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授業の目標

この授業では,文の構造の中核的な存在である動詞に焦点を当て、動詞構文の意味的・構造的特徴と各動詞構文の相互の関係に関する理解を深め,また,異なるジャンルのコーパスから収集した実例の1例1例を精査し,言語の形と意味の関係を丁寧に考察する訓練をつむことで,高度な言語分析能力を養うことを目的としている。

日本語の動詞構文については,研究の蓄積が非常に多い。近年,そうした研究の成果をまとめた様々なレベルの多様な文献を入手できるようになった。いろいろなアプローチの様々な理論を学び,すでに明らかにされた文法の大枠を知識として持つことも言語学にとって必要ではあるが,単に文献を読むことだけでは言語を分析する力は養われない。理論も文法に関する知識も,本来言語を分析するための道具である。重要なのは,同時に実際の言語データ (現象)を分析し,そこから一般的な法則を見出す力をつけることであり,そうした力は実例の分析を通してしか養われない。

本講義では,多義の動詞や,テンス・アスペクト (シテイル),ヴォイス (使役構文と可能構文),ムード (証拠性に関わるヨウダとラシイ)を取り上げ,それぞれの先行研究の重要なものを講読し,意味と形 (構造)との関係を理解する。その上で,コーパスから収集した用例を先行研究が提示した分類の枠組みに沿って参加者各自が分類することを試みる。論文の中で簡素化された典型的な例文に比べ,実際のデータに現れる文の1つ1つは,文構造や文脈構造の要請によってさまざまな形で現れるため,分類は決して容易ではない。また,実際のデータは,従来の分類の枠組みや説明が決して十分ではないことも教えてくれる。実際の用例の1例1例といわば「格闘」し,何が典型なのか,何が周辺なのか,それはなぜ周辺的なのか,といったことを,分類作業を通して考えることで,言語を分析する確かな目が養われるだろう。実例の1例1例と深く向き合い,対象に沈潜することで,文を構成する様々な形式の何に注目すればいいのか,また,文の最終的な意味はどのように決定されるのか,ということを次第に理解し,日本語だけでなくあらゆる言語を見る感性や勘を磨くことができると考える。このような言語の形式 (構造)と意味との関係を探る訓練を通して,日本語のさまざまな表現に対する理解と分析能力を養い,高度な日本語教育への応用を目指す。

教科書

なし

参考書

  • 工藤真由美 (2014)『現代日本語ムード・テンス・アスペクト論』ひつじ書房
  • 尾上圭介 (編) (2004)『朝倉日本語講座 文法Ⅱ』朝倉書店
  • 寺村秀夫 (1982)『日本語のシンタクスと意味Ⅰ』くろしお出版
  • 渋谷勝巳 (2002)「可能」大西拓一郎編『方言文法調査ガイドブック』国立国語研究所
  • 志波彩子 (2015)『現代日本語の受身構文タイプとテクストジャンル』和泉書院

授業計画

以下を予定しているが,参加者の関心や理解度によって,随時変更の可能性がある。

講義内容
第1回 ガイダンス,動詞構文について,構文とは何か (体系・構造・要素)
第2回 日本語のテンス・アスペクトの分類 (先行研究概観)
第3回 「V-シテイル」の用例分析1
第4回 「V-シテアル」の用例分析2
第5回 使役構文の分類 (先行研究概観)
第6回 使役構文の用例分析1
第7回 使役構文の用例分析2
第8回 可能構文の分類 (先行研究概観)
第9回 可能構文の用例分析
第10回 可能構文の用例分析
第11回 証拠性を表わすラシイとヨウダの分類と相違 (先行研究概観)
第12回 ラシイの用例分析
第13回 ヨウダの用例分析
第14回 テキスト別 (文体別)の用例の割合とその意味
第15回 まとめ

成績評価

平常点 (授業中の発言・討論) (30%)、担当回の発表 (30%)、期末のレポート (40%)

最終更新日:2016年09月29日
最終更新日の時点の講義内容で公開を行っております。
最新年度の講義と内容が異なる可能性がありますのでご注意ください。

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