国際法各論Ⅰ

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講師水島 朋則 教授
開講部局法学部/法学研究科 2023年度春学期
対象者法学部3・4年生 (2単位週1回全15回)

授業の目的

貿易や投資など、基本的には国ではない経済主体(企業など)の活動を、基本的には国の間の法である国際法(条約)が、どのように規制しているのでしょうか。経済に関するさまざまな分野における国際法上の主要な論点について、例えば、世界貿易機関(WTO)における日本産水産物等に対する韓国の輸入規制事件や、TPP協定(および包括的・先進的TPP協定)、日米貿易協定、投資条約に基づく仲裁(野村證券グループによるチェコでの投資に関するサルカ事件など)を取り上げながら授業します。

到達目標

(1)国際社会において生ずるさまざまな経済(および労働)問題について、それを国際法の観点からも考えてみるための基本的な能力を養う。

(2)国際法が国内法(日本法など)や企業などの活動に及ぼす影響について理解し、国際的な視野から国内法システム全体を見渡す感覚を高める。

(3)これらを通じて、「法」というものについて考えるための1つの素材を得る。

授業の内容や構成

第1回:イントロダクション―経済(および労働)に関する国際法の歴史的展開について―
第2回:貿易に関する国際法(1)―WTOの基本原則について―
第3回:貿易に関する国際法(2)―WTOの基本原則に対する例外について―
第4回:貿易に関する国際法(3)―WTOにおける貿易救済措置について―
第5回:貿易に関する国際法(4)―サービス分野におけるWTOの規律について―
第6回:貿易に関する国際法(5)―世界的なWTO体制の下での地域的・少数国間貿易条約について―
第7回:通貨・金融に関する国際法(1)―国際通貨基金(IMF)について―
第8回:通貨・金融に関する国際法(2)―国際復興開発銀行(IBRD)について―
第9回:投資に関する国際法(1)―投資紛争解決条約(ICSID条約)について―
第10回:投資に関する国際法(2)―投資協定が対象とする「投資家」と「投資財産」について―
第11回:投資に関する国際法(3)―収用禁止・公正衡平待遇原則について―
第12回:投資に関する国際法(4)―内国民待遇・最恵国待遇原則について―
第13回:国際経済法と国際労働法の交錯(1)―国際労働機関(ILO)について―
第14回:国際経済法と国際労働法の交錯(2)―social dumping問題について―

授業の工夫

授業で取り上げる条約などの多くは、外国語(とくに英語)で作られ、条約集などに載っている日本語の条文は、ほとんどの場合、公式あるいは非公式の翻訳にすぎず、正文ではありません。できるだけ正文を前提に授業をするため、授業用資料では、条約などについては原則として(英文があれば)英文のまま載せるようにしています。また、大学の授業では、とりわけこの授業のように講義形式の場合、どうしても学生が受け身になりがちなため、できるだけそれぞれの学生の主体性を引き出し、自分自身で考えさせることを目的として、授業用資料を読んでいることを前提とした事前課題を課すとともに、授業をふまえて自分自身の考えをまとめてもらう事後課題を毎回課すことにしています。

評価方法と基準

成績評価の基本的なあり方としては、上の「到達目標」に達しているか否かの判断となりますが、具体的には、各回について事前課題と事後課題などを基に各回100点を上限に評価し、その平均点に基づいて、最終的な成績評価を行います。

教科書

とくに指定しません。

参考書

適宜指示しますが、さしあたり下のものを挙げておきます。

  • 経済産業省通商政策局編『2023年版不公正貿易報告書』

  • 中川淳司ほか『国際経済法(第3版)』(有斐閣、2019年)

  • 柳赫秀編『講義 国際経済法』(東信堂、2018年)

  • 松下満雄・米谷三以『国際経済法』(東京大学出版会、2015年)

  • 中川淳司『WTO 貿易自由化を超えて』(岩波新書、2013年)

  • 小寺彰編『国際投資協定』(三省堂、2010年)

  • 松下満雄ほか編『ケースブック WTO法』(有斐閣、2009年)

  • 吾郷眞一『国際経済社会法』(三省堂、2005年)

課外学習等

事前課題・事後課題に取り組み、提出してください。

講義資料

第14 回:国際経済法と国際労働法の交錯(2)


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投稿日

September 30, 2024