基礎セミナーA-2013

講師江頭智宏 准教授
開講部局教養教育院 2013年度 前期
対象者農学部 文系学部 情報文化学部 (自然) 理学部 工学部 (Ⅰ・Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ系) (2単位週1回全15回)

授業の工夫

基礎セミナーが導入科目であることを意識したことに尽きます。 導入科目の役割は大学での学習において最も基礎的なスキルである言語スキルの習得にあると考え、ディスカッション、ディベート、プレゼンテーション等を通して、受講生自らが言葉を使う時間を積極的に設けました。そのことで受講生の主体的な授業参加を達成することができたと思います。

さらに導入科目がより根底においてもつ役割は、1 年生の前期という大学にまだ不慣れで不安な時期に特に重要な、仲間づくりにあると考えました。多人数形式の講義が多い中にあって、少人数の演習形式で、かつ扱うべき内容が束縛されておらず、しかも同級生だけが受講する基礎セミナーは、まさに仲間づくりのための格好の機会のひとつとなりえます。そうした意識のもと、基礎セミナーの時間を、受講生にとって居心地が良く、打ち解けた交流ができる空間となるように心掛けました。そのための工夫として、第 1 に、初回は授業担当者も含めて自己紹介の時間を十分にとったこと、第 2 に、特に前半のうちは、例えばサークルに入ったないしはアルバイトを始めたなど、この一週間のうちにあった新しいことを個々に話して頂いたこと、第 3 に、三週間の長きにわたって仲間づくりに資するような気楽に参加できるゲーム(水夫とフィアンセゲーム,第一印象ゲーム,NASA ゲーム)を実施したこと、第 4 に、授業の全般を通して、受講生がどのような内容であっても自由に発言できる雰囲気をつくったことが挙げられます。さらには授業担当者自身が授業の時間を楽しむことにも心掛けました。受講生の資質に多分に救われた部分も大きかったですが、こうした試みを通して、仲間づくりに資するような良い雰囲気をつくることができたのではないかと思います。

加えて、導入科目という観点から、第 2,3,5 講において、ゲームから出発して大学での学習の意義や目的(価値観の多様性を認められること、思い込みや偏見に左右されないこと、意見交換の重要性を体得することなど)へと展開させたことも授業の工夫として挙げられます。

講義概要

今後大学で学習するうえで必要となる、読む、書く、聞く、話す、討論する、発表するといった言語スキルを培うことを目的とした導入科目です。なお、授業の素材としては、所属する学部に比較的捉われずに議論しやすい教育問題に焦点を当てます。また、大学生活を過ごすうえで重要であると考えられる対人関係スキルの習得も合わせて狙いとしています。

具体的な授業の内容は、自己紹介や授業の感想の発表を中心とした初回と最終回のほかに 3 つに分かれます。第 1 に、受講生同士の交流も目的として、小グループに分かれてゲームを行います。そのうえで、各回のゲームのテーマを踏まえながら、大学で学習する意義や目的へと授業を展開させます。第 2 に、受講生全体で討論を行います。その際にディスカッションとともにディベートも経験し、また、ディスカッションの素材としては、新聞の社説、映像、絵本と様々なものを駆使します。第 3 に、各自が設定したテーマに従って調査・研究を進めていった成果についての、パワーポイントによるプレゼンテーション(20 分程度)を行います。調査・研究を進めるうえで図書館の存在は欠かせないものであるため、授業の前半で、図書館の協力のもとに文献検索の実習を行います。個別の調査・研究であるので、そのために授業時間を割くことはしませんが、適宜進捗状況を報告して頂きます。

履修条件あるいは関連する科目等

特にありません。

成績評価の方法

プレゼンテーション(40%),ディスカッションへの参加貢献度(40%),レポート(20%)で評価します。履修取り下げ制度を採用します。

教科書

特に指定しません。

参考書

特に指定しません。

注意事項

特にありません。

担当者からの言葉

名古屋大学には昨年の 10 月に着任しましたので、名古屋大学に関してはまだまだ「1 年生」のような感じです。ぜひいろいろな意見の交流ができればと思っています。

スケジュール

講義内容
1 オリエンテーション,受講生と担当教員の自己紹介
2 大学での学習と人間関係づくりゲーム(1)−多様な価値観の交流,水夫とフィアンセ−
3 大学での学習と人間関係づくりゲーム(2)−思い込み・偏見の排除,第一印象ゲーム−
4 図書館での文献検索実習
5 大学での学習と人間関係づくりゲーム(3)−意見交換の重要性,NASAゲーム−
6 ディスカッションによる討論−いじめ問題について−
7 ディベートによる討論−ゆとり教育問題について−
8 多様な素材を用いたディスカッション(1)−新聞の社説の比較を通して−
9 多様な素材を用いたディスカッション(2)−映像資料を通して−
10 多様な素材を用いたディスカッション(3)−絵本を通して−
11 調査・研究のプレゼンテーション1回目
12 調査・研究のプレゼンテーション2回目
13 調査・研究のプレゼンテーション3回目
14 調査・研究のプレゼンテーション4回目
15 まとめ,授業の感想の発表

講義ノート

第 2 講

第 3 講

第 5 講

第 6 講

  • 森田洋司「第 3 章 いじめとは何か」『いじめとは何か − 教室の問題,社会の問題』 中央公論新社,2010 年,65-113 頁

第 7 講

  • ディベート
  • 苅谷剛彦「ゆとり教育の見直しには学力低下だけではないもっと大きな理由がある」 文芸春秋編『日本の論点 2006』文芸春秋,2006 年,644-651 頁
  • 和田秀樹「競争なしで誰が努力するか − 自主性まかせのゆとり教育は失敗だった」 文芸春秋編『日本の論点 2009』文芸春秋,2009 年,560-567 頁

第 8 講

第 9 講

  • 特別授業 差別を知る〜カナダ ある小学校の試み」(NHK,BS 世界のドキュメンタリー,2007 年 10 月 21 日放送)

第 10 講

  • ヘレン・バンナーマン文,フランク・ドビアス絵,光吉夏弥訳『ちびくろ・さんぼ』瑞雲舎,2005 年
  • ヘレン・バンナーマン文・絵,灘本昌久訳『ちびくろさんぼのおはなし』径書房,1999 年

第 11〜14 講


投稿日

May 07, 2020