健康・スポーツ科学 講義

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講師石田 浩司 教授
開講部局総合保健体育科学センター 2024年度春学期
対象者理学部・理学研究科, 医学部・医学系研究科, 工学部・工学研究科, 農学部・生命農学研究科 学部1年生

達成目標

 運動すると、呼吸、循環、神経、筋などの生体の諸機能は素晴らしい適応を示します。本講義では、この運動による身体諸機能の適応のしくみについて学びます。さらに、普段の生活に必ず役に立つような、トレーニング法や暑い環境への適応、ダイエット法や呼吸法など、最新の運動生理学的トピックスについても学びます。これらの基礎的知識を習得することが、まず一つ目の目標です。

 一方、若いころの体力は現在および将来の健康と深く結びついています。そこで本講義では体力テストを実施し、現在および将来の健康・体力を客観的に判断できるようになることが、二つ目の目標です。

 自分の体力を把握し、現在・今後の生活等を考慮し、健康のためにどのような運動に取り組めばいいかを考え、自分で運動処方を作成する能力を身につけることを最終目標とします。

授業の工夫

 この授業では、自分の健康や体力について現状を把握し、将来に向けてどうすべきかを考えてもらうように仕向けます。具体的 には、体力測定を実施し、同性同年齢と比較して自分の体力(筋力や持久力など)を5段階相対評価し、現時点で足りないものや、加齢による影響を考慮し、より増進しなければならないものなどを自己分析し、それに対する処方(トレーニング法)を自分で作成できるようにしてもらいます。それを最終レポートとして、自らを対象とした実験レポートのような形に仕上げてもらいます。

 また、健康に関する情報は世の中に入り乱れていますが、自分で正しいかどうか判断できる能力を身につけてもらうよう、授業で新しい情報(例:内臓脂肪減少薬によるダイエット法)を紹介し、科学的観点からその可否について説明するようにしています。合わせて、健康や運動・トレーニングについて、例えば熱中症予防の水分補給法など、普段の生活ですぐに役立つ知識を身につけてもらうようにしています。

 評価については、最終レポートを70点、平常点を30点で換算して成績を出します。平常点としては、まず1回の授業の最初の部分で、本日のキーワードなどを学生がスマホやノートPCで、TACTという名大の授業用のインターネットを用いたコミュニケーションツールを使って入力させ、正しく入力されていれば、出席点が各自の成績に自動的に加算されるようにします。また、授業の最後10- 15分を使い、その日の授業の理解度を確認するため、TACTの小テスト機能で10問程度のクイズ的な正誤問題(1問につき3題)をスマホ等を使って提出させ、自動で採点された結果を各自の成績に自動的に加算されるようにしています。授業を聞かないとわからない問題が多く、学生も真剣に授業を聞くようになり、出席率もかなり高くなっています。

授業の内容や構成

1. ガイダンス・イントロと共通授業(1)
授業についての説明とオンデマンド動画:「生活習慣病について」
2. 健康と運動・体力
現代社会と健康、運動の必要性、体力の分類
3. エネルギー代謝と栄養
エネルギー供給機構、運動と栄養
4. 神経・筋機能
神経の分類と働き、筋線維タイプ、運動様式
5. 呼吸・循環機能
酸素摂取とガス交換、最大酸素摂取量
6. 呼吸法(オンデマンドで実施)
講義動画:呼吸のメカニズム、運動時や健康にいい呼吸法
7. 筋力・パワートレーニング
トレーニングの原則、筋力トレーニング方法・効果
8. 持久力トレーニング
持久力トレーニング方法・効果、ディトレーニング
9. ダイエットと運動
様々なダイエット法の効果、正しいダイエット法
10. 環境と運動及び体力測定法
暑熱環境での運動、体力テストの意義、測定方法
11. 体力テスト (1) または共通授業(感染症と薬物+喫煙と飲酒,心肺蘇生法)
12. 体力テスト (2) または共通授業(感染症と薬物+喫煙と飲酒,心肺蘇生法)
13. 体力テスト (3) または共通授業(感染症と薬物+喫煙と飲酒,心肺蘇生法)
3回のうち1回だけ体力テストに参加、それ以外はオンデマンドで共通授業を2回実施
14. 体力テストの評価とまとめ
相対評価の仕方、トレーニング処方、最終レポートの書き方
15. 最終レポート作成
  • 2~10の授業で運動生理学的な基礎知識を習得し、11~13の体力測定で自分自身の体力・健康度を測定・評価し、15の最終レポートで自分の運動処方を完成させます。
  • 体力測定は、握力、背筋力、体前屈、垂直飛び、体脂肪量、9分間の自転車漕ぎ運動などです。設備上1回でできる人数が30~40人程度に限られているので、3回に分けて実施します。他のグループが体力テストを実施している時間(コマ)は、家等でオンデマンド課題を実施してもらいます。

教科書

毎回、授業内容をまとめた穴あき式のレジメを配布します。

参考書

「呼吸の科学」,石田浩司 著,講談社ブルーバックス,ISBN 978-4-06-525858-3(購入する必要はありません)

担当教員からのメッセージ

 「健康」に運動が必要であることは言うまでもありませんが、間違った運動をすることで怪我などで不健康にもなりますし、間違ったダイエット法で痩せようとして、結局太ってしまったり、からだを壊してしまうことは、よくあることです。テレビや雑誌に氾濫する健康情報(こうすれば痩せられるなど)は、必ずしも正しくはありません。この講義を通して、自分自身の身体の仕組みを知り、間違った知識を正し、現在そして将来の生活に役立つ知識を得ることができるなど、健康に関する自己管理能力を高めることが可能です。

 体力テストは、体育館で実施し、握力、垂直飛び、体前屈などの他、自転車エルゴメータを3段階の負荷で3分ずつ漕いでもらい、持久力を客観的に測定します。持久走や50m走など(運動能力テスト)は実施しないので、安心してください。

 最終的には、自分の体力を客観的に診断・評価し、それに対して自分のライフスタイルを考慮しながら、自分で自分の現在および将来、どのような運動をしたらいいか考え、理論的/原則的な運動処方(運動/トレーニング種目、運動強度、時間、繰り返し数など)を、最終レポートとして作成してもらいます。A4版1枚程度の簡単なものではなく、実験のレポートと同じように、自分を研究対象者にして実験(体力テスト)を実施し、結果を評価して考察し、結論(運動処方)を書くような感じです。

 出席確認や理解度確認は、主に授業中にTACTの小テストや課題を通じて実施します。出席は必須ではありません。しかしいい評価(A)が欲しい場合は、出席して、かつ授業をよく聞いておいた方がいいでしょう。

講義資料

呼吸法


クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
この 作品 は クリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。


投稿日

October 07, 2024