サイトマップお問合せヘルプ
講義資料
  • 授業一覧から探す
    • 教養教育院
    • 文学部・文学研究科
    • 教育学部・教育発達科学研究科
    • 法学部・法学研究科
    • 経済学部・経済学研究科
    • 情報文化学部
    • 理学部・理学研究科
    • 医学部・医学系研究科
    • 工学部・工学研究科
    • 農学部・生命農学研究科
    • 国際開発研究科
    • 多元数理科学研究科
    • 国際言語文化研究科
    • 環境学研究科
    • 情報科学研究科
    • 創薬科学研究科
    • 国際教育交流センター
    • 国際言語センター
    • 名古屋大学ラジオ公開講座
    • 退職記念講義アーカイブ
    • nuocwをフォローしましょう
    • 過去の特集ページ
    • 教員の方へ
    • NU OCW Podcast
      RSS を iTunes の "Podcast" にドラッグ&ドロップすると、ポッドキャストが登録されます。
      (iTunesは最新版をお使いください)
  1. ホーム >
  2. 国際言語文化研究科 >
  3. 対照表現論演習 I >
  4. 講義資料
授業ホームシラバス講義資料

講義ノート(後期分)

TPRに関して

TPRは、学習者が必ずしも学習開始時点から発話練習をする必要がないという前提に立ち、 聴解力の養成を出発点としたものである。つまり、学習者は、聞くことにより文を理解していくので、教師の発話は十分に検討されたものでなければならない。私は、TPR の実践の映画を見たことがあるが、 そこで扱われていたのは、日本人(あるいは日本人2世?)を教師とする日本語授業の風景であった。気付いたことは、教師が文字通り命令(「立て」、「すわれ」など)を発していること、日本語が不自然であること(「ドアへ走れ」、「窓へ行け」など)である。前者はおそらく、Asherのテキストにおける命令形(“Walk!”, “Stop!”, “Jump!”など)をそのまま日本語に置き換えたこと、後者は英語の前置詞をそのまま日本語の助詞に対応させて、“Walk to the door!”などを「ドアへ歩け」などとしたことに起因すると思われる(あるいは教師の日本語が不十分なのか?)。実践にあたっては動詞句の形を「〜てください」にし、前置詞相当語として必要に応じて「〜のところへ」、「〜の方へ」のように「名詞+助詞」の形を採用する方がいいと思われる。

この練習はかなりスピーディに行われるので、学習者は短時間のうちに相当多くの文を繰り返し聞くことになる。従って、聴解力の涵養にはかなり効果的である。しかし、それのみならず、短期間で、伝統的方法の数倍の量の文法事項を取り扱うことができるというメリットがある。 私のドイツでの日本語授業では、11回の授業ですでに次の文法事項を取り扱うことができた。

  1. 要求を表す形式:「〜てください」
  2. 名詞+格助詞:「私が」、「私の」、「私に」、「私を」など
  3. テーマ助詞:「今日は」など
  4. 文成分の順: 「〜は」−「〜が」−「〜に」−「〜を」−「動詞」など
  5. 形容詞・形容動詞の言い切り形: 「大きい」、「大きいです」、「静かだ」、「静かです」など
  6. 否定形:「書かない」、「書きません」、「書かないでください」など
  7. 付加語名詞:「机の上」、「日本語の本」など
  8. 付加語形容詞・形容動詞:「大きい本」、「静かな部屋」など
  9. 経過や結果を表す「〜ている」形: 「マルクさんが黒板に何かを書いています」、「コップに箸が入っています」など
  10. 関係文的付加語:「立っている学生」、「箸が入っているコップ」など
  11. 条件や時を表す「〜たら」:「私がボールを投げたら、そのボールをつかまえてください」など
CLLに関して

Curranによって提唱されたCLLの特徴は、あらかじめ用意された教材が(教師側にも)全く存在せず、学習者が自ら教材を作り上げていくこと、教師の方は完全に受動的立場にあり、授業をオーガナイズはするが Berater(助言者)にすぎず、基本的には、学習者に問われないかぎり何も教えないという点にある。授業の進行の第1段階の基本パターンは次の通りである。

  1. 学習者グループが会話のテーマを決める。到達言語で言えないことは母語で発話(初期の段階ではすべてがそうである)。教師が小さい声で到達言語に翻訳。学習者がそれをまねする。発話が長い場合は短く区切って行われる。到達言語で行われた学習者の発話はテープレコーダーに録音される。一通り録音が終わってからテープが再生される。
  2. 到達言語での発話が黒板に書かれ、その下に起点言語での逐語訳が書かれる。学習者は小グループに別れ、文構造、語順、意味などについて討論する。元のグループに戻り、発見したことを報告し合う。質問に対して教師が答える(それまでは教師はただお膳立てと翻訳をするのみ)。
  3. 学習者が(教師の協力を得て)作り上げた文や文断片の発音練習。伝統的方法とは逆に、先に学習者が文や文断片を発音し、教師は後からそれを(正しく)繰り返す。それを学習者がまた、正しい発音に従って繰り返す。これは、学習者が発音しなくなるまで繰り返される。
  4. 学習者は再び小グループに別れ、これまでに作った文(まだ消されずに黒板に書かれてある)に基づいて、新しい文を作る。元のグループに戻り、作った文を出し合う。教師はこれらの文を音声的に繰り返し、正しいモデルを与える。新しい表現、新しい現象が現れた場合は黒板に書く。
  5. 質問したり感想を述べたりする機会が学習者に与えられる。

以上が最初の段階である。Curranは全部で5つの段階を提唱している。第2段階以降はおよそ次の通りである。

  • 第2段階:学習者は直接到達言語を使用し始める。
  • 第3段階:全学習者が少なくとも簡単な発話を苦労せずに到達言語で理解するようになる。
  • 第4段階:発話がさらに複雑になる。教師は、間違いが生じたとき、援助が必要なときにのみ口出しをする。
  • 第5段階:教師は慣用句的表現やより高等な表現方法を提示するが、それ以外の点では学習者は完全に自立するようになる。

CLLというのは教師自らは何も教えないことに特徴がある。つまり、教師は、学習者から要求されたときに助言者として存在するもので、それ以外のときはオーガナイズするだけでほとんど何も言わない。しかし、必要とされるときは万能でなければならず、負担はかなり大きい。教師は 出発言語と到達言語を完全にコントロールできなければならない。学習者が出発言語で発する発話を、それがどんな発話であれ、瞬間的に到達言語に翻訳できなければならない。しかも、学習者がどんなコンテクストで、どんな含みで発話しようとしているかを瞬間的に把握するのはむずかしく、正しく翻訳するのは至難の技である。さらに、翻訳された文は学習者の学習モデルとなるものであるから、完全に正しく自然なものでなければならない。また、逐語訳やそのコメントに際してはかなりの対照言語学的知識が必要である。学習者の側には、自分たちの必要とする文を、文法事項の既習・未習に関係なく、自然な形で、自分たちの学びたいように学べるという利点がある。この方法には決定的な条件が2つあることだけは付け加えておきたい。それは、学習者の出発言語が共通していなければならないこと、教師がその出発言語を理解し使いこなせることである。

最終更新日:2008年04月11日
最終更新日の時点の講義内容で公開しております。
現在、この講義は開講されていません。

ページトップへ

http://ocw.nagoya-u.jp/