特に中国に関しては、日本のメディアのフィルターを通した中国の様子、事実とは違うものが報道されています。
でも、中国の人たちには彼ら自身の報道権利や見方があります。中国語を知らない人々が、メディアをそのまま鵜呑みにしてしまうこと、それは自分が実際目で見聞きしたものと違う判断で物事を見ることになりうると思います。
自分は「ものさし」はどうしてもできてしまうけど、それだけで人を評価したり判断したりするよりは、いろんな「ものさし」があった方がいいんじゃないかな、生きやすくなるんじゃないかなと思います。
中学高校までの英語のような受験のため、点数をとるための外国語教科という接し方はしたくないなというのは常にありますね。履修科目として単位を取るためではなく、「もっと純粋に楽しんで言語に接してほしいな」という気持ちで教えています。
私自身、専門が中国語の文法なんですけど、だからといって高校までのグラマー(文法)のような授業をするつもりは全くなくて、この場に来たならできるだけ発話をして、隣の人と実際に使ってみてもらいたいと考えています。

また、私はTA(講義助手の大学院生)をつけてもらっています。その メリットを生かして、私のようなノンネイティブの教員だけでは伝えきらない“リアリティ”みたいなものを伝えたい。彼女に中国語だけで容赦なく話してもらい、私が日本語で解釈を入れていく中で、できる・わかるためのものではなく、“使えるツール(道具)としての中国語”が習得ができるように働きかけていきたいな、と考えています。 「教科書の内容のここがテストにでますよ」というよりは「これができるようになれば、こういうコミュニケーションが取れるようになりますよ」というような教え方をしていきたいなと思っています。
私にとっての中国語の魅力というのは、同じ表記媒体「漢字」のおかげで見て意味がわかってしまうけれど、音がのっかったときに「やっぱり別言語なんだ」と思うそのギャップですね。
また、メロディーに上下があって、聴いていてすごく心地が良く、美しさも感じます。
文法的特徴で言えば、英語のような活用・屈折がないので、単語を覚え、どう並べるかという“パズルのような言語”というイメージがあります。そういう意味では、名大だと第2外国語として1年しか学ばない学生も多いけど、限られた時間でできるようになることが、他の言語と比べて多いと思います。
ただ反面、見てわかるんだけど実際コミュニケーションをとれるかというと、できないのがマイナスではありますね。

私自身大阪外国語大学中国語科出身なんですよ。つまり“中国語をやりたい”って大学に入ったんですよね。
そのきっかけはもともとジャッキーチェンが好きで、中学高校時代にカンフー映画を見まくって、「この言葉聞き取れたらいいな」と思ったことです。英語よりもはまって、「大学行ったら中国語やるんだー」って大学入ったんです。
でも、彼がしゃべるのは、実は中国語ではなく「広東語」だったというオチが(笑)。
「あーちょっと違う、間違えたー」って感じだったんですけど、まあでも実際入って、専門で中国語を学んできたけど、やっぱりはまった、ピタっときた感じですね。
大学入って、「もっと知りたいもっとやりたい」って留学して、さらに「もっとやりたい」ってなって、地元の名大に戻っても、ただ「中国語がしゃべれるようになりたい」ではなく、“中国語言語そのもの”にはまり、やっぱり「言語としての面白さを伝えたい」って思ったとき、“教員になりたい”ってホントに導かれるようにして(笑)。
“好きなことを突き詰めてきたら教えていた”みたいな感じですね。
ジャッキーのエピソードを話すのいつも迷うけど、みんなスタートってそんなもんじゃないかな。好きなことがたまたま職業に、結びついたラッキーなパターンではあるね。今は、自分自身も中国語に関してはまだ日々学ぶ立場である一方で、学生にも伝えています。自分の半分趣味の中国語の研究をお給料もらいながらできるっていうのは、ほんと幸せですね。
学生へのインタビュー
Aさん:発音は難しそうですが、日本語の漢字の起源は中国語だから、読みの方は何とかなりそうだと思っていました。
Bさん:言語学習を通して中国の文化を学びたいと感じていました。大学の周りに中華料理店がたくさんあるので、そんな身近な中国の言語を学んでみたかったです。
Aさん:やはり発音が難しかったです。語順は英語と似ているので、理解しやすかったと思います。漢字の読み書きも割と理解しやすかったですが、意味が日本とは違ったり、日本で扱われてなかったりする漢字は、覚えるのに苦労しました。
Bさん:漢字のニュアンスの微妙な違いが面白かったです。実際にTAさんが話してくれるので、本場の声が聴けて楽しかったです。言語だけでなく、中国の歴史や文化を取り上げてくれたので、とても勉強になりました。
Cさん:話すことに重きを置いている授業だっ たので、話せるようになる実感が持てて良かったです。基本的に語の変形がなく、組み合わせ文を作るのがパズルみたいで楽しかったです。