社会システム情報学特論-2011

講師渡邉豊英 教授
開講部局情報科学研究科 2011年度 前期
対象者情報科学研究科 社会システム情報学専攻 (2単位週1回全15回)

授業の内容

知能は人固有のものではなく、環境が知能を持つ時代が到来している。知能社会は総ての「もの」が相互協同的に創生し、共生していくメカニズムに支えられ、今後益々我々の社会を豊かに、知的に支えてくれる。このような認識の基に人の活動、人と人とのインタラクション、人と環境の相互作用、環境の仮想化などの視点から情報科学、情報学の果たす役割を明らかにし、広く、かつ深い視点を有した知識人を育成する。

授業の工夫

毎回、個性豊かな、そして専門が異なる教員が自らの視点から持論を展開し、毎回の主題と、講義全体で総合して得られる主題を理解・解題することを求めている。本専攻で学ばなければならないこと、本専攻を修了して実践しなければならないことを、学生自らが明らかにしなければならないというメッセージを、本講義は発信するようにしている。

講義内容

社会システム情報学専攻所属の教員がそれぞれの切り口から「社会」「情報」をキーワードに知能社会の現状・将来展開について講述する。特に、所属教員の元来の専門領域は文理融合そのものを表出するように情報哲学から情報工学まで幅広く展開しており、情報学の姿を一つの講義で知ることでできる。

授業の特徴

幅広い専門領域に渡る所属教員がそれぞれの情報科学、情報学に対する熱意が伝わる授業である。

教科書

なし

参考書

なし

スケジュール

第 1 回 渡邉 豊英

  1. 特論の概要

    社会システム情報学専攻と社会システム情報学特論の概要

  2. 知識社会における活動支援

    21 世紀は知識を基盤とした社会構造が、人々の活動を支援し、共生すると言われてきた。20 世紀が知識を処理・蓄積・管理・運用することに情報通信技術が重要な役割を果たしてきたが、21 世紀では知識を使用・活用することへの転換が求められている。本講義では知識と社会の視点から述べる。

第 2 回 石井 健一郎

  • コミュニケーションサイエンス

    携帯電話やインターネットなど、新しいコミュニケーション手段が利用できるようになった現在でも、壁の無いそして安全で快適なコミュニケーション環境を実現するのは至難の業である。本講では、コミュニケーションの壁の克服を目指したコミュニケーションサイエンスの取組みを、最近の研究事例を交えながら紹介する。

第 3 回 加藤 ジェーン

  • 動画像をベースとした高度道路交通システム

    高度道路交通システム(ITS)は、道路交通の情報化・知能化を目指し、通信・計測制御・情報処理などの多岐にわたる技術を結集したものである。本講では、まず動画像をベースにした ITS 技術を概説した上で、交通監視映像から確率的な手法を用いて自動車を自動追跡する技術について紹介する。

第 4 回 横井 茂樹

  • オープンソースについて

    特定企業の作ったクローズドな OS に基づいて電子政府を構築することは国のセキュリティ上問題視され、オープンソースソフトの採用に注目が集まっている。問題点と政府の動向について解説する。

第 5 回 安田 孝美

  • 知的社会基盤システムのデザイン

    情報通信インフラが整備された社会は、人々の生活にどのような恩恵と問題を与えるのか。行政、教育、交通、娯楽など人の生活に直接関わる社会情報システムを考える。

第 6 回 茂登山 清文

  • 情報デザインとヴィジュアルリテラシー

    デザインとは、ある実用目的をもつものの計画をたてたり、その計画を図示することを意味する言葉です。建物も服もフライヤーも、デザインされているわけです。電子ネットワーク社会では、「情報」にどのようなカタチを与え、他者に伝えるのかがたいへん重要です。本講では、デザインの実例を紹介しながら、その意味について説き、また実際のデザインのちょっとした「コツ」を披露します。

第 7 回 戸田山 和久

  • 情報科学の存在論的・認識論的基礎

    「情報」と呼ばれるものは考えれば考えるほど不思議な存在者に思われてくる。それは、世界を流れたり、事物に担われたりする。量的に把握される一方で、「内容」をもっている。われわれはそれを生み出したり、知ったり、それに影響されたりする。この摩訶不思議な「情報」の概念をできるかぎり厳密に分析することを試みる。

