民事訴訟法Ⅰ

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講師村上 正子 教授
開講部局法学部/法学研究科 2022年度春学期
対象者法科大学院既修1年・未修2年

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授業の目的

本講義では、民事訴訟を規律する法律である民事訴訟法の内容を、訴えの提起から判決が下されるまでの第一審手続を中心に、訴訟手続の流れにそって説明する。本講義は,民事訴訟法に関する知識を断片的に提供するのではなく,体系的に整理された基礎理論と個別の論点を、手続全体の流れとの関係で受講者全員が理解することを目的とする。 単に現時点における実務処理や教科書の抽象的な記述を暗記するだけではなく、当事者間の衡平、裁判の適正・迅速という民事訴訟の理念を実現するために考慮されるべき要素と、それぞれのバランスをどうとるべきかについて、自分なりに利益衡量できるようになること、さらには実務における法形成ができるようになるための準備段階として、基礎理論の理解を深めることを目指す。 なお、本講義においては、「法科大学院における共通的な到達目標」を踏まえつつ、具体的な講義内容を設定している。

授業の工夫

私が担当している「民事訴訟法」という科目は、民事裁判の手続を規律する法律を扱うものです。学生にとっては法律を学んでいても裁判は身近なものではなく、裁判官や弁護士などの専門家に独占された領域と受け取られやすいものです。そこで講義では、まずは出来るだけ具体例を用いながら、馴染みのない裁判のイメージをつかめるように工夫しています。また、裁判の手続は鎖状につながっているので、個々の論点が手続全体の流れの中でどのように位置づけられるのかを、常に意識させるようにしています。法科大学院の講義は双方向が原則ですので、予習用のレジュメは質問形式にし、講義では学生との質疑応答を通して、重要判例や学説の具体的なポイントをわかりやすく説明するように心がけています。

到達目標

1:民事訴訟法の基本概念および基本原則を正確に理解することができる。
2:与えられた事案をもとに、争点・論点を把握することができる。
3:通説・判例を正確に理解する。
4:実体法との関係を意識できる。
5:多様な見解について、それぞれの見解の根拠や批判を理解し、与えられた事案に適用することができる。
6:個別の論点の位置づけを手続全体との関係で理解する。

授業の内容や構成

1:ガイダンス・民事訴訟法総論(1)
〔1〕民事訴訟制度の目的や基本構造について説明する 。
〔2〕民事訴訟とADR、執行との関係
〔3〕民事訴訟手続の基本的な流れ
事前の資料に従って予習し、授業の際に示される資料及び解説を用いて復習すること。 受講に際しての注意事項等について説明をする。

2:民事訴訟法 総論(2)
〔1〕民事訴訟と憲法
〔2〕民事訴訟と民法
〔3〕訴訟と非訟
〔4〕審判権の限界
事前の資料に従って予習し、授業の際に示される資料及び解説を用いて復習すること。 判例については事案と判旨をまとめておくこと。

3:裁判所
〔1〕民事裁判権と管轄権
〔2〕事物管轄と土地管轄
〔3〕裁判所の中立
事前の資料に従って予習し、授業の際に示される資料及び解説を用いて復習すること。 判例については事案と判旨をまとめておくこと。

4:訴えと訴訟の対象
〔1〕訴えとは
〔2〕訴えの3類型
〔3〕訴訟物
〔4〕請求の特定
事前の資料に従って予習し、授業の際に示される資料及び解説を用いて復習すること。 判例については事案と判旨をまとめておくこと。

5:訴えの利益(1)
〔1〕訴えの利益とは
〔2〕給付の訴え(将来給付の訴え)の訴えの利益
事前の資料に従って予習し、授業の際に示される資料及び解説を用いて復習すること。 判例については事案と判旨をまとめておくこと。

6:訴えの利益(2)
〔1〕確認の訴えの訴えの利益
〔2〕形成の訴えの訴えの利益
事前の資料に従って予習し、授業の際に示される資料及び解説を用いて復習すること。 判例については事案と判旨をまとめておくこと。

7:当事者(1)
〔1〕民事訴訟における当事者概念
〔2〕当事者の確定
事前の資料に従って予習し、授業の際に示される資料及び解説を用いて復習すること。 判例については事案と判旨をまとめておくこと。

8:当事者(2)
〔1〕当事者能力について
〔2〕訴訟能力について
〔3〕訴訟代理について
事前の資料に従って予習し、授業の際に示される資料及び解説を用いて復習すること。 判例については事案と判旨をまとめておくこと。

9:当事者(3)
〔1〕当事者適格とは
〔2〕当事者適格の原則
〔3〕第三者の訴訟担当
事前の資料に従って予習し、授業の際に示される資料及び解説を用いて復習すること。 判例については事案と判旨をまとめておくこと。

10:提訴後の手続
〔1〕訴状審査
〔2〕送達の種類
〔3〕送達の瑕疵と救済
事前の資料に従って予習し、授業の際に示される資料及び解説を用いて復習すること。 判例については事案と判旨をまとめておくこと。

11:提訴・訴訟係属の効果(1)
〔1〕実体法上の効果
〔2〕訴訟法上の効果(重複訴訟の禁止の判断基準)
事前の資料に従って予習し、授業の際に示される資料及び解説を用いて復習すること。 判例については事案と判旨をまとめておくこと。

12:提訴・訴訟係属の効果(2)
〔1〕重複訴訟の禁止(応用)
事前の資料に従って予習し、授業の際に示される資料及び解説を用いて復習すること。 判例については事案と判旨をまとめておくこと。

13:訴訟における審理(1)
〔1〕弁論主義とは(審理における裁判所と当事者の役割分担)
〔2〕職権探知・調査
事前の資料に従って予習し、授業の際に示される資料及び解説を用いて復習すること。 判例については事案と判旨をまとめておくこと。

