩はやがて、人間が考えること、計算することなどを機械の上で再現しようとする試みにつながっていき、コンピューターという道具を前世紀に生み出しました。最初は真空管からなっている大変原始的なものでしたが、真空管を経てトランジスター、大規模集積回路といった半導体技術の進歩がその発展に大きな役割を果たしています。その中でも、インテルで開発された世界初の商用マイクロプロセッサー「Intel 4004」の開発者の中に日本人の嶋正利氏の名前もあることは日本が誇りとして良いことだと思います。
1996 年にチェスの名人にコンピューターが勝ってから21年後の 2017 年にコンピューターが世界最強と言われる囲碁の名人に勝つ、という大ニュースとなりました。囲碁のように可能な手が多く、素人目には勝敗もはっきりしないようなゲームにコンピューターが勝てる、というのには驚いた方も多いかと思います。
人間らしさ、に関する研究も進んでいます。言語学、認識科学という分野はチョムスキーによって「人間の赤ちゃんはなぜどの言語でも数年間で学習することができるのか?」という根本的な問題提起によって様相を一変させます。生まれ持って生得的な言語能力がないと説明は難しい、というのがチョムスキーの立場です。人間の学習の研究、計算幾科学などに大きな影響を与えています。
人間の言語能力、思考能力、道具の使用、発明に注目して他の生物との違いを研究する方法とは別に進化の長い過程の中で登場した人間、他の生物との共通点に注目する研究方法もあります。特に現在では、基本の設計図である DNA が様々な生物について解読されているので、共通点の研究が飛躍的に進歩しています。脳の成り立ちを考える上では不可欠な手法だと言えます。
農業、建設業が良い例ですが、機械の進歩は我々の仕事の仕方に変化を与えます。人工知能の進歩は金融を始めとする我々の経済生活に影響を与えています。働き方も変わっていく兆候が見えていますが、得てすると人工知能によって我々人間の仕事がどんどんなくなってしまう、と不安を煽る記事となっています。しかしながら、人間が機械の助けにより、農業などの重労働から解放されるようになったのはタイムスケールからいえば、ここ 100 年ことであることを考えると人工知能による未来を悲観するのは早すぎるでしょう。
ケインズという天才的な経済学者は大恐慌終了直後の 1930 年に「孫の世代の経済的可能性」を発表しています。科学技術の進歩、資本の蓄積により人類は経済的な問題から解放される可能性があることを指摘しています。コンピューターといった機械は我々人類が不得手なことが得意です。人間の得意分野である、独創性、好奇心などの多様性をどのように引き出していくか、これからの教育、社会システムをどう考えるか、皆さんと問題意識をシェアしたいと思います。
平成 30 年 9 月 18 日(火) ~ 10 月 30 日(火)
(火・木曜日 全 10 回)
(名古屋大学 学術研究・産学官連携推進本部「公開講座」)
講義日程 | 個別テーマ | 講師 |
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第1回 9/18(火) |
人間が創った機械は人間のこころを理解できるか? | 脳とこころの研究センター 飯髙哲也 教授 |
第2回 9/25(火) |
生物に学ぶ機械の未来-知の統合による新しい挑戦 | 未来社会創造機構 新井史人 教授 |
第3回 9/27(木) |
進化する画像認識 | 情報学研究科 村瀬洋 教授 |
第4回 10/4(木) |
複雑さと信頼-ソフトウェアと数学の機械による検証 | 多元数理科学研究科 GARRIGUE Jacques 准教授 |
第5回 10/9(火) |
脳神経回路における情報処理の根本原理を解く~脳のしくみが人工知能に活用される日は来るのか?~ | 理学研究科 森郁恵 教授 |
第6回 10/11(木) |
考古学からみた愛知県の窯業生産 | 人文学研究科 梶原義実 准教授 |
第7回 10/16(火) |
フェイクニュースの生態系:人とボットとソーシャルメディア | 情報学研究科 笹原和俊 講師 |
第8回 10/23(火) |
感情機械:非言語的プロセスと言語表現 | 人文学研究科 中村靖子 教授 |
第9回 10/25(木) |
個が生きるプログラミング的思考:主体的で対話的に学ぶ子どもの姿 | 教育発達科学研究科 坂本將暢 准教授 |
第10回 10/30(火) |
「人間と機械の生存競争」の思想史-シンギュラリティをどう考えるべきか | 情報学研究科 戸田山和久 教授 |
November 05, 2020