| 講師 | 勝野 雅央 教授 ほか |
|---|---|
| 開講部局 | 医学部/医学系研究科 2025年度秋学期(選択特別講義) |
| 対象者 | 医学部4年生 |
医学研究の基本は、学問的な「疑問」を解決することです。そうした疑問(リサーチクエスチョン)の多くは、診療上の気づきや問題点です。一人の患者さんとの出会いが研究の始まりになったり、研究を大きく変えることがあります。また、目の前の患者さんからはわからないことでも、多くのデータを見ることでわかってくることもあります。
本コースでは、脳神経研究を題材として、患者さんとの出会いがどのように研究を変えるのか、臨床に根差した研究の具体例を通じて学びます。診療が研究に、そして研究が社会へとつながる重要性と素晴らしさを理解してもらえたらと思います。
授業終了時に学生は、以下のことができる。
患者さんとの出会いが研究の方向性をどう変えるのか、研究者のモチベーションをいかに高めるのか、を5回シリーズで講義します。最終回の「みんなで考えよう!20年後の脳神経内科」では、講師と学生が一緒に授業を創ります。と言いますのは、パワーポイントにMicrosoft Formsをプラグインして、学生に質問を投げかけ、その回答を全員で共有する形式をとっています。また、スライドはあらかじめ多めに用意しておき、Formsで多くの学生から意見が寄せられた項目を選んで深堀解説をします。授業で紹介できなかった内容も含め、「完全版」のレクチャーはYouTube上で公開し、各自で復習してもらえるよう工夫しています。
臨床の現場では、教科書に記載されていないことが多々あり、疑問や困りごとに少なからず直面します。それらを研究として取り組み、得られた結果をどのように患者さんに還元するのか?多職種で取り組むメリットとは? 楽しく研究をすすめるためのTipsなどについてお話しします。
・神経変性疾患、パーキンソン症候群、進行性核上性麻痺、転倒予防、多職種連携、共同研究
神経疾患の患者さんの脳で何が起きているかについて学びます。実際の患者さんの脳を取り出して観察すると、診断はもちろん、病態解明・診断・治療のヒントがわかることもあります。
・神経病理、神経変性疾患、横断的研究
脳神経内科診療の患者さんとの出会いから得られる臨床的疑問(clinical question)を基に病態解明を目指す基礎研究へのプロセスを紹介します。神経難病や難治性筋疾患の非典型例に対する最先端のゲノム解析を起点とした、病理学的検討、分子病態研究、動物モデル開発、治療標的探索を取り上げ、大学病院と研究機関で働く研究医(physician scientist)の役割について学びます。
・ゲノム解析、進行性核上性麻痺、先天性ミオパチー、レジストリ、バイオレポジトリ
患者が日常生活のどの部分で困難を感じているかを理解し、ニーズを反映したクリニカルクエスチョンを持つことは、診断や治療の進歩に直結します。さらに、患者や市民は、これまで研究の対象として扱われることが一般的でしたが、彼らが研究のパートナーとして重要な役割を果たすことについても学びます。
・トランスレーショナルリサーチ、医師主導治験、クリニカルクエスチョン、早期診断・早期治療、Patient and Public Involvement
20年後の社会課題は何か?それを克服する科学技術は何か?そして20年後の脳神経疾患の診断や治療、予防はどのようになっているだろうか?スマートフォンを使った双方向授業で、教室全体で考えてみたいと思います。
・社会課題、科学技術、未来、夢
教科書:教科書は指定しませんが、毎回の授業で講義資料を配付します。
参考書:各回の担当教員が必要に応じて参考文献やサイトを紹介します。
本コースでは、知識習得ではなく、感性や想像力を高めることを目的とします。授業で感じたことを、将来のキャリアに生かしてください。
授業への出席とレポートを総合的に評価します。
医学研究の魅力を理解できることを合格の基準とします。

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December 10, 2025