14:訴訟における審理(2)
〔1〕弁論主義の適用される事実
〔2〕裁判上の自白
事前の資料に従って予習し、授業の際に示される資料及び解説を用いて復習すること。 判例については事案と判旨をまとめておくこと。

15:訴訟における審理(3)
〔1〕弁論主義と釈明
事前の資料に従って予習し、授業の際に示される資料及び解説を用いて復習すること。 判例については事案と判旨をまとめておくこと。

16:中間試験

17:手続の進行と口頭弁論(1)
〔1〕職権進行主義
〔2〕口頭弁論の諸原則
事前の資料に従って予習し、授業の際に示される資料及び解説を用いて復習すること。 判例については事案と判旨をまとめておくこと。

18:手続の進行と口頭弁論(2)
〔1〕不熱心な訴訟追行への対応
〔2〕手続の停止と中断・受継
事前の資料に従って予習し、授業の際に示される資料及び解説を用いて復習すること。 判例については事案と判旨をまとめておくこと。

19:手続の進行と口頭弁論(3)
〔1〕争点整理手続
事前の資料に従って予習し、授業の際に示される資料及び解説を用いて復習すること。 判例については事案と判旨をまとめておくこと。

20:証拠の収集と証拠調べ(1)
〔1〕提訴前の情報及び証拠の収集と方法
事前の資料に従って予習し、授業の際に示される資料及び解説を用いて復習すること。 判例については事案と判旨をまとめておくこと。

21:証拠の収集と証拠調べ(2)
〔1〕証拠調べの手続(総論)
事前の資料に従って予習し、授業の際に示される資料及び解説を用いて復習すること。 判例については事案と判旨をまとめておくこと。

22:証拠の収集と証拠調べ(3)
〔1〕証拠調べの手続(各論)
〔2〕証人尋問と書証(文書提出命令)
事前の資料に従って予習し、授業の際に示される資料及び解説を用いて復習すること。 判例については事案と判旨をまとめておくこと。

23:証拠の評価と証明責任(1)
〔1〕自由心証主義
〔2〕証明度
事前の資料に従って予習し、授業の際に示される資料及び解説を用いて復習すること。 判例については事案と判旨をまとめておくこと。

24:証拠の評価と証明責任(2)
〔1〕証明責任とは
〔2〕証明責任の分配
事前の資料に従って予習し、授業の際に示される資料及び解説を用いて復習すること。 判例については事案と判旨をまとめておくこと。

25:証拠の評価と証明責任(3)
〔1〕立証負担の軽減
事前の資料に従って予習し、授業の際に示される資料及び解説を用いて復習すること。 判例については事案と判旨をまとめておくこと。

26:訴訟の終了(1)
〔1〕当事者による訴訟終了
〔2〕訴えの取下げと訴訟上の和解
事前の資料に従って予習し、授業の際に示される資料及び解説を用いて復習すること。 判例については事案と判旨をまとめておくこと。

27:訴訟の終了(2)
〔1〕終局判決による訴訟の終了
〔2〕判決の種類と効力
〔3〕申立事項と判決事項
事前の資料に従って予習し、授業の際に示される資料及び解説を用いて復習すること。 判例については事案と判旨をまとめておくこと。

28:既判力(1)
〔1〕既判力(総論)
事前の資料に従って予習し、授業の際に示される資料及び解説を用いて復習すること。 判例については事案と判旨をまとめておくこと。

29:既判力(2)
〔1〕既判力の客観的範囲
事前の資料に従って予習し、授業の際に示される資料及び解説を用いて復習すること。 判例については事案と判旨をまとめておくこと。

30:既判力(3)
〔1〕既判力の主観的範囲
事前の資料に従って予習し、授業の際に示される資料及び解説を用いて復習すること。 判例については事案と判旨をまとめておくこと。

31:期末試験・講評

講義資料

判決手続きの流れ

第 28 回・第 29 回レジュメ

既判力フローチャート

既判力の主観的範囲(図)

成績評価の方法と基準

(1)平常点(講義への出席)20 点、
(2)中間試験 20 点及び
(3)学期末試験 60 点の総合評価により、60 点以上を合格とする。
到達目標(1)について:平常点
到達目標(2)について:中間レポート、学期末試験、平常点
到達目標(3)について:中間レポート、学期末試験、平常点
到達目標(4)について:中間レポート、学期末試験、平常点
到達目標(5)について:中間レポート、学期末試験、平常点
到達目標(6)について:平常点

教科書

特に指定しない。

参考書

高橋宏志=高田裕成=畑瑞穂編『民事訴訟法判例百選〔第5版〕』(有斐閣,2015 年)は授業に際して判例に関する理解を深めるためには必須。
高橋宏志『重点講義民事訴訟法【上】(第 2 版補訂版)』(有斐閣、2013 年)、同『重点講義民事訴訟法【下】(第 2 版補訂版)』(有斐閣、2014 年)は予習・復習のためには手元にあるのが望ましい。
特定の教科書は指定しないが、各自で予習・復習のために適宜体系書を選択・利用されたい。なお最近の体系書として、中野貞一郎=松浦馨=鈴木正裕編『新民事訴訟法講義[第3版]』(有斐閣、2018 年)、伊藤眞『民事訴訟法[第7版]』(有斐閣、2020 年)。
その他適宜講義中に示す。

課外学修等

事前にアップされたレジュメに沿って予習をすることと、講義後にアップされた解説を読んで復習すること。


クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
この作品はクリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 4.0 国際 ライセンスの下に提供されています。


投稿日

January 13, 2023