第 8 回 米山 優

  • 情報科学、情報工学とは区別される情報学の構築

    情報についての学問を可能な限り広義に取った場合、どのような議論が可能なのかについて講義する。具体的には拙著『情報学の基礎』の最終章である<テクストの未来>についての話が中心となる。

第 9 回 秋庭 史典

  • 芸術作品と情報

    不確かさを減らすのが情報技術だとすれば、不確かさを楽しむのが芸術と言えるでしょう。こう書くと、情報技術と芸術は正反対のもののように思われますが、実は、よく似たところもあるのではないでしょうか? 具体的な作品を紹介しながら、両者の共通点を探っていきます。

第 10 回 小池 直人

  • 社会関係資本と「生の情報」

    社会の活力を示す重要指標として社会関係資本が論じられ、そのことと平行して北欧型社会が注目を集めつつある。その背景には「生の情報」といわれる独自の社会文化領域が開拓されている。西洋社会思想の文脈から「社会関係資本」「生の情報」の概念を解明し、将来社会の条件を探る。

第 11 回 間瀬 健二

  • メディアコミュニケーション

    人類はさまざまなメディア技術を発明し、思考を表現してきた。コミュニティウェアの観点から、インタフェースエージェント、インタラクションメディアなどの知能情報メディア技術を概説する。

第 12 回 梶田 将司

  • 情報基盤デザイン

    建築家が古い建物や他の建物との調和を図りながら、便利さ・快適さを追及し、安全で安心した生活ができる建築物をデザインするのと同じように、電脳空間においても「情報アーキテクト」と呼ばれる情報基盤のデザイナが必要になってきている。本講では、高等教育機関の情報基盤を例に、情報基盤デザインについて概説する。

第 13 回 松原 茂樹

  • 言語情報技術が拓く新しい社会システム

    最新の自然言語処理技術により、文章の作成、要約、翻訳、検索、言換えなど、人間の知的活動の自動化が現実的になりつつある。言語処理技術とインターネット技術の融合による新しい情報化社会の可能性について概説する。

第 14 回 石川 佳治

  • データマイニング

    大量の情報が日々生み出されていく今日では、データの中から新たな知識を発見し、社会において有効に活用するデータマイニングの技術が注目されている。本講では基本的な考え方を紹介する。

講義ノートは 2008 年度、講義ビデオは 2009 年度のものとなっています。

講義ノート

資料
第 1 回 講義スライド:知識管理
第 2 回 講義レジュメ:コミュニケーションサイエンス
第 3 回 参考資料:動画像を用いた高速道路交通システム
第 4 回 参考資料:e-なも君プロジェクト
参考資料:e-市民ひろば
参考資料:高齢化社会・少子化社会の進行と IT の活用
第 5 回 講義スライド:How to Build Up a Virtual Society from the Citizens' point of View
第 6 回 講義スライド抜粋:design & visual literacy
第 7 回 講義レジュメ:情報科学の哲学的基礎
第 8 回 講義レジュメ:情報学の構想
第 9 回 講義スライド:情報創造論
第 10 回 講義レジュメ:社会関係資本と生の情報—北欧モデルからの示唆
第 11 回 講義スライド・参考資料:コミュニケーションの支援
第 12 回 講義スライド・参考資料:情報基盤デザイン
第 13 回 講義レジュメ:言語情報技術が拓く新しい社会システム
第 14 回 講義スライド:データマイニング

講義ビデオ

映像
第 1 回 知識社会における活動支援
第 2 回 コミュニケーションサイエンス
第 3 回 動画像をベースとした高度道路交通システム
第 4 回 オープンソースについて
第 5 回 知的社会基盤システムのデザイン
第 6 回 情報デザインとヴィジュアルリテラシー
第 7 回 情報科学の存在論的・認識論的基礎
第 8 回 情報科学、情報工学とは区別される情報学の構築
第 9 回 芸術作品と情報
第 10 回 社会関係資本と「生の情報」
第 11 回 メディアコミュニケーション
第 12 回 情報基盤デザイン
第 13 回 言語情報技術が拓く新しい社会システム
第 14 回 データマイニング

成績評価

  • 講義への出席と小レポート、及び講義全体に関する課題レポート。
    • 各教員分担分の評点を平均し、総合点が 60 点以上を可、70 点以上を良、80 点以上を優とする。

投稿日

May 08, 2020