『密約』調査を終えて

2009年度 退職記念講義

講師春名幹男 教授
春名幹男 教授
開講部局文学部/国際言語文化研究科
日時2010/02/12 14:00-15:30
場所IB電子情報館2階大講義室
春名幹男 教授
講師春名幹男 教授
開講部局文学部/国際言語文化研究科
日時2010/02/12 14:00-15:30
場所IB電子情報館2階大講義室

「実務家教員」ことジャーナリストとして

平成 19 年度から 3 年間、「実務家教員」として、みなさんの仲間に入れていただきました。貴重な経験でした。私自身は自分のことを勝手に Journalist-in-Residence と自称してきました。「大学駐在のジャーナリスト」とでも訳せばいいでしょうか。米国務省やホワイトハウスで一緒に取材した米国人記者たちが今そんな肩書きで米国の大学で活躍しています。司馬遼太郎は「サラリーマンは社長を目指すが、記者は一体何になるのか」と問いましたが、私は「生涯一記者」です。在職中、取材・執筆も続けました。一昨年には「朝鮮半島有事の際、事前協議なしの在日米軍出撃」を認めた密約文書を米国出張で発掘し、「大学発のスクープ」と銘打ちました。退職後はもっと取材・執筆に打ち込みたい、と楽しみにしています。

さてジャーナリストに必要なものとは何でしょう。見識とアクセス、だと私は思います。見識があっても、政府などの 取材先へのアクセスがないと取材ができません。しかし、今の日本のジャーナリズムはアクセスを過剰に重視し、報道の意義など問わず「特ダネ」をと奨励しています。歴史観も世界観も哲学もなく、目先の特ダネを追っていると社会は堕落し、メディアは廃れます。見識を磨く、という意味で、本学に在籍できたのは幸せでした。骨太のジャーナリストを育てる夢は未完ですが、志願者が 倍増になったメディアプロフェッショナル論講座のこれからに期待したいと思います。

講師紹介

春名 幹男(はるな・みきお)国際言語文化研究科教授

学歴

  • 1965-1969 大阪外国語大学 外国語学部ドイツ語学科

取得学位

  • 1969 文学士

職歴

  • 1969-1971 共同通信社大阪支社社会部記者
  • 1971-1974 共同通信社京都支局記者
  • 1974-1979 共同通信社本社外信部記者
  • 1979-1984 共同通信社ニューヨーク特派員
  • 1987-1990 共同通信社ワシントン特派員
  • 1993-1997 共同通信社ワシントン支局長
  • 1997-2004 共同通信社本社編集委員兼論説委員
  • 2004-2007 大阪外国語大学大学院言語社会研究科非常勤講師
  • 2004-2007 共同通信社特別編集委員
  • 2007 名古屋大学大学院国際言語文化研究科教授
  • 2008 大阪大学大学院言語文化研究科非常勤講師
  • 2009 早稲田大学大学院政治学研究科非常勤講師

研究経歴

  • 1996-1998 「外交政策決定要因研究会」(PHP研究所)
  • 2002- 日米ラウンドテーブル「生物テロと被害管理—日米安全保障協力への新たなアプローチ」(総合研究開発機構、ジャパン・ソサエティー)
  • 2003-2005 「東アジア島国連携研究」プロジェクト(東京財団)
  • 2004- 「東アジア共同体評議会」有識者議員(日本国際フォーラム)

専門分野

  • 国際関係論
  • ジャーナリズム
  • アメリカ政治・外交
  • インテリジェンス

研究課題

  • 2007-2010 日本の戦争責任に関する米国の思考と文書公開
  • 2007-2010 日米中関係の展開, 特に田中角栄政権の日中国交回復が日米関係に与えた影響

受賞学術賞

  • 2004 日本記者クラブ賞:長年、日米関係の調査報道で数々のスクープを放ったことが評価された。
  • 1994 ボーン・上田記念国際記者賞:米国の情報公開制度を利用して、日米関係の陰の部分に光を当て評価された。

講義ビデオ

『密約』調査を終えて

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講義資料

後輩へのメッセージ


投稿日

May 07, 2020