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開講部局:農学部・生命農学研究科

高倍鉄子 教授

最終講義 - 植物で明るい未来を

授業時間 2009年度退職記念講義
日時 2010/2/12 13:05-13:50
場所 生命農学研究科第12講義室

39年間ありがとうございました

私は1971年4月に名古屋大学農学部附属生化学制御研究施設で教務職員として働かせて頂くことになりました。その前は、理学部の大学院生として、低分子化合物のX線結晶構造解析の研究をしておりました。理学部から農学部に移った時に、初めて生物を対象とする学問の大変さに気づきました。生物は毎日しっかり見ていないと大切なサンプルを得ることすらできません。私は植物や光合成微生物を対象にさせて頂きましたが、生き物を見る目というものが、農学部出身の方に比べ劣っていました。何とか生化学というものが、身に付いたかなと自分で感じるまでに3年はかかりました。その間上司の赤沢尭先生や同僚の皆さまに大層ご迷惑をおかけしたことをお詫びしなければなりません。赤沢先生から頂いたテーマは「光合成CO2固定酵素(Rubisco)のサブユニット構造の機能解析」というものでした。サンプルはホウレンソウ、藍藻、光合成細菌と進化的に面白いものを広く使わせていただきました。Rubiscoは世界中で一番多いタンパク質ですが、光合成細菌からRubiscoを精製するために、20Lのガラス容器を約10個使い、細菌を育てました。これを重い遠心ローターで集菌し、4℃の低温室内でもくもくと実験を行いました。最初にこの実験をした時に、ものすごく疲れたことを覚えています。今思い起こしても、すごい力仕事をしていたと、これまでの自分に何か賞を与えるなら、この時の自分に「努力賞」を与えたいと思います。私は研究以外にも事務的仕事や技官的仕事も多く与えて頂き、多様な仕事を経験できたことは他の職種の方の気持ちも良く分かる人間になれたと喜んでおります。

私が農学部に来た当時は、農学部は実に「男性社会」でした。教務職員のままで定年となる可能性が非常に高かったと思いますが、その後助手を経て、初代留学生専門講師になりました。留学生の皆さんから明るいパワーを頂き、心からお礼を申し上げたいと思います。講師になった時から、私は独立したテーマで研究をさせて頂きました。その頃、熱帯林を伐採して、農業を続けていると塩が土壌に浮き出るという現象が東南アジアで話題になり、「植物の塩ストレス耐性機構の解明」をテーマとしました。Rubiscoの研究をしていたときに、塩分濃度の高い死海の藍藻を使っていたこともあり、テーマを設定しやすかったこともあります。子供の時赤痢にかかり、抗生物質がない時代で食塩注射で助かったという経緯もあり、よほど塩に縁があったのねと兄弟に笑われました。さらに助教授、教授と、名古屋大学農学部にお世話になろうとは、今でも信じられない名誉なことです。研究もなんとか自分のカラーを出すことができました。これは一重に皆さま方の暖かい励ましと支えがあってのことです。優秀な大学院生にも恵まれました。何とか研究も一段落させ、無事定年を迎えられることは、幸運以外のなにものでもありません。

定年後は、食と農業を生活者の立場から考えてみます。日本の農業の明るい未来のために、今後も努力を惜しまないつもりです。39年間、本当にありがとうございました。

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