古代手工業生産史の考古学的研究—国分寺瓦を題材として—-2009

講師梶原義実 准教授
開講部局文学部/人文学研究科 2009年度 後期
対象者文学部2年生以上 (2単位週1回全15回)

授業の内容

日本古代の手工業生産について、おもに奈良時代における国分寺創建期の地方造瓦組織を題材として、その地域的諸様相を検討し、律令制の成立から変質、崩壊という過程において、どのような変遷を遂げていくかを論じる。

講義の目的としては、古代手工業生産に関する知識の取得ばかりでなく、本講義における担当者の研究手法を通して、受講者が自らの研究対象を深めていくにあたっての論理的思考や叙述能力を涵養することが望まれる。

授業の工夫

ほんの数十年前までの歴史学の中では、考古学という学問は、あくまで文献の残っていない時代、縄文時代とか弥生時代、せいぜい古墳時代くらいまでの研究をおこなうものであり、『日本書紀』などの正史の記述の信憑性が高くなってくる飛鳥期以降は、歴史復原においてはあくまで文献史学が本道であり、歴史考古学と呼ばれる研究分野は、補助学程度にとらえられてきていました。

しかしながら近年では、発掘調査による出土資料の増加や、歴史時代の遺構・遺物に関する研究の進展はめざましいものがあります。とくに文献に記載のすくない、古代の地方の様相や手工業生産のあり方、産業経済史的な視点においては、同時代資料である考古学の成果は無視できないものとなってきています。

この講義では、型式学的研究法をはじめとした、遺物から情報を引き出すための考古学的な方法論を駆使しつつ、考古学による律令期の地方行政の実態、手工業生産の管掌のあり方などについての復原をおこなっていきます。考古学による研究成果と、古尾谷先生の講義 にみられるような文献史学の成果を融合させることで、律令社会の実態により近づくことができると考えております。

履修条件・注意事項

とくになし。高校日本史程度の知識があれば望ましい。

古尾谷知浩先生より提供されている「古代国家と手工業」をあわせて受講することを推奨する。

テキスト・参考文献

講義中にプリントを配布する。

レポート課題

以下にあげたテーマのいずれかに沿って、各自題材を決定し、先行研究を踏まえつつ、自由に論述しなさい。

  • 中央と地方
  • 生産と流通
  • 情報の伝達と選択

スケジュール

担当者による講義をおこなう。

講義内容
1 オリエンテーション・瓦について
2 古代瓦に関する研究史(1)
3 古代瓦に関する研究史(2)
4 平瓦・丸瓦からみた造瓦工房
5 西海道における国分寺の造瓦組織(1)
6 西海道における国分寺の造瓦組織(2)
7 西海道における国分寺の造瓦組織(3)
8 山陽道諸国における平城宮系瓦の展開(1)
9 山陽道諸国における平城宮系瓦の展開(2)
10 東海地方における国分寺造瓦組織の研究(1)
11 東海地方における国分寺造瓦組織の研究(2)
12 奈良時代における伊勢・伊賀・志摩の官営瓦工房
13 国分寺瓦屋と瓦陶兼業窯(1)
14 国分寺瓦屋と瓦陶兼業窯(2)
15 瓦当文様に対する認知論的視座
授業のまとめ

講義ノート

第 1 回

第 2・3 回

第 4 回

第 5〜7 回

第 8・9 回

第 10・11 回

第 12 回

第 13〜15 回

評価方法(基準等)

出席点およびレポートで評価する。出席点 30%、レポート 70%。


投稿日

May 10, 2020