空間計画論

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講師加藤 博和 教授
開講部局工学部/工学研究科 2023年度秋学期
対象者学部2年生

授業の目的

経済メカニズムや土地制度などを背景とし、国土・都市の発展段階を意識した空間計画の理論について理解する。日本および海外における実際の空間計画制度について学習し、それらを相互比較することによって、21 世紀の日本および世界に求められる空間計画のあり方について探求する。

授業の目標

  1. 空間計画を考える上で必要となる経済学、土地制度、ストック、公共投資に関する基礎知識 とその計画への展開に関する知識を習得し、説明できる。
  2. 日本の空間計画の概略とその問題点を理解し、説明できる。
  3. 今後の日本にとって必要な空間計画のあり方について理解し、説明できる。

授業の工夫

空間計画論というのは一般的な用語ではありませんが、国土・広域・都市・地区といったさまざまな空間スケールでの土地利用・交通・施設等の配置計画を含むものです。また、デザイン面がどうしても注目されるのですが、それだけでなく対象地域の経済・社会・環境に大きな影響を与えるものであり、地域の興亡を決めるといっても過言ではありません。計画の実施は長期間を要し、影響は後世まで続きます。
計画の作成・実施に関しては土木工学・建築学のかかわりが大きいですが、経済学・経営学・社会学・地理学といった人文社会科学の知識も必須です。 そこでこの授業では、空間計画のために必要な様々な知識の基礎を教えるとともに、それが国土・都市の空間構造や人間活動を理解するためにどのように役立つかを、実社会で起こっていることを例に解説します。特に公共経済学については詳細に説明します。さらに、計画推進のために必要な財政・会計・制度・啓発といった様々な政策手法の基礎についても学びます。そして、計画が何を目指すべきなのかについても一緒に考えます。
空間計画は土地制度と大きくかかわっています。日本は土地に関する財産権が強いことで、空間計画がなかなか進まない問題点があります。それでも過去には、鉄道会社によるまちづくりが大都市周辺部開発で多く行われたり、名古屋市のように土地区画整理事業を用いて面的開発を進めたり、大規模ニュータウン開発や都心部再開発があったりと、様々な取組が行われてきました。それらの功罪についても考えていきます。
この授業を聞くことで、空間計画に関する基礎的な知識や考え方を知るだけでなく、社会経済の仕組みについても学ぶことができ、公共政策のあり方についてより深く考えられるようになることを目指しています。土木・建築技術者にとって必要なだけでなく、それ以外の皆さんにも知っていただきたい内容です。

授業の内容や構成

第1週 オリエンテーション
第2週 概説 -なぜ空間計画が必要か?-
第3週 国・都市の成長・衰退・再生メカニズムと空間計画
第4週 空間計画を理解するために必要な経済学
第5週 ストックの経済学
第6週 公共財と公共投資の社会経済的意義
第7週 土地税制・土地情報・土地市場制度と空間計画との関係
第8週 空間計画が環境問題に及ぼす影響
第9週 日本における空間計画制度の全体構成とプロセス
第10週 日本における都市計画の問題点と改善策
第11週 国土・都市計画技術者に求められる倫理
第12週 持続可能な都市経営のための空間計画
第13週 少子高齢化・人口減少下で必要な空間計画
第14週 情報社会・コロナ後の空間計画のあり方
第15週 試験

成績評価の方法と基準

  • 期末試験 70%,レポート 30%とする。60%以上の成績を合格とする。
  • 空間計画を考える上で必要となる経済学、土地制度、ストック、公共投資に関する基礎知識とその計画への展開に関する知識を有していることが合格の条件であり、より深い理解がなされていればそれに応じて成績に反映させる。

教科書

教科書は指定しないが、資料を適宜配布する。

参考書

  • 林良嗣・土井健司・加藤博和編著:都市のクオリティ・ストック-土地 利用・緑地・交通の統合戦略-,鹿島出版会,2009.9
  • 林良嗣・鈴木康弘編著:レジリエンスと地域創生 伝統知とビッグデータから探る国土デザイン, 明石書店,2015.3

教員からのメッセージ

日本の空間計画制度は多くの課題を抱えており、その結果、災害に強く風格ある国土・都市形成が阻害されている。それに対する問題意識と自分なりの改善策を持つことは、将来土木・建築分野に従事する技術者にとって必須の知識である。担当教員もその使命に燃えて授業を担当するので、受講者にもぜひこのような自覚を持って受講してほしい。

講義資料

講義動画

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クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
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投稿日

October 23, 2023