授業の内容
今年度は、アングロサクソン圏の教育思想と歴史をたどりながら、社会・文化・経済と教育の発展についてともに考えていく。特にアメリカに誕生した哲学、教育思想、教育実践を概説する。
授業の工夫
- この講義のテーマ・トピックスは、アメリカの歴史・政治・文化・教育であるが、できるだけシンプルな流れで展開するとともに、日本の教育や社会とのつながりや分析のための方法が得られるように工夫している。
- 歴史嫌いな受講生にもどこかで聞き覚えのある題材を契機に、興味を促し本格的な理解へと展開できるように心がけている。
- 各講義(の要点)は1から3のポイントで構成されており、講義の最初、また最後に問いの形式でまとめている。
- 講義ではあるが、適宜質疑と応答の時間をもうけ、またいくつかのグループに分かれて課題に取り組んでもらい、受講生同士の議論と意見交換ができるように工夫している。
授業のテーマ
アメリカの政治、経済、文化、教育
18 世紀から 20 世紀のアメリカの政治、経済、文化、教育の諸相のなかに、人間形成に関する基本的な考え方(哲学、思想)、個と社会の考え方、自由主義と共同体主義の対立、普遍主義的な考え方と多文化主義的な考え方、国家の捉え方などを学ぶ。
授業のねらい
アメリカの歴史一般、教育思想、教育哲学を学びながら、資本主義社会の変遷とポスト資本主義社会の行方、それらの社会における教育のあり方について基本的な知見と理解を得る。
教科書
特に指定しない。
参考書
特に指定しないが、講義中に紹介するとともに、資料などを配布する。
履修条件
第一に歴史に興味をもっていること、第二に思想、哲学に関心をもっていること。また一方的な講義ではなく、練習問題、ディスカッションなどを取り入れるので積極的な姿勢で履修のこと。
スケジュール
回 |
講義内容 |
1 |
第1講 人間形成を捉えるための基本的な枠組み
- 国家と教育−ポリティクスとしての教育
- 「人間性」はいつどのようにして形成されるか−教育の可能性は?
- 個と社会との関係
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2 |
第2講 植民地時代から独立まで
- 合衆国前史−新大陸への道(Way to the New Continent)
- 分離独立運動から憲法の制定まで
- アメリカの国璽Great Seal−われら神を信ず−
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3 |
第3講 富と徳の合一の精神:最初のアメリカ人−ベンジャミン・フランクリン
- フランクリンの生涯
- フランクリンの「教育思想」と実践
- フランクリンの思想の現代的意義(先駆性)
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4 |
第4講 フランクリンの思想の現代的意義(先駆性)
- ジョージ・ワシントンとジョン・アダムズ
- アメリカ民主主義の聖パウロ−アメリカ教育制度、黎明期の立案者Thomas Jefferson(1743-1826)
- 評価
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5 |
第5講 知的独立宣言−R.W.エマソンの教育思想:超越主義
- R.W.エマソン(Ralph Waldo Emerson 1803-1882)の教育思想
- H.D.ソロー(Henry David Thoreau, 1817-1862)の『森の生活』
- コンコード・サークルについて
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6 7 |
第6講 中間まとめ−多文化・多民族社会を捉えるための枠組
- 多民族国家、アメリカの建国の事情
- 文化的融合主義から文化的多元主義まで
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8 |
第7講 アメリカ近代公教育制度の出現と背景
- 19世紀前半の社会的状況
- 公立学校制度の基礎
- Horace Mann, 1796-1859の思想と実践
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9 |
第8講 海外教育思想移植期−1860年〜1890年
- 社会的背景(新大陸の産業革命)
- 海外教育思想・実践の移入
- ペスタロッチ主義
- フレーベル主義
- ヘルバルト主義
- 科学主義
- エドワード・A・シェルドン−オスウィーゴー教育運動の推進
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10 |
第9講 黄金狂時代のアメリカと「誇示的消費」
- The Gilded Age in U.S.
- J. P. モーガンのもう一つの顔
- 誇示的(顕示的)消費の時代−ヘンリー・ジェームズの小説から
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11 |
第10講 世紀転換期:多民族国家アメリカ
- 移民の歴史—旧移民と新移民
- 各論:三大移民グループ
- イギリス系アメリカ人
- ドイツ系アメリカ人(German American)
- アイルランド系アメリカ人
- テキスト:ジョン・スタインベック『アメリカとアメリカ人』平凡社
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12 |
第11講 プラグマティズムの黎明期−形而上学クラブからシカゴ実験学校まで
- 19世紀末の思潮
- C.S.パース(Charles Sanders Peirce, 1839-1914)の思想と生涯
- W.ジェームズの思想と生涯
- J.デューイの思想と生涯
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13 14 |
講義のまとめ
- アメリカの歴史・社会・文化・教育から、何を学ぶことができるか。
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15 |
総括・定期試験 |
講義ノート
第 1 講
第 2 講
第 3 講
第 4 講
第 5 講
第 6 講
第 7 講
第 8 講
第 9 講
第 10 講
第 11 講
成績評価
授業中に適宜実施するリアクション・ペーパー(20%)、定期試験(80%)から総合的に評価。