比較文化論-2016

default_image
講師宮地朝子 准教授
開講部局教養教育院 2016年度 後期
対象者文系学部 (2単位)

授業の内容

「言語」と「文化」には密接な関係がある。言語には、文化や社会のありようが反映している。 だから言語はそれぞれに多様であり変化し続ける。 このような見方に疑いがない一方で、言語は記号の体系とされ、情報伝達の手段とされる。 言語には類型や普遍的な構造があるという見方も一般的である。 多様性・動態と、普遍性・一般性。どちらも言語の本質だとすれば、文化と言語の関係はどう捉えられるだろうか。 文化や社会が関わるのは前者だけだろうか。この授業では、歴史資料史とバリエーションを豊富に持つ日本語を例に、両者の関係にもう少し分け入って考えてみたい。

授業の進め方と工夫した点

  1.    「比較文化論」という科目名を、担当者自身の課題と位置づけ、受講生とともに考える姿勢で進めた。言語を材料に文化を論じるには、言語、文化、および両者の関係の整理と立場の自覚が必要であることを繰り返し述べ、受講生自らの課題設定を促した。
    
  2.    受講生にとって材料に事欠かない“日本語”の多様な側面を具体的事例とした。
    
  3.    3回の論述課題を課した。授業の進捗や参考文献を踏まえ、言語と文化の多様な関係性を生む要因や、様々な問題設定に気づきながら受講者自身が考察を深めていく機会とした。
    
  4.    コメントペーパーを導入し、回答は導入や復習の契機とするなどして、可能な限り講義中で示した。受講生の主体的な授業参加と疑問点の共有、フィードバックの実体化を心がけた。
    

本授業の目的およびねらい

「言語」と「文化」には密接な関係がある。このような見方に疑いがない一方、言語は記号の体系とされ情報伝達の手段とされる。言語の現象面を根拠に文化を論じる場合、言語の多様性・動態だけでなくその普遍性一般性や構造的特性を考慮する必要がある。

この授業では、日本語のさまざまな現象を事例に、言語と文化の関係性を再検討する。言語が文化と密接に繋がりながら普遍的な構造を示すのはなぜかについて日本語研究の立場から論じることで、言語と文化の関係性の内実を自覚的に考察する材料を提示するとともに、受講者自身の言語に対するまなざしの意識化を目指す。

履修条件あるいは関連する科目等

本講義では主に日本語の事例を扱うが、比較して論じるには幅広い言語への関心が欠かせない。外国語はもちろん、方言や古代日本語などにも関心を持って受講すること。

関連する科目:すべての言語文化科目、「ことばの不思議」など

参考書

上野智子ほか編 2005『ケーススタディ 日本語のバラエティ』おうふう

石黒圭 2013『日本語は空気が決める 社会言語学入門 』光文社新書

P.トラッドギル 1974[土田滋訳 1975]『言語と社会』岩波新書

宮岡伯人編 1996『言語人類学を学ぶ人のために』世界思想社 その他、授業中に紹介する

授業内容

内容
1 一般に言語とは
言語の普遍 言語のレシピ 類型と構造
言語の動態 歴史・方言・位相差・文体差
2 一般に文化とは 固有の文化/変わる文化、声の文化/文字の文化
3 日本語の諸現象
3.1 日本語の歴史 情緒的な古代人、論理的分析的な現代人?
3.2 日本語の方言 東京人、大阪人、東北人?
3.3 日本語の文体 小説、手紙、論文、新聞
3.4 メディアと日本語 電話、メール、LINE、ツイート
3.5 日本語の話し言葉 若者言葉 ッス敬語 アニメ声 政治家口調「ぼく、ママどこ?」
3.6 バーチャル日本語 博士語、ヒーロー語、キャラ語尾
4 言語と文化、再び

講義資料

1: イントロダクション:言語とは

2: 文化/文化の中の言語とは

3: 日本語の多様性(1)

3 − 1: 日本語の多様性(2:歴史的変化)

3 − 2: 日本語の多様性(3:地域・方言差)

3 − 3: 日本語の多様性(4:文体差)

3 − 4: 日本語の多様性(5:メディアによる多様性)

3 − 5: 日本語の多様性(6:位相差)

3 − 6: 日本語の多様性(7:役割語)

参考文献リスト: 参考文献リスト

成績評価

平常点(出席状況および講義中に提示する小課題の提出)(50%)及び期末論述試験(50%)の総合評価による。
出席状況の悪い者(1/3 以上欠席の者)は期末試験の受験資格を失う。


投稿日

March 11, 2020