応用言語学方法論b-2015

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講師秋田喜美 准教授
開講部局文学部/国際言語文化研究科 2015年度 後期
対象者国際言語文化研究科 日本言語文化専攻 (2単位週1回全15回)

授業の内容

この授業では、「統語と意味の接点」(syntax-semantics interface) に関する代表的な理論的枠組み (語彙概念意味論、構文文法、フレーム意味論、生成語彙論など) を比較検討します。一般に、似た意味の語は似た振る舞いを見せます。例えば、「壊す」と「切る」という動詞は、ともに「~を壊す/切る」のように他動詞として用いられます。こうした統語と意味の関係をきれいに矛盾なく捉え切るのは、簡単そうに見えて実はものすごく難しい仕事で、そのため、これまでにいくつもの理論が生まれては消えてきました。この授業では、そうした複数の理論を見比べることで、言語研究において理論的枠組みを持つことの意義を学びます。「意義」には以下が含まれます。

  1. 個別言語の事例研究 (例: 日本語の動詞研究) に一般言語学的な価値を与える。
  2. 理論を通して見つめることで初めて気づくことがあることを体験する。
  3. 複数の理論を見比べることで批判的・論理的思考を養う。

授業の工夫

理論を持つことは、言語学の論文 (学位論文など) を書く際に必ず必要となる「条件」とまで言われることがあります。一方で、多くの理論的文献が英語で出版されているため、日本言語文化専攻に属する大学院生の中には抵抗感を持つ方も少なくなく、そのため、この抵抗感を和らげるのに以下のような試みを行っています。

授業内

  • 可能な限り日本語の文献・資料を提供する。
  • オノマトペ (擬音・擬態語)、俗語、意外な例など、できる限り身近で面白い例を紹介する。
  • 学外から最先端の関連研究者を招待する。

宿題

  • 日本語ないし母語での関連課題 (未解明課題を含む) を考察してきてもらう。各自の研究テーマとの関連を考えてきてもらう。
  • 共著可とする。
  • 徹底的にフィードバックする。

授業外

  • 授業での議論・提出課題に基づき、授業スライドを更新し Dropbox にアップする。
  • 5 限目開講とすることで、授業後に気楽な議論を続けられるようにする。
  • オフィスアワーを週 7 日とする。

授業の目標

各自の研究テーマに理論的観点を取り入れ、他の理論ではいけない理由まで追究できるようにする。これにより、真の意味で「言語研究」に参加する。

授業の流れ

以下の流れを基本としています。

  1. 導入・背景紹介 (10 分)
  2. 学生による論文要約+批評 (20 ~ 30 分)
  3. 宿題の討議 (20 ~ 30 分)
  4. 補足 (20 分)
  5. 宿題提示

メインテーマの他に、以下の「方法論」も適宜紹介しています。

  1. 効果的なスライドの作り方
  2. 学会発表に応募するための要旨執筆法
  3. 文献収集の方法
  4. 言語学界の歩き方

教科書

Dropbox で論文と授業スライドを共有しています。

参考文献

  • 影山太郎 (編). 2001.『日英対照 動詞の意味と構文』大修館書店.
  • 岩田彩志. 2012.『英語の仕組みと文法のからくり: 語彙・構文アプローチ』開拓社.

その他、随時紹介。

履修条件

講義受講・読書などで言語学に入門していることが望ましい。各回、論文 (うち数本は英文) を前提とした宿題が課されますので、それを念頭に置いて履修してください。

他学期

今期は「理論的研究の方法論」に焦点を当てていますが、他学期には認知・機能言語学の手法 (内省、コーパス調査、実験、通言語比較) の効果的な用い方・組み合わせ方を、特定のテーマを例に紹介しています。「仮説の種類と検証法の種類の対応関係」が鍵です。

テーマは学期ごとに変化します。過去・今後のテーマは以下の通りです。

  1. (移動) 様態表現の類型論
  2. 百科事典的意味論
  3. オノマトペ (擬音・擬態語) の言語学
  4. 言語における類像性

講義ノート

[宿題リスト](https://ocw.nagoya-u.jp/files/505/15ii-R5 HW.pdf)

成績評価

以下の観点より総合的に評価致します。

  1. 1 回以上の論文レビュー (30%)
  2. 宿題・ディスカッションへの参加 (40%)
  3. 期末レポート (30%)

投稿日

April 10, 2020